2期連続のSSH指定校として深まった最先端の理数教育

2期連続のSSH指定校として深まった最先端の理数教育

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文部科学省が指定するSSH(スーパーサイエンスハイスクール)として2期連続で理数教育を充実させてきた茗溪学園中学校高等学校(以下、茗溪学園)は、中1次から生徒全員が段階的に探究スキルを習得する取り組みや、高2次の必修科目である個人課題研究を通したハイレベルな探究活動を行っています。国内最先端の理数教育を実践する教育現場の詳細をご紹介します。

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大学進学後を意識したハイレベルな学習内容

教務部長・SSH推進委員長の宍戸雄一先生より、SSH指定校独自のカリキュラムや個人課題研究についてお話しいただきました。

◆学習指導要領の枠にとらわれない独自のカリキュラム

インターエデュ(以下、エデュ):SSH指定校として中学の段階から進めている学習内容を教えてください。

宍戸先生:2021年度から中学で「総合的な学習の時間」の時間数を増やし、授業内容を充実させてきました。まずは、月1回の目安でエッセイライティングに取り組んでいます。段階的に抽象度を高め、批判的な思考力や創造的思考力を養うことが狙いです。また、教科の枠にとらわれることなく、SDGsやSTEAM教育に関する内容も自然に盛り込みながら、自らの興味・関心に基づいたテーマや教科学習に関わるテーマについての課題研究を行ってきました。情報収集やポスター作成から発表までに至る活動を通して高度な研究に必要とされるスキルを養うことは、高2から着手する「個人課題研究」の質の充実につながっていきます。
同2021年度には、つくば市と協働して学生の起業マインド醸成を目的とした起業セミナーを実施しました。法律とエンジニアリングの分野から宇宙産業へのアプローチを試みているスタートアップの経営者2名が講師となり、中学生と意見交換をしながら新たなアイデアを深めるという内容です。生徒が起業・経営について新たな視座を得ただけでなく、科学技術についての興味関心を高める講演会になったと思っています。つくば市との連携は、今後もさらに強化していきます。

SSH指定書
茗溪学園は2期連続でSSHに指定されました

エデュ:SSH学校設定科目(独自の授業)の内容を教えてください。

宍戸先生:「数学探究Ⅰ」「数学探究Ⅱ」では、学習指導要領の内容から自然に発展できる話題を扱うほか、ICTを活用して数学者の業績や数学の歴史を学ぶ活動を取り入れました。また、大学入試問題の演習を出発点にしながらも、その背景や意義に触れて1つの話題を多面的に見ることによって深い理解につなげることを意図しました。生徒たちは「大学に入学してから学ぶような数学が知識として身についたので、卒業後に向けた良い導入になった」などの感想を述べており、大学進学後の学びにつながる教材開発ができたと思っています。
「物理探究Ⅰ・Ⅱ」「生物探究Ⅰ・Ⅱ」「化学探究Ⅰ・Ⅱ」では、レギュラークラスよりも数多くの実験・観察から科学実験のスキルを身につけるだけでなく、データの解析と考察に時間をかけ、科学的な思考力を高めます。生徒は疑問に思ったことを自分で解明しようとしますし、そのために必要な環境も整っています。さらに、討議も数多く取り入れた協働型探究活動の取り組みは生徒の自主性を育て、目標とした学習者中心の深い学びにつながるものになったと思っています。

成蹊大学との合同起業セミナー
中1生を対象に、つくば市の後援で起業セミナーが実施されました
海外校提携
オンラインを活用して海外提携校との理系研究交流が行われています
SSH指定校としての取り組みの数々 ≫

◆高校2年次の必修科目となる個人課題研究

エデュ:個人課題研究の目的や近年高い評価を受けた研究内容を教えてください。

宍戸先生:個人課題研究において、高いレベルの学術性を求めているわけではありません。高校1~2年という多感な時期に、「自分は何がしたいのか」「自分はどう生きるか」について考える機会を提供し、それに迫ることが個人課題研究の目的であると考えています。グループ研究で先輩の研究を受け継ぎ、高い研究成果を目指す学校は多いですが、本校のスタンスは全く異なっています。自己の生き方や在り方を考えるためには、「個人」が設定した課題に取り組む必要があり、研究活動の成果が「自分にとってどのような意義があったのか」「他者や社会にとってどのような意義があるのか」を振り返ることによって、生徒の今後のキャリアにつながっていくと考えています。
また、個人課題研究の活動を通して、一度決めたことを粘り強くやり抜くこと、メタ認知能力、他者との協力・協調などの非認知能力の育成も目的の一つです。最先端の実験機材や大学・研究機関との連携から高いレベルの研究成果を挙げること自体を目的にしているわけではないということです。

オンライン授業の様子
オンラインと対面それぞれで効率的な授業が進められてきました
難関大に多数の進路実績 ≫

生徒自身が模索しながら挑戦する個人課題研究

個人課題研究で高い評価を受けた高2生のR.Oさんから、1年間をかけた研究活動をふり返っていただきました。

エデュ:個人課題研究発表会での取り組みや独自の工夫を教えてください。

R.Oさん:化学の先生と何回も相談した結果、バラから他の植物の生長を阻害するアレロパシー成分を見つけ、抽出して除草剤に応用する「新しい除草剤をつくる~バラに注目して~」というテーマで1年間、個人課題研究を進めてきました。週2時間の授業時間だけでは足りず、昼休みや放課後、ときには休日も研究を進めてきましたが、もともと化学が好きだったので、全く苦になりませんでした。化学準備室に備えてある大学レベルの専門書やインターネットの論文検索を活用して、類似研究を調べながら手探りで研究を続けていましたね。
校内での個人課題研究発表会では7分間という限られた時間で1年間の成果をまとめて発表する苦労をしたのですが、高校生のうちにこのような体験ができて良かったと感じています。人前で話す楽しさや、自分の考えをわかりやすく伝える必要性を理解することができるようになったからです。これからも物事を論理的に考えることや、的確に伝える技術を磨いていき、将来の進路に活かしていけたらいいなと考えています。

茨城大学主催の「高校生の科学研究発表会」で優秀賞を受賞したR.Oさん
茨城大学主催の「高校生の科学研究発表会」で優秀賞を受賞したR.Oさん

エデュ:校外の発表会でも高い評価を受けたそうですね。

R.Oさん:千葉大学主催の「高校生理科研究発表会」のために、5分間程度のスライドに音声を吹き込んだ動画ファイルを提出しました。何度も練習を重ね、発表当日は動画を視聴し終えた千葉大学の先生や化学系企業の研究者など4名とオンラインで10分の質疑応答を行いました。研究の動機や方法、バラの花弁に含まれる揮発性成分などの専門的な質問があって大変な思いをしました。思ってもいなかったのですが、研究奨励賞を受賞したと聞いたときには驚くとともに嬉しかったのを覚えています。さらに、茨城大学主催の「高校生の科学研究発表会」ではなんと優秀賞も受賞できたんです。
望んだ結果にならなかったり、ひたすらレタスの長さを測定する地道な作業を繰り返すことで何度も挫折しそうになりましたが、そのたびに先生が声をかけてくださったおかげで頑張ろうという気持ちになれたのだと思っています。

研究成果について一般参加者へパネル説明をする様子
研究成果について一般参加者へのパネル説明も行われました
卒論として取り組む個人課題研究 ≫

編集者から見たポイント

2011年からスタートしたSSH指定校としての取り組みが茗溪学園の新たな伝統として根付き、2期目の現在では校外でも高く評価される結果を出すように好影響をもたらしてきたことがよく分かります。ハイレベルな教育内容を通して大きく成長していく生徒たちの今後にご注目ください。

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