大阪産業大学附属高等学校

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バス1台から始まった!一般旅客自動車運送事業研究会の挑戦と可能性

inter-edu’s eye

2025年度、大阪産業大学附属高等学校(以下、大阪産業大附属)で、全国的にも類を見ない新たな部活動「一般旅客自動車運送事業研究会」が誕生しました。大型バスを実際に保有し、その管理や運用を通して社会の仕組みを学ぶという、実践的かつユニークな取り組みです。部員は6名、全員が1年生で、活動はまさにゼロからのスタート。今回は設立の背景や活動の魅力、今後の展望についてうかがいました。

ユニークな発想から生まれた新部活動

一般旅客自動車運送事業研究会は、本物の大型バスを「生きた教材」として、旅客運送事業に関わるさまざまな知識と実務を学ぶ部活動です。部の運営は会社組織を模しており、部員は「代表取締役」や「専務取締役」といった役職に就き、「運輸部」「営業部」「総務部」などに所属。一人ひとりが明確な役割と責任を持ち、連携しながら目標達成を目指します。この異色の実学型部活動を立ち上げた髙岡忠史先生にお話をうかがいました。

プロフィール

髙岡忠史先生
・役職:総括主事(入試渉外・広報担当)
・担当教科:社会科
・部での役職:取締役会長

設立のきっかけを教えてください。

髙岡忠史先生

髙岡忠史先生

ずばり「バスを買ってしまった」からです(笑)。子どもの頃から乗り物が好きで、運転・操縦に関する免許を20以上取得しました。その中に大型二種免許があったのですが、単純にバスが欲しくなって。買ってから、維持費や駐車場など多くの難題に直面し、これを解決する術として、バスを丸ごと学校に寄付し、研究会を設立するという形に行き着きました。

一般旅客自動車運送事業研究会の主役となる大型バス
部の設立当初、周囲の反応は賛否両論の「否」が多めでした(笑)

部を通じて、生徒たちにどんな力を身につけてほしいですか。

髙岡忠史先生

髙岡忠史先生

社会や会社の複雑さ、縦横のつながり、そして「見えているものが全てではない」ということを知り、物事の本質を見抜く力を養ってほしいと願っています。諸問題へのアプローチは、そのためのきっかけです。課題に身を投じることで「未体験」を自らの「経験」に変え、高いソーシャルスキルを身に付けてくれることを期待しています。その中から、次世代の担い手が生まれるかもしれません。

部を「会社組織」に見立てて運営している目的は何でしょう。

髙岡忠史先生

髙岡忠史先生

みんなが横並びで同じことをするのではなく、それぞれの立場で自分の役割を理解し考え、協力し、その責任を全うしてもらうためです。自分の仕事がほかの部署、ひいては組織全体にどう影響するのか。そんな俯瞰的・客観的な視点を養ってほしいと考えています。

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部員一人ひとりが名刺を持っています
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名刺交換が自然とできるようになったことは生徒たちの大きな成長です

会社さながらの役割と本格的な学び

部の活動は、バスの仕組みを理解することから始まり、車内装備の扱いや清掃、運行管理といった実務を学びます。並行して資格取得の勉強も進めるほか、すでに複数の企業を訪問し、見学なども行っています。部を支える1年生の部員3名にお話をうかがいました。

プロフィール

R.O.さん

R.O.さん

・選択コース:普通科進学コース
・部での役職:代表取締役 兼 運輸部長(運行管理補助者) 兼 整備部長 兼 整備課長

M.K.さん

M.K.さん

・選択コース:普通科進学コース
・部での役職:専務取締役(戦略担当) 兼 運輸部次長 兼 運輸課長 兼 ガイド係長

T.N.さん

T.N.さん

・選択コース:普通科進学コース
・部での役職:常務取締役(経営担当) 兼 営業部長 兼 営業第一課長 兼 営業第二課長

研究会に入ろうと思ったきっかけは何ですか。

R.O.さん

R.O.さん

もともと車が好きで、将来自動車整備士になりたいと思っていました。この研究会なら「好きなことをしながら、将来につながる貴重な経験ができる」と思ったからです。

M.K.さん

M.K.さん

部活動なのに会社組織のようになっているのが新鮮で、社会勉強になると思い入部を決めました。正直、バス自体に強い興味があったわけではないんです(笑)。

T.N.さん

T.N.さん

野球で培った礼儀やマナーを違う形で活かしたいと思っていたときに誘われました。タイミングがちょうど良かったです。

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重さ20kgを超える整備用と車載を兼ねた工具セット
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一般の高校生が体験できないことができます
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バスの駐車では後方の安全を確認し、的確な指示を出します

この活動の魅力を教えてください。

R.O.さん

R.O.さん

実際の車両を使って運行前点検や軽微な整備・修理ができることです。運行管理者など、車に関する資格取得のチャンスが多いのも魅力です。法律も学ぶので、免許を取るときの学科試験対策は完璧だと思います。

M.K.さん

M.K.さん

本格的な体験ができる点が魅力です。中学校の職場体験とはレベルが違い、実在する企業を訪問し、社会人の方と対等な立場で名刺交換をします。
特に印象に残っているのは、岡山県のバス会社を訪問した際、プロのガイドさんが真剣にバスの誘導方法を教えてくださったことです。「死角に入らない」「緊急時はボディを叩いて止める」など、非常に勉強になりました。

T.N.さん

T.N.さん

何もかもが規格外で、面白いことばかりです。例えば、バスの高さは3.5m以上あるので、洗車をするのも大変です。使う脚立もブラシも2m超の巨大なものです。そんなスケールの大きさに驚かされています。
外部の大人の方と関わる機会も多く、毎回新鮮です。

部を通して、ご自身の成長を感じますか。

R.O.さん

R.O.さん

代表を務めているので、責任感を感じています。活動のほぼ全てが未経験のことなので、必然的にみんなとの相談や協力は欠かせません。

M.K.さん

M.K.さん

部員は全員1年生で、頼れる先輩はいません。初めてづくしの活動なので、みんな成長しないはずがありません(笑)。

T.N.さん

T.N.さん

企業研修で、予定を大幅に超えて2時間近く熱心にお話しいただいたことがありました。それでも最後まで集中して話を聞けた自分に、少し大人になったなと感じました。

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岡山県のバス会社を訪問
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企業訪問は貴重な学びの機会です
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事業内容を聞いたり、バスの外観や内装を観察したりと有意義な時間でした

未来につながる実践的な挑戦

今後の展望について教えてください。

髙岡忠史先生

髙岡忠史先生

今後は協賛いただける企業や大学を増やし、「できること」の幅を広げていきたいです。実用的なスキルは企業から、学術的な知識は大学から学ぶ。本校の上には大阪産業大学があるため、まずはそこから連携を深めていきます。資格に関しては、すでに「運行管理者基礎講習」を修了した生徒がいるので、国家資格である「運行管理者試験」に挑戦します。併せて「秘書検定」や「簿記検定」にもチャレンジ予定です。他にもYouTubeチャンネルの開設やプロモーションビデオ・テーマソングの作成、バスの備品の製作など、やりたいことは尽きません。

常に社会人が相手のため、礼儀作法やビジネスマナーが自然と身に付いていきます
お世話になった企業を訪問し感謝を伝えるとともに、次のイベント企画も進めていきます

生徒の皆さんは、今後の活動で取り組んでみたいことや目標はありますか。

R.O.さん

R.O.さん

将来的には大学で自動車工学を学び、自動車整備士2級の資格を取りたいです。また、在学中に運行管理者の国家試験に合格したいと思っています。
活動では、より実践的な整備実習や、板金・塗装にもチャレンジしてみたいです。

M.K.さん

M.K.さん

最初にバスガイド役に任命されたので、安全運行を補佐する保安要員としてはもちろん、質の高い観光サービスを提供できるガイドを目指したいです。
まずは社会の一般常識を身に付けるために秘書検定の勉強を始めたいですし、企業の経営状況を数字で理解できる簿記検定にも興味があります。

T.N.さん

T.N.さん

先生に「笑顔が爽やか」「礼儀正しそう」と言われて営業担当になりました。営業担当として、秘書検定に挑戦してみようと思っています。旅行業務取扱管理者も気になりますね。
自家用バスがあるからこそ、行けるところや、参加できるイベントがたくさんあり、今から楽しみです。

「不可能」を「可能性」に!未来の仲間へ

今後の展望について教えてください。

R.O.さん

R.O.さん

ほかの学校には絶対にない部活です。大型バスの実車を使って多くのことを学び、さまざまな資格が取れます。自分の将来につながる、可能性の広がる部活なので、ぜひ入部してください。

M.K.さん

M.K.さん

普通では経験できないことができる場所です。「社会」がとても身近に感じられます。その中で自分の役割を理解し、やりたいことを実現しましょう。お待ちしています。

T.N.さん

T.N.さん

社会とのつながりやソーシャルスキルの大切さを意識させてくれるかけがえのない部活です。何事にも一生懸命に取り組んで、夢に向かって最後までやり切りましょう。きっと、想像を超える未来が待っていますよ。

髙岡忠史先生

髙岡忠史先生

おそらく日本唯一であろう「一般旅客自動車運送事業研究会」。私はこれを「究極の探究学習」「超絶の産学連携」「空前の課外活動」だと考えています。まだ誰も知らないこの部活が、「不可能」を「可能性」に変えます。中身とゴールは自分達で決める。ぜひ一緒に、多くの夢を実現させましょう。

部が目指す方向性を理解し、かつ向上心を持って積極的にチャレンジする人におすすめの部活です

編集後記

髙岡先生の規格外の行動力と、それを面白いと受け止め、真剣に活動へと昇華させていく生徒たちの主体性。この研究会が持つ無限の可能性に圧倒されました。これは単なる部活動ではなく、社会そのものを学ぶ「生きたキャリア教育」です。乗り物好きはもちろん、何か新しいことに挑戦したい、自分を大きく変えたいと願うなら、ここはきっと刺激的な学びの場となるでしょう。ぜひ学校説明会でその熱量を感じてみてください。