中学受験で溜まるストレス!実体験で得たメンタルトレーニング

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第28回では、大学卒業後IT業界での仕事を20年経験し、現在は主に中学受験をする親御さんのメンタルコーチとして起業された大柳美紗さんにインタビュー。ご自身もお子さまの中学受験サポートで苦しんだお話し、親御さんにしかできないメンタルサポートの方法などをうかがってきました。

娘の中学受験で生じた親子の亀裂

中学受験ママのメンタルサポートが使命

大柳さん1

エデュ:まずは大柳さんが現在のメンタルコーチになろうと思ったきっかけを教えてください。

大柳さん:長女が小学校3年生の春から中学受験をするために、塾に通っていたのですが、偏差値が上がった下がったで一喜一憂。娘が勉強をやらないとイライラするし、私がガミガミ怒れば、子どもは泣くし、自分も泣く…。今思い出しても本当に悲惨でした。そんなことがずっと続いて、さすがにこのままでは中学受験に失敗するだけではなく、親子の関係性も崩れてしまうと感じ、娘が小学6年生の7月で仕事を辞め、それまでは塾任せなところでしたが、娘のサポートに専念することにしました。サポートをするにあたり、中学受験のことだけではなく、メンタルや心のことを学び実践し、無事、第1志望校に合格。

合格後、周りのママ友から受験に関して相談を受けたのですが、本当に悲惨で…。例えば、子どもがストレスから心が壊れかけ、自己肯定感が下がり、やる気をなくしてしまったり、家庭内で暴れて家の壁に穴が空いてしまったとか。 まるでかつての自分たちを見ているようで、心が痛みました。自分の中学受験のときを見ているようだったのですが、私が話すと単なるアドバイスになってしまうので…。心理学、コーチング、脳科学メンタルトレーニングを本格的に学び、今の世の中で悩んでいる中学受験ママのメンタルサポートをすることこそが自分の使命だと感じ、昨年起業するに至りました。

エデュ:普段はどのような活動されているのでしょうか?

大柳さん:主に中学受験をされるお子さまをお持ちのお母さま向けに講座、セミナー、個別セッション、メール相談をしています。どの方も本当に昔の私を見ているようで、お気持ちが良く分かります。中学受験に関しては3つの悩みに大きく分けられると思います。

エデュ:それは何でしょうか?

大柳さん:1.子どもの成績、2.やる気のない態度、3.自分の感情をコントロールできずイライラしてしまうことです。でもその根底にあるのはやっぱり親の「愛」だと思います。親が子どもに愛情を持っていて、子どもの将来が大切だからこそ、心配で不安や焦りが募った結果、お母さまの怒りになってしまっていると感じています

絶望から合格を勝ち取ったワケ

「やってよかった!」と言える中学受験にするために

大柳さん2

エデュ:大柳さんが厳しい状況からどうやって娘さんと合格を勝ち取ったのかを教えてください。

大柳さん:中学受験の情報収集や子どもの勉強を見ることはもちろんのこと、これまでのやり方とは全く別のことをしていきました。それは、一つは、自分の子どもへの接し方を変えること、つまり、自分自身(親)のあり方を変えることと、中学受験の戦略を立てることでした。
私たちが住んでいる地域は中学受験が盛んなところで、小学校に入った時点でママ友の間では「中学受験どうする?」という話題が出ます。周りに流されて、娘が小学校4年生になる前の春休みに大手塾に入れましたが、正直中学受験をする意味が分かりませんでした。私自身の気持ちもぶれているので、当然娘もぶれて、勉強も中途半端…。そんな状態が続いて気がつけば6年生。まだ悩んでいましたが、もう後には引けない状態で…。親子ともども、心身ともに疲弊していたある時、このままでは駄目だと思いました。そこでまずは自分のあり方を変えていくこと、具体的には内面を整えることに集中していきました。

エデュ:そういった考えに至るまでのきっかけは何かあったのでしょうか?

大柳さん:2つあります。1つ目はスポーツメンタルトレーニングの本を読んだこと、2つ目がフィギュアスケーターの羽生結弦選手の10代とは思えないインタビューの受け答えや結果を出している姿を見たことです。

そして本などを読み分析していくなかで、スポーツも受験も同じだと悟りました。1つの高い目標に挑む時にはメンタルの強さが必要になってきます。でも10歳~12歳の子どもにそれを求めるのは難しいことですよね。親としても初めての中学受験ではどうしていいか分からない…。実力はあるのかもしれないけど、メンタルの弱さがもとになり望まない結果を引き寄せてしまうことを感じました。

スポーツメンタルでは「心技体」という精神論があります。
「体」は体力・健康でこれは普段親御さんがサポートされていること。
「技」は、学力や勉強法で、これは塾や家庭教師の先生、親御さんがサポートしています。
「心」は精神力、集中力、粘り強さ、心の持ち方ですが、それは誰もサポートできていないことに気づきました。だからこそ、親である私自身のあり方を変え、自分のメンタルトレーニングをするとともに、子どもにもメンタルトレーニングをしていきました。 ポイントは子どものワクワク感情にアプローチすることです。

エデュ:具体的にはどんなことをしたのでしょうか?

大柳さん:まず心理マインドマップのセッションを受けて、自分の深層心理と向き合いました。 そして「感謝ノート」というものを毎日書きました。毎日感謝できることを10個書き出していくというものです。それまでは娘が悪い、塾の先生が悪いと人のせいばかりで不平不満だらけ。ですが、子ども自身に対しても、主人や家族、友人、塾や家庭教師の先生、中学受験できる環境やありとあらゆること、もの、人への感謝を意識することで、見る世界が変わっていきました。それとともに、自分の与えられていることの大きさを知り、心も落ち着いてきて、前向きに日々、過ごせるようになりました。

あとは「未来日記」です。それまで私は左脳でばかり考えていました。左脳は過去を考える脳で、計画、分析、論理的思考で、大人になるにつれてその傾向が強くなってきます。いつも子どもの駄目なところ、失敗した過去ばかりみては、不安、焦り、イライラが生まれていました。でも未来を考える右脳を使い、まず「中学受験を通してどうなりたいのか?」、「中学受験で成功して学校に入って、娘にこう育ってほしい」というのを未来日記に書き込んでいきました。それまでは結果主義の私でしたが、「中学受験生活のあり方、過ごし方」に重きが行くようになり、結果は二の次と考えるようになりました。

すぐに実践できる勉強を好きになる方法3つ

子どもは無限に伸びる可能性がある

大柳さん3

エデュ:勉強を好きではない子はどうすれば好きになるのでしょうか?

大柳さん:結論からいうと「勉強が嫌いな子はいない」と思います。それまでの過ごし方や勉強の仕方が誤っていたために「勉強嫌い」になってしまっただけです。人間は生まれて、赤ちゃんの頃から寝返りやハイハイ、つかまり立ち、自分で食べ物をつかんで食べるという挑戦を繰り返し、成功体験を積んできました。ですからもっともっと成長したいのが人間であり、子どもは無限に伸びる可能性の宝庫です。ここではすぐに実践できる方法を3つご紹介します。

1つ目は「勉強ではなくて成長に焦点をあてること」です。
半年前、1年前、2年前と比べてどれだけその子が伸びたのか、どれだけ成長したのかを、日々、言葉で伝えてあげることが大切です。
「この問題、半年前は全く歯が立たなかったのに、こんなに解けるようになったね。」
「昔、よく自転車の練習、転んでも転んでも頑張ったよね、だから乗れるようになったよね。」
といった風に勉強だけではなくて、日々(過去)のお子さんの成長、努力を言葉で伝えてあげましょう。「えらいね」ではなく「頑張ったね」とその子が達成してきたこと、成長したことを認めてあげることが大事です。心が前向きになると、目の前の難しい問題にも、「じゃあ、もうちょっとやってみようか」と挑戦意欲がまた出てくるものです。

2つ目は「得意科目、好きな勉強を優先させること」です。
机上で正しい姿勢で正しい鉛筆の持ち方で、塾のテキストだけを使って勉強することが全てではありません。好きな科目があるなら、そっちを優先してまず伸ばすことをおすすめします。とくに日本人は完璧主義なことから、「できてないところ」「足りないところ」を少しでも穴埋めしてできるようにと考えがちです。立派な成績の得意科目があるのに、親御さんはついつい、苦手なもの・点が低いものをなんとかしようと躍起になってしまう。また、本人が完璧主義の場合は、なんとかしたいと思いつつも、気がのらない勉強にダラダラと時間をかけてしまう。どちらの場合も、良い結果にはつながりにくいですよね。

そこで大切なのが、「好きな(得意な)科目をさらに伸ばす」ことです。そうすれば、まず心が前向きになり、さらに自分に自信がついてきます。何か1つでも、得意なもの、人よりも頑張ったものがあることはお子さま自身に、大きな自信とやる気を引き出してくれます。

そこから他の苦手科目や、不得意科目への挑戦意欲(自己効力感)も生まれます。また中学受験はほとんど総合点で合否が決まるので、最終的に得意なものでカバーできれば、合格できます。ここで、「不得意なものが足を引っぱっては…」と考えがちですが、その対策も入試前には必ずします。
普段の中学受験勉強においては、勉強に対する子どもの心を前向きにさせることを最優先に考えてくださいね。1つも好きな科目がないなら、何か1つ、突破口を探しましょう。

エデュ:なるほど。最後の3つ目は何でしょうか?

大柳さん:3つ目は「勉強=興味(好奇心)を持たせること」です。
わが家の長女も、歴史が大嫌いでした。嫌いというか、興味が全くありませんでした。塾から出された宿題はこなすものの、覚える気が全くないものですから、試験では散々な結果ばかりでしたね。さすがにこれはマズイと、一緒に徹夜して、歴史の年表を手作りしたこともありましたが、作ったことに満足しただけでした。「歴史って暗記だから!覚えて!」と言ったところで、全く小学生の娘の心には響かないのです。

ここでは、子どもの感情スイッチを押すことを実践しました。王道の「歴史漫画」。これも今の時代、様々な漫画が出版されています。最初は、なんとなくこれ良さそうと思ったものを買い与えていましたが、娘は気に入ることなく、終わりました。

子どもを普段から観察することの重要性はこういったところにあります。娘が一体、普段、どんなものに興味があり、どんな絵柄を好むのか、どんなことに好奇心をそそられるのか、そこからヒントを得て、別の歴史漫画を与えたところ、ヒットしました!
また、興味を引き出すきっかけとなったのが、私や他の親御さんも悩みの種の一つであろう、ゲームでした。中学受験にゲームはご法度!と思い、私もとりあげていたものの、時間厳守で、ある歴史(戦国時代)を場面設定したゲームを許したところ、そこから戦国武将を次々に覚えていきました。

さらに、家庭教師の先生にお願いして、6年生の夏休みを全部かけて、歴史を卑弥呼の頃から現代まで、ずっと、ストーリー仕立てでドラマティックに教えていただいたのです。歴史は、ヒューマンドラマです。誰と誰がどんな感情を抱き、どのように時代が動いていったか、プロ家庭教師の先生が、テキストにも載ってないようなことまで、時代の背景とともに話してくれました。結果的に歴史が今でも好きになっています。

乗り越えて分かった中学受験のメリット

エデュ:頭では分かっていてもつい余計なことを言ってしまったときはどうすればいいでしょうか?

大柳さん:どんな状況であれ、子どもに謝ります。「私がどんな気持ちだったか、なぜそんな事を言ってしまったか」を子どもに話したうえで、きちんと謝ります。大人が自分の否を認めて謝る態度を子どもに見せることも、立派な子育てのひとつだと思います。私自身は、セルフ・メンタルトレーニングをすることで「怒り」をコントロールするようにしていました。

余計なことを言ってしまうのは、お母さま自身のメンタルが弱いせいでもあると思うのです。子ども(他人)のできていないところ、欠点、ダメなところに意識がフォーカスしてしまい指摘せずにいられない心理とは、自分自身の自己肯定感も低い可能性があります。相手のことが認められない、許せない、蔑む心理があるかと思います。本当に自分のメンタル強化をしていくことで、自尊心も高まり、相手の長所や短所に対しても認められるようになります。だからこそ、自分の内面の弱さが、相手への「余計な一言」となってしまいます。

お子さまのためにも、一生もののメンタルを身につけることは、今後、お母さま自身の生きやすさにも、子育てにもつながってくると思います。

エデュ:最後に、中学受験するメリットをどのようにお考えか教えてください。

大柳さん:4つあります。
1つ目が、学習習慣づくりができ、好奇心を養えること。
2つ目が、友人や先生との心の交流。
3つ目が、親子で成長し、子どもの可能性を伸ばせる機会になること。
そして4つ目が、子どもの脳のゴールデンエイジに、脳を活発に動かす「メンタル強化できる機会」を持つことができる点です。

中学受験を私は推進しているわけではありません。ですが、せっかく10歳前後の脳の発育が著しいこの時期に、親子で一緒に「志望校合格」という高い目標に向かって努力することは、お子さまにとってもお母さまにとっても貴重な体験となることでしょう。そして、この中学受験を貴重な体験とするのか、苦しいだけの体験とするのかは、本当に、その家族、親自身のあり方次第です。中学受験では「合格」という結果だけにとらわれず、親子の絆を強くすることや、子どもの心(メンタル)を強くすること、心を育てることにも意識していただきたいと思います。大切なことは何か、失いたくないものは何か、理想の状況とは、親としてどうありたいのか、という軸を持って、「やってよかったね!」と言える中学受験にしていってください。

編集者から見たポイント

今回の取材を通し、教育者としてだけではなく元中学受験ママとして実体験から語られる大柳さんのお話は説得力がありました。子は親を見て育つと言いますが、それは中学受験に強く表れると改めて感じました。
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