平和教育で育む“すべてのいのちを慈しむ心”

平和教育で育む“すべてのいのちを慈しむ心”

inter-edu’s eye

東京・武蔵野の自然豊かな地に位置する、東京純心女子中学校・高等学校(以下、純心)。伝統あるカトリック校の純心がとりわけ力を入れる教育の一つに、「平和教育」があります。今回は、校長の松下みどり先生にお話をうかがい、キリスト教に根ざした平和教育の目的と内容についてお聞きしました。

学校公式サイト ≫

平和とは、人との関わりの中で生まれるもの

まずは、純心における平和教育の位置付けと、先生方の思いをうかがいました。

松下先生は、長崎県、鹿児島県にある純心学園の姉妹校で教鞭を取り、2013年より同校に着任。生徒たちと廊下ですれ違うたび、にこやかに話をする姿が印象的です
松下先生は、長崎県、鹿児島県にある純心学園の姉妹校で教鞭を取り、2013年より同校に着任。生徒たちと廊下ですれ違うたび、にこやかに話をする姿が印象的です

インターエデュ(以下、エデュ):松下先生が考える「平和」の定義を教えてください。

松下先生:「平和」という言葉には、もちろん“戦争がない世界”という意味もあります。長崎にある姉妹校では、かつて被爆で207名もの生徒が亡くなりました。戦争を二度と繰り返さないという決意を胸に、高2では長崎研修旅行を実施し、原爆に関するレポート作成や姉妹校との交流会なども行っています。
しかし同時に、目の前の人との間で生まれる身近な幸せのことも、私たちは「平和」と呼んでいます。創立者のシスター江角ヤスは、「神様にも人にも喜ばれる人」を育てたい、という思いで本校を創立しました。例えば、ボランティア活動から帰ってきた生徒たちは皆「自分が幸せにしてもらった」と口を揃えますが、それは彼らが“人から喜ばれる幸せ”を得たということ。そうやってお互いのいのちを尊重し、幸せを実感できる関わりの中で生きてこそ、初めて「平和な世界」が実現できると考えています。

学期に数回行われる聖堂朝礼では、聖歌を歌い、聖書の言葉に耳を傾ける穏やかな時間が流れます
学期に数回行われる聖堂朝礼では、聖歌を歌い、聖書の言葉に耳を傾ける穏やかな時間が流れます
クリスマス会では、キャンドルサービスやハンドベル演奏を通して平和を願います
クリスマス会では、キャンドルサービスやハンドベル演奏を通して平和を願います

エデュ:純心には、松下先生のおっしゃる「平和」な空気が流れていると感じます。学校生活の中で「平和」を築くために心がけていることはありますか?

松下先生:教員は、生徒たちを「マリア様から預かった大切な子」と考え、全員を平等に大切にしています。大事にされて育った子供は人を思いやることができますから、「あなたのことを大事に思っていますよ」ということが生徒に伝わるように意識しています。それこそが、一番の平和教育かもしれませんね。生徒だけでなく、保護者の皆さま、事務の方や業者の方、教員同士、ここにいるすべての人々が、私たちにとってかけがえのない存在です。

「神様にも人にも喜ばれる人」を目指すキリスト教の教え ≫

生徒の心が自然と育つ、純心の平和教育

次に、平和教育として行っている具体的な取り組みについてうかがいました。

“いのちを慈しむ心”を育てる「労作」

松下先生:労作は平和教育の目玉ともいえる活動です。植物の種をまき、育てることで、いのちを大切にする心を育てたいと考えています。神様のお恵みを受けながら、人が手をかけて育てた自然はとても美しいもの。シスター江角が選びに選んだ多摩・武蔵野エリアは、まさにそのような自然環境で、いのちと直接向き合える場所です。生徒たちの“いのちを慈しむ心”は、私たちが言葉で指導しているというよりも、この環境で過ごすことで自然と育っているように感じます。

生徒たちは、自らが丁寧に育てた自然の中を深呼吸しながら登校します
生徒たちは、自らが丁寧に育てた自然の中を深呼吸しながら登校します
育てた自然を周りの人に提供すれば、みんなの笑顔が咲きこぼれます
育てた自然を周りの人に提供すれば、みんなの笑顔が咲きこぼれます
   

人との関わりを学ぶ「民泊体験」と「プロジェクトアドベンチャー」

松下先生:中2では、私たちの生活を支える農業と、それに携わる方々への感謝の気持ちを育てたいという思いから栃木県大田原市で民泊体験を行っています。以前は先進的な科学施設を見学していましたが、それよりもまず大切なのは、体験を通して農業の大変さを学ぶことや、世代の異なる方々への敬意を育てることだと考えました。人との関わりを学ぶという点では、中1で実施する「プロジェクトアドベンチャー」も同じです。高尾の森わくわくヴィレッジの大自然の中、考え方も価値観も違うクラスメイトたちと課題を乗り越えていくことで、信頼関係を築いてほしいと思っています。

農家の方から孫のようにかわいがってもらえた経験は、生徒たちの記憶に残ります
農家の方から孫のようにかわいがってもらえた経験は、生徒たちの記憶に残ります
プロジェクトアドベンチャーは中1の秋に実施。6年間ともに過ごす仲間との距離が一気に縮まります
プロジェクトアドベンチャーは中1の秋に実施。6年間ともに過ごす仲間との距離が一気に縮まります
   

文化が異なる人への敬意を育てる「グローバル教育」

松下先生:グローバル教育とは、本校が力を入れている英語教育も含め、異文化に対する敬意を育てることだと捉えています。高1で多くの生徒が参加する海外語学研修も、英語の上達だけでなく、文化や考え方が違う友人やホストファミリーに対する敬意を育むことが目的です。世界平和には直接結びつかなくとも、グローバル社会で活躍するために必要不可欠な経験だと考えています。

   
6年間にわたる平和教育のプロセス ≫

身近な平和に貢献できる、心優しい生徒たち

最後に、松下先生と生徒たちの温かいエピソードから、純心生の雰囲気や学校生活の様子を紐ときます。

エデュ:純心には、どのような生徒たちが多いと感じますか?

松下先生:中2・中3は多感で難しい時期ですが、それを乗り越えて高2・高3にもなると、非常に素直で優しい人に育ってくれています。中3のある生徒の話では、卒業生がクラブに差し入れてくれたお菓子を、高2の先輩が「中学生からどうぞ」と言ってくれたそうなんです。クラブ活動にありがちな年功序列も本校では見かけず、むしろ後輩を守る意思の強い先輩ばかり。そういう心が自然と育つので、大学や社会に出た時に周りの人から喜ばれます。保護者の方の中には、「職場にいる純心の卒業生がとても良い方なので、娘をこの学校に入学させました」と言ってくださる方もいます。そうやって、卒業後も周りの空気を平和にしてくれていると思うとうれしいですね。

エデュ:印象に残っている生徒からの言葉はありますか?

松下先生:ある卒業生からの手紙にあった、「私が好きなことを、好きでいさせてくれた友達に感謝しています」という言葉が心に残っています。自分は何が好きなのかを堂々と言えて、それを受け入れてもらえるというのは、当たり前のようで難しいこと。在校生たちも、「誰にでも居場所がある」「居心地がいい」学校だと言ってくれますが、ありのままの自分でいられるのは、女子校ならではのメリットかもしれませんね。6年間過ごす学校が安心できる場所であるのは、とても大切なことではないでしょうか。

高校で実施される宗教の授業
高校で実施される宗教の授業
真剣な面差しで式典に臨む生徒たち
真剣な面差しで式典に臨む生徒たち

エデュ:受験生や保護者の方々へメッセージをお願いします。

松下先生:私たち教員は、生徒たちが大人になってからも幸せに生きていくことを願っています。そして、幸せになる秘訣は人に喜ばれることです。卒業後には社会の荒波に揉まれると思いますが、社会への対応力よりも、人を信頼できる力を先に育てたい。なぜなら、それが生きる基盤になるからです。例え、どんなにつらい場所にいても、“自分は中高で愛された大切な存在なんだ”ということを忘れずに、たくましく生きていってほしいのです。純心で、友達とともに幸せな生き方を学んでほしいと思います。

編集者から見たポイント

「学力や能力とは関係なく、絶対的な価値が一人ひとりにあるのです」という松下先生の言葉からは、まるで家族のような無償の愛を感じました。週に1度の聖書朝礼など、普段から生徒たちと言葉を交わす機会を大切にしている松下先生。生徒たちが純心で受け取るたくさんの愛は、人生を支えてくれる宝物になるでしょう。

学校公式サイト ≫

学校説明会・イベント日程

イベント名 日時 備考
学校説明会 2021年10月16日(土) 10:30~12:00 要予約
学校説明会 2021年11月13日(土) 10:30~12:00 要予約
イベント予約はこちらから ≫

その他の連載コンテンツ

大学進学に直結する充実のサポートと高大連携の取り組み

進路部部長の中村剛先生にお話をうかがい、大学や卒業生と連携した校内外の進学サポートや、純心ならではの進路指導についてご紹介します。記事を読む≫

純心生の圧倒的英語力を育む留学制度と授業の秘訣

純心の英語の目玉ともいえる語学研修・ターム留学と、英語力を育む日々の授業内容のこだわりについて、英語担当の坂梨陽先生と新井華子先生にうかがいました。記事を読む≫