建学の精神「敬神奉仕」のもと、これまで社会で活躍する女性を輩出してきた東洋英和女学院中学部・高等部(以下、東洋英和)。 「敬神奉仕」の「奉仕」は聖書の言葉に基づき「誰かのために尽くす」ということ。それを実践する機会として東洋英和には「ディアコニア(人に仕える)」という活動があります。今回は、その精神を人生の柱に、生き生きと輝いている卒業生にお話をうかがいました。
今回は、卒業生として「ディアコニア」の活動に協力している落合彩さんにお話をうかがいました。
2000年に東洋英和を卒業後、ブラインドサッカー元日本代表の落合啓士さんと出会い結婚。現在は東洋英和で身につけた英語力を活かし外資系の企業に勤めるかたわら、母校で夫の啓士さんとともにブラインドサッカー体験会を行っています。また敬神奉仕の教えを胸に、東北の復興ボランティアなどでも精力的に活動しています。
落合 彩さん
ー在学当時、ご自身は「ディアコニア」の活動をどのように考えていましたか。
当時は点字や車いす体験を純粋に楽しんでいたと思います。今のように深く理解できるようになるまでには時間がかかりましたが、やらされているという印象は全くありませんでした。
むしろディアコニアの活動があったから、点字など公共の場にあるサインに気をとめて生活してきたように思います。みんながより安全に、より便利に生活するために、「自分ならどういう手助けができるだろう」と常に考えますね。東日本大震災後のボランティア活動へ参加しようと考えたのも、東洋英和での6年間があったからこそだと思っています。
ー「ディアコニア」の活動などを通して東洋英和で学んだことは。
他人の価値観を認めることです。相手の立場に立って理解することは、年齢や障がいに関係なくできることです。壁を作ったり批判したりするのではなく、違いを認めて相手の立場で考える。それはやはり「隣人を自分のように愛しなさい」という「敬神奉仕」からきていると思います。東洋英和で学んで一番よかったことです。
ー東洋英和での思い出を教えてください。
ありすぎて…でもとにかく毎日が楽しかったです。
ふとした瞬間に思い出すのは毎日の礼拝です。「敬神奉仕」の額を見ながらオルガンを伴奏に讃美歌を歌い、聖書を読んで祈る。礼拝の時間は心に残る景色です。
あと、留学もよい経験でした。今思うと東洋英和の英語はかなり使える英語だと思います。今でも当時のホストファミリーと交流がありますし、日々の教えと留学の経験が違う文化を受け入れる土台になっています。東洋英和で学べたことを誇りに思いますし、通わせてくれた両親にも感謝の気持ちでいっぱいです。
ー東北ではどのようなボランティア活動を行ったのですか。
震災後、ボランティアへ行きたい人を早く現地へ送り出せるように、とにかくバスを走らせました。「自分のできることをやろう」と考えてすぐに行動に移すことができた、そういうエネルギーの源も東洋英和にあると思います。誰かのためにできることがあるなら100%の力でやろう、そういう気持ちにさせてくれる根源は6年間で培ったものです。活動を通して、そのときできる人が尽くす、そういう気持ちを共有できる人と多く関われたので、活動が今も続いていると思います。
―啓士さんとの出会いも東北だったそうですね。
そうですね。宮城県石巻市のブラインドサッカー体験会で話をしたのがきっかけです。実はその前にブラジル対日本の親善試合を見ていて、彼には密かに憧れを抱いていたのですが…。
目が見えないということに対して壁は全く感じませんでした。「ほかの感覚を使って生活している人たち」というように、私にとっては1つの文化でした。自分が英和生らしいなと感じるところですが、お互いに文化を持っているという感覚だったので、遠慮よりも興味津々。分からないことはどんどん口に出して互いの理解を深めていけたので、こうして結婚に至ったと思っています。
彩さん
啓士さん
―母校でのブラインドサッカー体験会を通して後輩にどのようなことを感じてほしいですか。
視覚障がい者に対してハードルを感じるのではなく、身近にいることを知ってほしいです。また、障がいに関係なく相手の立場に立って理解することも分かってもらえたらうれしいです。実際に体験会では、生徒たちが目の見えない人に対して伝わりやすい言葉で表現しようと努力していて、この時間だけでも大きな成長を感じました。見学をしていた生徒が私と彼のコミュニケーション方法について質問してくれたのもうれしかったです。興味を持ったことをどんどん言葉にして伝える姿勢は今も昔も変わらない英和生のよさだと思いました。
東洋英和では、「敬神奉仕」を深く理解するためにさまざまな体験学習を行っています。
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ディアコニア
中学1年生を対象に「奉仕」を体験し、相手の立場に立って自ら行動できることを目指す学びが「ディアコニア」。30年以上前から行われている伝統的なプログラムです。点字や車いすの体験学習をはじめ、目や耳の不自由な人からの話やブラインドサッカー体験、施設訪問など年間7回さまざまな活動を行っています。
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花の日
毎日行われる礼拝。その中でもキリスト教の暦に沿って特別に行われる礼拝があり、花の日礼拝もその1つです。また、花の日には特別養護老人ホームなどを訪問しお年寄りと交流を深める活動も行っています。
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ボランティア
つらいとき、困ったときに自分ができることを考え行動に移せるようにー。東洋英和では東日本大震災後、YWCA主催の被災地ボランティア活動を続けてきました。相手の立場を考えるだけでなく、自分に与えられた才能に気づくきっかけにもなっています。