第7回 脳トレ教授が朝ごはんやスマホと、成績の関係を解明!:エデュママブック

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2015年7月17日

第7回 脳トレ教授が朝ごはんやスマホと、成績の関係を解明!

inter-edu’s eye
「脳トレ教授」として名高い川島隆太先生は、子どもたちの生活習慣(朝ごはんや睡眠、スマホ使用など)と学力や脳の働きの関係について研究。その結果は、なんと受験した大学の合格率にまで関係があるという驚きのものでした。研究データに基づいたユニークな教育書です。

子どもの生活習慣は、成績や将来にどう影響するのか?

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「脳科学者の私は、子どもたちの将来を本気で憂えています。なぜなら、子どもたちの脳の発達や将来にとって、毎日の生活習慣がどれほど大切なのかということを、最先端の脳の研究などを使って調べたからにほかなりません。その結果は、実に驚くべきものでした。」(P27)

これは、脳トレでおなじみの東北大学教授、川島隆太先生の新著『ホットケーキで「脳力」が上がる』からの引用です。川島先生はこの本で、脳科学の最先端の実験、多くの子ども、学生、親、大人を対象に行われた調査や実験などで判明した、生活習慣が人間の脳に及ぼす影響を報告しておられます。学力、成績、大学合格率、さらにはやる気や成長してからの幸福感などが、子どもの頃の生活習慣によって大きく変わってくるというのです。

その結果は先生ご自身も驚くほどのものだったようで、不規則かつ深夜にシフトした現代のライフスタイルが、子どもに与える影響はきわめて深刻だと警鐘を鳴らしておられます。具体的には朝ごはんの有無や内容、睡眠時間、親子関係、スマホや携帯電話の使用などが、子どもの学力や心に与える影響が、さまざまな調査と実験結果をベースに語られています。どれも、親としては正確な情報を得ておきたいことばかり。ぜひ一度手にとっていただきたい本です。

朝ごはん、何をどう食べているかと成績の間に強い相関関係が

まず、各章のタイトルをご紹介しましょう。

第1章 「何かがおかしい」子どもたちが急増
第2章 すべての子どもに必要な「朝ごはん」
第3章 朝食の「質」と「摂り方」でこんなに変わる
第4章 「ホットケーキ作り」がもたらすもの
第5章 「早寝、早起き、朝ごはん」のためにできること
第6章 脳のさらなる可能性

章タイトルを見るだけでもある程度想像がつくと思いますが、川島先生は、「早寝、早起き、朝ごはん」というごく当たり前な生活習慣が、子どもにとってきわめて大事な習慣なのだと強く訴えておられます。道徳意識からではなく、「早寝、早起き、朝ごはん」を守っている子ほど成績がよく、いい大学に合格しており、大人になっても幸福感が高いということが、さまざまな調査からわかっているからです。

驚きなのは、朝ごはんを食べたあとで一桁の連続足し算をして正答率をみるという実験の結果です。同じ人が朝ごはんを抜くと、成績が1~2割成績が下がる、さらにおにぎりだけの朝ごはんより、きちんとおかずをとったほうが脳がより活性化するというのです。

「朝ごはんがパンのみという子どもたちは、すべての脳の働きが低い傾向があります。
また、朝ごはんでおかずを食べていない子どもたちというのもまったく同じで、ほぼすべての脳の働きが低い傾向があります。
その一方で、食事中に親との会話が多い子どもたちというのはすべての脳の機能が高い傾向があり、手作りの食事の割合が高い子どもたちもすべての脳の機能が高い傾向があります」(同書P72)

親子でホットケーキを作ると、いいことがある!?

本のタイトルにあるホットケーキが何を意味するのかといえば、親子コミュニケーションです。川島先生は、親子コミュニケーションが子どもの認知発達や心の発達に重要なのではないかという仮説を立て、幼稚園児とその親29組を二つに分け、一方のグループは、週1回親子でホットケーキを作ってもらう、もう一方にはいつもどおり過ごしてもらうという実験をしました。

すると週1回ホットケーキを作り続けた親子には、大きな変化があったと言います。まず子どもには、「親を喜ばせる反応が増えた」「機嫌の悪さが減った」「親の期待どおりに動いてくれるようになった」などの変化があり、親の方にも「子育てへの自信につながった」などの変化がみられたとか。詳細は本書を読んでいただくとして、この実験自体が、多忙な中でホットケーキ作りを続けた親子に大変いい効果をもたらしたようだと、川島先生。こうした親子のコミュニケーションの大切さは、成長後の大学生への調査からも明白なのだそうです。

スマホ、携帯電話、ゲーム、LINEが成績に及ぼす影響

また、きわめて現代的な習慣であるスマホやゲームの影響についても、川島先生は自ら行われた調査結果に基づいて語っておられます。

スマホや携帯電話が子どもに悪影響があるというとき、その原因は長時間の使用で勉強時間や睡眠時間が減るからだろうと考えてしまいがちですが、川島先生が中学生を対象に行った調査によると、睡眠や学習時間の長短に関係なく、スマホを長時間使うこと自体が学力の低下をもたらしているといいます。さらに高校生への調査でも同じ結果が出ました。

スマホや携帯電話を長時間使用することは、子どもたちが学んだものを脳から消し去るという、非常に強いネガティブな作用があるようです。おそらく、テレビを長時間見たときに脳の発達が悪くなったというのと同じような、健全な脳発達を阻害する強い負の作用があるということが考えられます」と川島先生。

大学生を対象に行った単語の意味調べによる脳の活動を調べる実験では、辞書を使って行ったときには左右の前頭前野が活発に働いていたのに対して、スマホとウィキペディアを使って行ったときには前頭前野がまったく働いていないどころか、弱い抑制がかかっていたのだそうです。

ただしスマホや携帯電話は、使用時間が1日1時間未満の子どもにはほとんど影響が出ていません。かつ両者を使っていない子よりは1時間未満使っている子のほうが少し成績がよかったのだそうです。これはゲームでも同じで、まったくやっていない子よりは1時間未満ゲームを楽しんでいる子のほうが少し成績がいいのだとか。

またあっという間に普及したLINEなどのコミュニケーションアプリですが、川島先生は、学力と使用時間の関係を調査した結果から、その危険性はスマホ以上ではないかと、非常に心配されておられます。

子育てに関しては、昔から当たり前にしていたことが科学的には実は正しかったことが証明できたのではないかと思っています。」と、川島先生はあとがきに書いておられます。スマホなどの新しいツールは、まだ大人でもその全貌が見えていません。快適さ、便利さにハマっている間に大事な何かを失っていないか、子どもを持つ親としてはしっかり考えておく必要がありそうですね。

川島隆太著,ホットケーキで「脳力」が上がる,小学館,エデュママブック

ホットケーキで「脳力」が上がる
川島隆太著、小学館刊、1400円+税
「脳トレ教授」として世界的に知られる東北大学・川島隆太教授が、近年「この国の未来のために」と心血を注いできた研究のデータから綴る渾身のメッセージ! 子どもたちの朝食の内容、デジタルツールの使い方、子育て中の親のスマホ利用時間・・・・これらのことがどれだけ日本人の将来をダイレクトに脅かしているかを、実験から得た数字で示していく。学習はまともにできるのに「何かがおかしい子どもたち」が激増している背景を、脳科学の見地から具体的に検証していく一方、毎日の生活をどう変えれば好転させることができるのかもていねいに説明。子どもを持つ親も、これから持つ可能性のある人も、子育てに関係ない大人も、すべての人の目からウロコを落とす、最新の脳科学ノンフィクション。
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川島隆太,エデュママブック

著者の川島隆太(かわしまりゅうた)さん
1959年千葉県出身。東北大学医学部卒業。同大学医学系研究科修了。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学助手、講師を経て、現在同大学教授。医学博士。元文化審議会国語分科会委員。脳のどの部分にどのような機能があるのかを調べる「ブレインイメージング研究」の日本における第一人者。主な著書に、『自分の脳を自分で育てる』『脳を育て、夢をかなえる』(共に、くもん出版)、『読み、書き、計算が子どもの脳を育てる』(子どもの未来社)などがある。

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