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工学院大学附属中学校・高等学校(以下、工学院中高)では、対話型・問題解決型の授業を推進し、海外現地の課題解決に挑む教育プロジェクト・MoG(Mission on the Ground)を実施しています。今年は初めての国内版MoGが行われ、中高生が地方振興に挑みました。どんな経験をして何を得ることができたのか、参加した生徒とプロジェクトご担当の先生へのインタビューを通してご紹介します。

海外で実践する経営課題解決プロジェクト

工学院中高では、SDGsと関連付けた教育プロジェクト「MoG(Mission on the Ground)」を取り入れています。参加する生徒は、世界各国で直面している経営課題を解決するべく、現地の社会事業家の下で改善策の提案から事業の立案、実践までを行い、ビジネスの一連の流れを経験します。

取材のようす

過去に実施したプロジェクト

インドネシア

村のごみ問題解決のプロジェクトを発足。(2015年)

フィリピン

オーガニック商品を開発し、原材料生産者の収入の向上を目指す。(2017年)

カンボジア

現地の女性の自立支援のため、オリジナルブランドの商品開発と販売促進に取り組む。(2018年)

工学院中高が初めて実施した国内MoG

2019年には、通常海外で行われてきたMoGが国内で実施され、志願した中高生11人が、鳥取県西伯郡の大山町で地域振興に挑みました。生徒とともに現地滞在した英語科の高橋一也先生から、活動を通して成長する生徒たちの様子についてうかがいます。

高橋先生

PROFILE高橋一也先生

慶應義塾大学院を卒業後、アメリカのジョージア大学で効果的な教育を設計・開発するための方法論「インストラクショナル・デザイン」を研研究。帰国後の2008年から英語科教諭に就き、2016年は教育界のノーベル賞と称される「グローバル・ティーチャー賞※」TOP10に日本人として初めて選ばれる。(※世界中の約8,000人の教師が応募)
2018年度は1年間オランダに滞在し、脳認知心理学と脳科学を学ぶ。
現在は、教頭としてハイブリッドインターナショナルクラスの担任を務める。

MoGでは生徒が起業家意識を持ち、アイデアをビジネスにして実践します。今回も海外のMoGと同じように、生徒たちは1か月間ほど問題解決やマーケティングの手法を学んでから大山町へ向かいました。チームが目指すゴールや自分自身のゴールを生徒が決めて、現地では毎日、自分はどれだけできたか、どれだけチームに貢献できたか振り返っていましたよ。

ビジネスとして取り組んでいますから赤字=失敗で、結果はシビアに表れる。生徒は活動を通して、自分が無力であることに気づきます。それこそが収穫であると考えています。素の自分に向き合って何ができるのかを考える機会が日本の学校にはなかなかありません。一方で、かつてベトナムで活動した生徒のひとりは、自分たちがデザインした製品をベトナムの会社から受け取って、本校に通いながらビジネスを興しています。いまや英語とSNSができれば世界中に販売できますから。

今の時代こそ、生徒は受験のために勉強するのではなく、どうすれば主体的に動けるかを若いうちから学ぶべきです。常に疑問と当事者意識を持ち、ロジカルシンキングの3つのステップ「発見・分析・解決」を実践してほしい。重要なのは実行することであり、生徒には現実世界での失敗をたくさん経験させたいですね。

ミーティング 地元テレビ局による撮影

ジビエ料理の開発・販売に挑んだ6日間

大山町でジビエ(※)を使った地域振興に挑み、イノシシ肉を使った料理を開発・販売した生徒たち。メンバーとして参加した高2生の4人に、今回の活動を振り返ってもらいました。(※ジビエ:野生鳥獣の肉。日本ではイノシシやシカ、野ウサギなどが有名。)

リベンジに燃えてMoGに参加

積田さん・養松さん・清水さん・松枝さん
積田さん
積田さん

私と清水さんは、これまでベトナムとカンボジアの2か国でMoGに参加しています。

養松さん
養松さん

私と松枝さんはベトナムのMoGに参加して、観光客向けのツアーを考えたことがあります。

松枝さん
松枝さん

ベトナムの活動では、メンバーにとって悔いが残る結果になってしまったので、次こそは成功させたいと思って志願しました。

清水さん
清水さん

もともと人前に立つことは苦手だったので、今回はあえてチームリーダーに立候補しました。

MoG「大山プロジェクト」の概要は?

「食とアートを通じた地域の魅力発見」をコンセプトに、NPO法人「very50」と地元のカフェに協力を仰ぎながら、県外からの観光客の方々にもリサーチを繰り返してジビエの商品開発を行い、実際に店舗販売を行う。このプロジェクトを通して、問題解決力の育成とともに、地方の魅力をより広く知り、地方創生に関心を持つ。

活動スケジュール

1日目

オリエンテーション

支援先企業との初顔合わせ。事業に対する想いやジビエ産業の発展を直接聞く。

2日目

大山登山

地元の自然を体感しながら、狩猟の現場で命のありがたみを考える。

3日目

競合調査

チーム単位で、周りのレストランやカフェの視察や観光客へインタビューを実施。

4日目

ジビエツアー

プレゼン資料で説明、ジビエ食肉加工場見学等。

5日目

施策の立案

チーム単位で、一次情報をもとに施策に落とし込む。

6日目

販売会・試食体験会

実際にお客さんを呼び込み、中高生が作ったジビエ料理の試食会を開催。

7日目

支援企業に対する
最終報告会

各チームより、リサーチ結果を報告し、以後の施策を提案。

初体験のジビエ料理

養松さん
養松さん

現地では、プロモーション班と開発班に分かれて活動し、私はプロモーション班のリーダーを務めました。

松枝さん
松枝さん

私は開発班だったので、ジビエ協会の方たちが来てくださったオリエンテーションでは、ジビエの調理方法や、有名なジビエ料理について質問しました。観光客に声をかけて聞き取り調査をし、QRコード付きのアンケートを使うことで時間がない方にも後から回答してもらいました。

打ち合わせのようす
担当チームに分かれて、集めた情報を検討しながら、次のアクションにつながる実行案を作り上げていきます。
積田さん
積田さん

身近な食材ではないので、「味にクセがありそう」「臭いがきついのでは」といった先入観がありました。でも、現地の方が初日の夕食にジビエ料理を用意してくださり、美味しかったので「これなら売れる!」と思いましたね。

清水さん
清水さん

私はジビエ料理を出す店で、店の手伝いをしながら来店者にアンケート調査をしました。

打ち合わせの内容をまとめているボード

2度のターゲット変更で乱れる計画

松枝さん
松枝さん

きちんと利益を出すには購買層を設定する必要がありますが、なかでも苦労したのは、途中で2度もターゲットが変わったことです。

清水さん
清水さん

事前学習では大山町の観光スポットや観光客の年齢層などを調べたので、最初のターゲットは登山客としていました。

積田さん
積田さん

でも、ジビエ料理を食べるならファミリー層だろうと。ところが、ジビエ料理を出す店で調査をしてみたら、来店するのは家族連れではなく女性のグループ。最終的に、“インスタグラムを使う25~35歳の女性”になりました。

養松さん
養松さん

ターゲット変更が影響して、最終日のプレゼンの練習ができないほどギリギリのスケジュールになってしまいました。

遅い時間帯までアイデアを出し合うようす
遅い時間帯までアイデアを出し合いながら、最善策を考えていくのですが、とても時間が足りなくて…。

イノシシ肉を使ったカレーが完成

養松さん
養松さん

メニューについては、自宅でも作れるレシピを考えれば家庭内にジビエが浸透するのではないかと考え、カレーになりました。

積田さん
積田さん

最終候補に残ったのはスープカレーとキーマカレーで、原価が200円くらい安くて味の評判もよかったキーマカレーに決まりましたね。

調理のようす
カレーの調理時は、女子よりも男子の側が張り切っていたとのこと。とにかく挑戦する気持ちが大事です!
清水さん
清水さん

販売会での売り上げは36,500円。試作費込みでも利益を出すことができたし、30食を目標にしていましたが、天気が悪かったにも関わらず32食の注文があり、目標を達成できました。

松枝さん
松枝さん

地元のテレビ局が撮影に来て、その日のうちに放映されたんですよ! 最終日の報告会では、アンケート調査の結果や活動の流れに加えて、やってみてよかったことを今後の提案としてPowerPointにまとめて発表しました。

完成したキーマカレー

活動を通して気づいたことは?

養松さん
養松さん

プロモーション班のリーダーを務めて、責任の重さや意見をまとめる大変さを体験しました。スケジュールに合った進捗管理ができていなかったので、これからは時間を見ながら管理をしっかりできるようにしたいですね。

清水さん
清水さん

私も開発班のチームリーダーを務めてみて、「リーダーより裏方が向いている」と自分の特性を知りました。これからはチームをしっかり補助する役割で、自分の良いところを活かしていきたいです。

松枝さん
松枝さん

飲食店を経営する大変さと、「発見・分析・解決」を実践するためには情報も含めて事前準備がとても重要だと実感しました。

積田さん
積田さん

今回は裏方として、全体の作業が滞っていたら休憩を提案するなど、チーム全体を見て行動できました。今後は、勉強や私生活でもメリハリをつけた行動を意識しようと思います。

肩を組む4人
高橋先生のお言葉どおり、失敗することで次回の成功に近づける実行力が身につきました。

中学校説明会・入試対策説明会

2019年11月8日(金) ハイブリッドインターナショナルコース
見学・説明会(新宿)
2019年11月23日(土・祝) 第4回学校説明会
(入試本番模擬体験・小6生対象)
2019年12月25日(水) クリスマス説明会・個別相談会
(吹奏楽部クリスマスコンサート)
2020年1月11日(土) 第5回学校説明会
(入試対策説明会・思考力セミナー・英語入試相談)

※学校説明会・入試対策説明会は、原則として予約制です。すべてのイベントにおいて上履きは不要です。
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工学院大学附属中学・高等学校 入試広報部
〒192-0015 東京都八王子市中野町2647-2 TEL:042-628-4914 受付時間:午前9:00~16:30
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企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:工学院大学附属中学校・高等学校