小学生からのプログラミング教育 子どもにもたらす効果とは?

inter-edu’s eye
2020年度より小学校でもプログラミング教育が必修化となります。しかし親世代からすると、プログラミングは未知なる世界と感じる方もいるのではないでしょうか。今回は、首都圏の小・中学校を対象に無償でプログラミング授業を行っている株式会社VSN(以下、VSN)に取材し、実際に授業を受ける子どもたちの姿勢や効果についてお話をうかがいました。

子どもたちは興味津々!画面を見せるだけで釘付けに

インターエデュ:現場でのプログラミング授業は、実際どのようなものなのでしょうか?

VSN:プログラミング能力や論理的思考力を身につけるための授業というはもちろんですが、今後の人生において必要な能力であると実感してもらうことも大事だと思っています。最初は自動車の自動運転や駅の自動改札などの例を用いて、そこにはプログラミングが関わっているということを知ってもらい、世の中が自動化・IT化している説明をすると、「なるほど」という表情になりますね。

授業では「スクラッチ※」を使用しています。まずは基本操作を説明して、実際にアニメーションを作り、最後に発表する際は工夫した点などを紹介してもらっています。

インターエデュ:プログラミングに初めて触れるという子も多いと思うのですが、最初はどんな反応がありますか?

VSN:スクラッチの画面を見せて説明すると、「もう早くやりたい!」とウズウズしていることが多いですね。さまざまなキャラクターが出てくるだけで釘付けになりますし、実際、子どもたちはとても真剣に取り組みます。中には思っているとおりにプログラミングができない悔しさで泣いてしまう子もいるくらいです。

授業は90分で途中休憩もありますが、子どもたちは集中しているため、休憩時間はほとんど席を立たないですね。

プログラミングの具体的な事例
現代の子どもたちは自動改札しか知らないため、昔は駅員さんが切符を切っていたと話すと、すごく驚くそうです。具体的な事例を交えて説明すると、プログラミングが何かを理解できるようです。
スクラッチ
「スクラッチ※」子どもむけのプログラミング言語。難しいコードを書く必要はなく、指示を出すブロックやアニメーションのキャラクターを動かしてつなぎあわせるだけで、キャラクターが指示どおりの動きをします。

プログラミングへのハードルの高さは、先生や親の先入観!?

インターエデュ:授業を行ってもらった学校側、先生方の反響はどんな感じでしたか?

VSN:2020年より必修化が決まったものの、教育現場では実際に何をしていいか分からないと困っている状況のようで、「とにかく助けてほしい」とたいへん多くの依頼や相談をいただきました。

学校からの事前の情報で「生徒がしっかり話を聞いて取り組んでくれるかどうか…。」と不安に思いながら挑んだ授業でも、子どもたちは、おもしろい作品を作りたい想いから積極的に質問をし、画面に食いつくように集中してくれました。先生方から「こんなにちゃんとやってくれるとは!」と驚きの声をもらいましたね。 もう一度授業に来てほしいというリピーターのお問い合わせも多いです。 後日、私たちの授業をきっかけに、通常の授業にプログラミングを取り入れたという報告をいただいたこともあります。

授業の様子
子どもたちの熱心な姿に、先生も感化されます。

インターエデュ:現場でも興味をもってもらって、学校側が続けて授業に取り入れてくれる流れがあるといいですよね。教員を対象とした授業も提供されているということですが。

VSN:教員向けの授業は、プログラミングそのものを知ってもらうために子どもたちの授業と同じ内容なのですが、それに加えて、プログラミング教育の効果をお伝えしています。プログラミングを授業に取り入れることに対してICT担当の先生はすごく熱心なのですが、多くの先生は通常の授業が忙しすぎて、なかなか新しい取り組みに時間を割けないようですね。

授業を受けた先生から「これなら教えられるかも」と感想をいただくことも多いです。プログラム言語やパソコンは難しいといった先入観があるのかもしれませんね。

今後必要になるロジカルシンキングの重要さ

インターエデュ:プログラミング教育は、子どもたちにとってどんな影響があると思いますか?

VSN:もともとプログラミングは「論理的思考」を鍛えるためのツールの1つとして必修化されたものです。そのほか、今の小学生が生まれたときはすでにスマートフォンが存在していましたし、今後もテクノロジーは急速に進んでいくことと思います。 ITリテラシーはこれからの世の中を生きていくために不可欠となりますので、小学生のうちからプログラミングを通して感覚を養うことは大切だと思っています。

インターエデュ:長期にわたって授業を行われた学校では、どんな変化が見られたのでしょうか?

VSN:全5回、約9か月かけて4~6年生の子どもたちに授業をした学校があります。最後はロボットを動かすまでになりましたね。そこまでできたのは子どもたちの発想の柔軟さ、目の前のものに興味を持つ力だと思います。

インターエデュ:やはりスクラッチから入ったのでしょうか?

VSN:このクラスの場合は違います。弊社ではプログラミングのほかにも、ロジカルシンキングの考え方を学ぶ授業を提供しています。まずロジカルシンキング授業、それからスクラッチ、そのあとロボットというように進めました。これからの社会ではより問題解決能力が必要とされます。そこで子どもたちにもロジカルシンキングとは何かを感じてもらいたいと思い、2018年度からロジカルシンキング授業の提供も始めました。

インターエデュ:どんな授業なのでしょうか? また、その授業を受けた後でプログラミング授業をするのとしないのとではどんな違いがありますか?

VSN:アイデアを広げるため「東京から大阪までの移動方法を考える」授業と、漫画のコマのようなカードを数十枚用意して、話が矛盾しないように「物語をつくる」内容の授業をグループワークで行います。発想を豊かにし、物事を順序立てて考えることの楽しさや難しさを体感できます。

プログラミングの授業だけだと簡単な動きのアニメーションを作って、「楽しかった」で終わってしまうこともあります。また、キャラクターを思いどおりに動かすために必須のプログラムが抜けたまま作品作りを進めてしまうこともあるのですが、そういうことがロジカルシンキング授業後は少ない気がします。

子どもの能力を引き出すきっかけに

インターエデュ:今まで授業をした中で印象に残ったエピソードなどはありますか?

VSN:授業後、子どもたちに書いてもらっているアンケートで、「自分は医療関係の職業に就きたいと思っていたので、こういった技術で世の中の人を助けたいと思いました。」というコメントをくれた子がいて、その子の中で自身の可能性を広げてくれたんだなと印象に残っています。

生徒からのお礼メッセージ
生徒から授業へのお礼メッセージをもらったことも。励みになったそうです。

また、学校の先生からいただいた授業のフィードバックで、いわゆる通常の授業の中ではあまり目立たない子がプログラミング授業で素晴らしい作品を作ってクラスメイトからも褒められたことから、その子に自信がついたという報告をもらったこともあります。

学校がつまらないと不登校だった子に、先生が「今日と明日は普段と違った授業があるから」と録画した弊社のプログラミング授業の様子を見せたら翌日の授業に参加してくれ、それをきっかけに登校できるようになったという例もありました。

インターエデュ:プログラミングは子どもたちの可能性を広げてくれるのですね!

編集者から見たポイント

株式会社VSN

プログラミングというものに対して必要以上に構えてしまっているのは、親や先生方のほうなのかもしれません。スクラッチというツールの出現も手伝って、デジタルネイティブ世代と言われる子どもたちにとってはプログラミングに対するハードルは低く、より身近な存在へと変わりつつあります。しかしながら大人が扉を開いてあげなければそこに触れるきっかけや可能性さえも減ってしまうもの。そういった意味では、今回取材した株式会社VSNの功績はとても大きいと感じました。プログラミング必修化の2020年を一つの区切りとして授業の無償サービスを続けていきたいとのこと。今後のサービス展開に期待したいですね。


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