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思春期の心と自尊感情を穏やかに育む 玉川聖学院の女子教育

inter-edu’s eye

東京・自由が丘の閑静な住宅街に建つミッションスクール、玉川聖学院中等部・高等部(以下、玉聖)。明るい笑顔と人柄で保護者の心を虜にするという安藤理恵子学院長に、教育に対するお考えをインタビューしました。

安藤学院長インタビュー
自尊感情を育み、
自己表現の場をつくる

玉川聖学院学院長安藤理恵子先生

2013年、4代目学院長に就任。牧師でもあり、聖書科の教師として高等部3年の聖書の授業を受け持つ。

女性に必要な原動力「自尊感情」

本校には、聖書にもとづいた3つの教育方針があります。思春期は、自尊感情がアップダウンする時期。そんなときに、「一人ひとりは尊いもの。人と比べなくても大丈夫」と、心で受け止めてもらうことを一番大切にしています。
近年、女性の社会進出は当たり前になりましたが、まだ世の中は競争の多い男性社会ですよね。そうした環境でも、女性は自分の存在を肯定されて初めて、安心して自身の力を発揮できるんです。自己肯定から芽生えた「自尊感情」により、自分から発言してみよう、行動してみようと思えるのです。

玉川聖学院 3つの教育方針

  • 1かけがえのない私の発見

    人間は誰しもかけがえのない存在であり、社会に役立つ何かを持って生まれてきたということを、頭だけではなく心で受け止めること

  • 2違っているから
    すばらしいという発見

    人間は一人ひとり違うからこそ素晴らしいのだと発見すること

  • 3自分の可能性、使命の発見

    自分と他者のそれぞれのすばらしさを理解した上で、自分がやれること・やるべきことを見つけること

心と体で自己表現する玉聖が誇る女性のためのキリスト教教育

本校には、自分を振り返り、自分を表現する機会がたくさんあります。
授業の後、クラスごとに行われる終礼では、生徒が一日一人ずつ、自分の近況や考えを語ります。ただの発表ではなく、内容にまつわる聖書の一節を選び、さらに讃美歌を1つ選んで終礼に臨むんです。中等部なら年に3、4回順番が回ってくるので、6年この経験を積み重ねることで、生徒は表面的な言葉ではなく自分の言葉で語ることを学び、人の話を真摯に聞く姿勢を身につけます。みんながちゃんと耳を傾けてくれるので、生徒は話す勇気を持てるんです。
また、高等部の体育の授業で行う創作ダンスは体を使った自己開示です。全身を使い、自分の心を美しい動作で表現し、伸び伸びと踊れることは、男子のいない女子校の特権です。女子校には異性の目を気にせず、生徒が本来持っているものをありのまま表現できる特別な環境があります。
本校には、環境を活かし、心と体で自分を表現できる仕掛けが随所に存在するんです。

日々の学校生活では折に触れ、生徒に自分の行動や感じたことを振り返って記述させています。文字に起こすことで、体験したことを噛み砕いて自分の中に残せるようになり、生徒は今の自分を知るのです。この行為は、終礼で自己表現するときにとても役立っています。
心と体で自己表現を重ね、「人との関わり」を通して生徒の心を育てていくのが本校の教育です。

「世界をつなげる心」を育てる女子教育

女性は、人と向き合い心を通わすことを大切にし、人との関係性を豊かにすることができる存在です。
今の社会はスピードを求められ、効率や結果が重視されますよね。だからこそ、時間をかけて人と人をつなげることの尊さや、断絶を避け、世界をつなげていこうとする心の豊かさといった、社会ではすぐ評価されにくいけれどとても大切なことは、女子教育でこそ伝えられるのです

安藤理恵子学院長インタビュー

生徒インタビュー
進路を左右するTAPの威力

体験を通して適性を知り、進路選択へつながるプログラム

TAP(玉聖アクティブプログラム)とは、玉聖がこれまで続けてきた高等部の選択授業や体験プログラムを、5つのテーマに分けて体系化したものです。プログラムの特徴は、「人との出会い」を大切にしたものが多いこと。生徒は学校の内外で、人とつながる力に磨きをかけ、コミュニケーションの力を広げていきます。各教科の先生が担当分野の知識を活かせる機会を紹介するため、多様性に富んでいることも魅力です。
昨年から始めたこの取り組みが功を奏し、今年はAO入試の合格者数がぐんと増えたそうです。

玉聖アクティブプログラムTAP
榛名でのワークキャンプ
榛名でのワークキャンプ
高齢者施設でのボランティアは、心の豊かさを学ぶとき。高齢者が喜んでくださる姿を通して、自分が人を幸せにできることに気づき、人との関わり方が変わるといいます。手作りのカードやポーチをプレゼントするクリスマス訪問も人気です。
自由が丘スイーツフェスタ
スイーツフェスタ
地元、自由が丘商店街のイベント「スイーツフェスタ」で、産業能率大学の学生と一緒にフェアトレードを啓発します。今年は約100人の生徒が参加したという、人気プログラムです。

玉聖で自分の進むべき道を見つけた!

カンボジア研修
2人が参加した
カンボジア研修

インクランさん

中島さん

TAPでは、国内だけでなく海外で行われるプログラムも紹介されます。国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン企画のカンボジア研修で、人生の財産になる貴重な経験をしたという高等部3年の2人にインタビューしました。

Q カンボジアでのプログラムについて教えてください。

インクランさん6日間の滞在中、5日はホテルでのカンファレンスで、最終日に私たちと台湾から来た子の3人でアクションプランを立てて、みんなの前で発表しました。参加者はアジア7か国から来た学生で、会話は全て英語でした。

中島さん帰国した後、プログラムについて全校生徒の前で発表することになったんです。振り返ってまとめていく中で、新たに気づくことがたくさんあったので、フィードバックするのとしないのでは全然違うと感じました

インクランさんスラム街で児童労働などの現状を目の当たりにしたことで、貧困問題の深刻さを痛感し、これは自分が一生を懸けて取り組むべき課題だと思いました

Q TAPのプログラムを経験して、得たものはありますか。

中島さんカンボジアのプログラムは、高校時代をギュッと凝縮したような、私にとってとても大きな経験になりました。これを経て、将来はNGOで働きたいと思うようになりました。

インクランさん私は小学校高学年の頃、男子の目が気になって萎縮するようになってしまいました。でも、玉聖に入って本来の自分を取り戻し、思い切り好きなことをして、TAPのプログラムを通して進路を決めることができました。この先大学に進学しても、玉聖にいたときのような自分でありたいと思っています。

企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:玉川聖学院中等部・高等部