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inter-edu’s eye
日本学園中学校・高等学校は、134年の歴史と伝統を誇る男子校です。これまでの男子教育で培ったノウハウを結集し、生徒の学びの幹を作る教育として展開しているのが「創発学」。一人ひとりの個性と才能を伸ばす教育について、新高1生と谷口先生にお話をうかがいました。
自分の得意を見つけ
将来につなげる「創発学」
日本学園が15年前から中学生を対象に実施している「創発学」。「創」は創造する力、「発」は発信する力を意味しています。生徒自身の「得意」を発見し、将来につなげるだけでなく、想像力豊かで視野の広い人材を育成することを目的としています。その柱となるのが、将来を考える「キャリアエデュケーション」、体験を基本とした「フィールドワーク」、そして調査・研究した内容を発表する「プレゼンテーション」の3つ。これらの学びを成長の段階に応じて経験することにより社会で活躍できるために必要な力を身につけていきます。
自分を知ることで、
世界を知ることができる
生徒たちは「創発学」で何を学び、どのような成長を実感しているのでしょうか。新高1生3人に話を聞きました。
自分を知り、社会を知る学び
キャリアエデュケーションの一環に「自分新聞」と「あつき恵み教室」があります。就職などの進路をイメージしにくい中学生にとって、将来を決める第一歩となるのが「自分新聞」。自分を知ることで、他者や社会へのまなざしを養います。そして、校歌の一節「天地のみかは人の世のあつき恵みにこたへつつ」から名付けられた「あつき恵み教室」。OBらによる実務に基づいたキャリア講話を聞いて、希望進路を見つける生徒もいます。
自分新聞を書くまで自分の性格について考えたことがなかったので、友人や家族から見た自分の性格を知れてよかったです。あつき恵み教室では、オーストラリア大使館の方の話が印象的でした。日本にいるオーストラリア人のトラブル対処法など、実際の仕事に触れることができ勉強になりました。
ぼくは、ロケットの形状や生命誕生の神秘などの話を、同級生のお父さんから聞きました。将来、宇宙関係の仕事もいいなと進路に迷うぐらい面白かったです。
想像力をはぐくむフィールドワーク
一次産業を体験する「フィールドワーク」。その意義は、決してそこに就職してほしいというわけではありません。「働く」 とは何かを知り、五感で感じ、苦労を乗り越えることは男の子を大きく成長させます。生徒からは率直な感想が聞けました。
中1の農業体験ではイチゴ農家を訪問しました。ビニールハウスの中で苗代を作ったのですが、暑い中、中腰で作業したので大変でした。
林業も大変でした。整備されていない山道を歩くのも斧で木を切るのも、常に危険と隣り合わせで一苦労でした。
ぼくは中2のときの漁業が印象的です。早起きして市場に行き、競りを見たのが面白かったです。養殖現場でエサをあげたのも思い出です。
発信力と表現力を磨く研究論文
中学3年間の学びの集大成である卒業研究。自分を見つめ、社会を見つめ、将来を見つめる大事な時間です。勉強する意味や働く意味を理解し、生徒は高いモチベーションを持って高校に進みます。自分の中に学びの「幹」をつくるかけがえのない学びです。
中2の終わりから中3の夏休み前までにテーマを決め、8月に取材。そして論文を書き、パワーポイントにまとめます。発表は、後輩や保護者などに採点されます。ぼくは大学の先生に電話でアポイントメントを取り、研究職について取材しました。
ぼくは小学生のころからロボット教室に通っていたので、将来の夢でもあるロボット技術士について調べました。
N.Tくんの研究をきっかけに、この3人でAI搭載ロボットの全国大会にも出場しました。300校中10校に残ることができたのも、創発学で身につけた研究・発表のスキルがあったからだと思います。
創発学を通して、様々な職業や自分の興味について深い学びの機会を持った3人。
得意を見つけて、将来につなげる。
まさに日本学園の教えを体現していました。
高校生も!「創発学」で得られる
より実践的な学び
昨年度から始まった「高校創発学」について、谷口先生にお話をうかがいました。
中学校から入学した生徒は「創発学」を通して将来へのキャリアイメージを持ち、高校での学びを計画していきます。一方、高校から入学する生徒すべてがこうした経験をしているとは限りません。そこで、高校でも導入にいたりました。キャリア教育については、あつき恵み教室の拡大版を行う計画です。また、後の学年では夏休みに生徒自身でアポイントメントを取り、インターンシップをさせたいと思っています。報告はポートフォリオとしてまとめ、自分自身の職業意識を高めるきっかけにしてほしいですね。
生徒自身で考え、動くことで、やりがいや人を喜ばせる楽しさを感じてもらえたら嬉しいです。そうした成功体験を自信に、新たな工夫を生み出す原動力になればと思っています。
編集者から見たポイント
「男の子は、まず『得意』や『好き』を伸ばすことでしっかりした軸が形成される」と谷口先生。とても楽しそうにインタビューに答える3人を見て、「創発学」は、長年にわたり男子教育を進めてきた伝統校だからこそ生まれたプログラムであることが実感できました。自分が何をやりたい人間なのかを発見して、巣立っていく。社会に出てブレない「幹」が日本学園でじっくりと育まれていきます。
自分新聞は中1の終わりごろ、自分の生い立ちや性格、得意・不得意について手書きでまとめます。その新聞で同じ趣味の後輩がいることを知り、話しかけるきっかけになりました。