親として子どもにできる最高の教育とは何か〜伸芽会主催「わが子に贈る最高の教育」セミナーより〜

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教育事情が日々変わっていく今、わが子にとって最適な教育環境とはどういうものなのか、親として何を用意してあげればいいのか、悩む親御さんも多いことでしょう。そうした中、小学校受験の伸芽会は12月1日、ハイアットリージェンシー東京(東京都新宿区)において0歳から小学生の保護者に向けて、わが子への「教育」について考えるセミナーを開催しました。当日は約500名の保護者が参加。「科学的根拠に基づいた教育」についての他、現在の中学受験・大学受験事情など、教育をめぐる幅広い内容に真剣な眼差しで聞き入っていました。このセミナーの模様についてご紹介していきます。

日本の教育に足りないのは科学的根拠に基づいた政策

セミナー全景

講演会は3部で構成され、第1部は慶應義塾大学総合政策学部教授の中室牧子氏による基調講演「教育に科学的根拠を〜子どもにとってよりよい教育とは〜」が行われました。

中室氏の専門は、経済学の理論や手法を用いて教育を分析する「教育経済学」。2015年発行の著書「『学力』の経済学」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は発行部数累計30万部のベストセラーとなりました。

講演では、科学的根拠(エビデンス)に基づいた教育政策の重要性について語られました。

中室氏は、日本では教育政策について語る際、自身の過去の経験に基づいて話が進められる傾向にあると言います。「個人の体験は必ずしも全体を表すものではない。個人の体験を大量に観察する、いわゆるビッグデータの中から観察される規則性を、政策判断や学校教育上の指針にしていく必要があるのではないか」と語りました。また、教育政策の効果を測定し、科学的に信頼できるものに投資しようという考え方が、わが国ではあまり定着していない現状について、「ゆとり教育など、実施後に効果がわからないまま終わるという政策が多くあるが、まずはパイロット実験をやり、検証・確認した上で全国展開するという考え方も必要ではないか」と語りました。

経済学の観点から受験の参考になる2つのヒント

後半は近年の経済学研究の中で受験の参考になる2つのヒントが紹介されました。

一つ目は、第1志望の最下位と第2志望の1位ではどちらが有利かというものです。

第1志望に選ぶ学校の多くは偏差値の高い学校であり、親としては高い学校に行ってほしいと思うもの。それは優秀な人が集まるところでもありそうした友人からの影響で、子どもの能力も高まるのではという期待からでしょう。しかし、果たしてその効果は本当なのか。アメリカの空軍、陸軍士官学校での研究結果によると、最も学力の高い生徒と低い生徒を同じクラスにした結果、学力の低い生徒はさらに学力が低下したという結果に。低学力層の生徒は同じく低学力層生徒としか交流せず、十分高い学力なのに校内順位が低いことで高い成果を出せず、学力の高い人と比較することで自分の学力を過小評価してしまう傾向にあるとのことでした。

二つ目は、共学か別学かという問題。

難関大学の合格者数は別学出身が多いことからもよく議論になりますが、しかしこれは別学に優秀な生徒が集まってきているだけかもしれない可能性は十分にあり、実際のところランダムに学力を比較するような実験を行わない限り、別学と共学の教育効果を正確に比較することは難しいとのこと。しかし、男女の間には能力に差はなくなってきても、性向や非認知能力の間にはかなりはっきりとした差があり、そうしたことを考えて、性向に応じた教育環境を提供できる意味においては別学が有利という可能性があると中室氏は分析しています。

変化する時代に合わせて必要な学力とは

試験会場

第2部は「これからの時代を生き抜くために必要な力と中学受験・大学入試制度」について、TOMAS入試対策本部の伊藤輝明氏によるガイダンスです。

現在、大学入試や新学習指導要領が変わるなど日本は今、大きく教育が変わる端境期にいます。なぜ変わるのかその要因について伊藤氏は次のように解説しました。

「日本の教育を変えるために大学入試を変えるということが起こっています。またこれからは思考力・判断力・表現力が求められます。なぜ変わるのか、これは産業界からの要望です。これまでの学力はペーパー式のテストで知識の量が問われ、そして答えがありました。しかし世の中が変わり常識が刻々と変化し、仕事のあり方も変わるだろうといわれています。これから新しい仕事、ビジネスを考えていけるようにならなければいけない、そうした子どもたちを育てなければならないのです」と現状を分析。

その上で、「今までの価値観、倫理観が変わるなかで、唯一わかっていることはグローバル化が進むということ」と語りました。進学先として海外に出ていく子どもが増えている。また就職先は海外企業という場合もあります。それがもう当たり前の時代。また生産年齢人口が減少する中、海外から労働者を雇うということも考えられます。今まで誰も経験したことがない中で未解決の問題に取り組む人材は欠かせないというのです。

「21世紀後半を担うのは私たちの子どもです。その世代をたくましく育てていくために、わからないなりに一つひとつ問題にチャレンジしていける子を育てていきたいという問題意識として出てきた。自分たちで考え、やってみよう、そういう子たちをどれだけ育てていけるかという中で、教育改革が叫ばれるようになったのです」とし、教育がどう変わるか、なぜ変えようとしているのか、親としてその意識を持つことが大切と説きました。

では社会から求められている学力と入試改革とにどんな関係があるのでしょうか。伊藤氏は、生徒にとってはどうしても入試が目標となり、その入試対策の弊害としてどうしてもパターン学習に頼りすぎていることを示唆。とにかく量を教える、知識だけが頼りになる入試傾向では、言われた通りにだけ問題を解く、意味がわからないけど問題が解けてしまうそういう子が出てきたからだと話します。

「現実問題としてそれでも受かってしまう学校もあり、それを変えなければならないという時代になった。今先生たちは必死にどうしたらクリエイティブな子ができるんだろうと努力をされている」(伊藤氏)。

中学受験の入試傾向の変化は最難関校の問題にヒントがある

では今後の入試傾向はどのように変わるのでしょうか。それについて伊藤氏は「最難関校の入試問題にヒントがあります。その問題傾向を見ていくと今後どう変わっていくかがわかる」ということで中学受験の例として、2019年度の開成の算数、慶應義塾藤沢の国語、麻布の社会を例にあげました。

最後に伊藤氏は、「繰り返すことに対して苦ではない子、世の中に興味をもつ、なんでだろう、どうしてだろうと思う気持ちが大切になる。これからの勉強とは、知識や技能を身につけ、それを生かし自分で考え、判断し、表現することが重要になります。そして勉強の題材は問題集の中だけではなく日常生活の中にある」とこれからの取り組み方へのヒントを提起し第2部が終わりました。

どの様に学ぶかを考えるべき時代の学習とは

大久保太郎氏

第3部は伸芽会教育研究所研究員であり幼児教室の現役の先生でもある大久保太郎氏による「私立・国立・公立小学校の現状と伸芽会の幼小一貫教育」についての講演です。小学校受験を担当している大久保氏は、毎年有名私立小学校に多くの生徒を送り出しています。

教育改革や入試改革が行われるに至った背景について、大久保氏は「簡単にまとめると社会が変わったからというのが理由」と見解を語りました。そのポイントとしては経済状況が変化し、昔のような価値観が通用しなくなったこと、そしてインターネットの普及で進んだ情報化にあるといいます。知識の取得やコミュニケーションがインターネットにより簡単になった今、知っているというより知りたいという意欲や、知識をどのように扱い、何を生み出すかが求められる時代になったわけです。

こうした環境においては、学習方法もやはり変化が必要になるのは必然といえるでしょう。
大久保氏も「どの様に学ぶかも考えなければならない時代になった」と語りました。

「受け身ではなく能動的に学習し、考える力を獲得する、アクティブ・ラーニングが求められるようになりました。アクティブ・ラーニングのポイントは3つあります。一つは“主体性”。興味関心が増し、見通しをもって粘り強く学ぶ力がつく。次に“双方向性”。生徒が先生や他の生徒、地域の方とともに学びあい、理解する力になる。最後に“発展性”。気がつく、見つける、活用する、応用する、自分の問題点を見つけ解決策を見つけ出すということが期待されていると思います。」

私立小学校ではカリキュラムを独自に組み立てられるので、それぞれの学校の理念に基づきつつ、こうした時代に合わせた教育が可能になります。

これらを踏まえて、私立小学校の学びの事例として、2019年に開校したばかりの「東京農業大学稲花小学校」や、「東京女学館小学校」「暁星小学校」「青山学院初等部」の取り組みから学校側がどのような子を求めているのか、どんな子を育てたいかという視点で紹介がありました。

大久保氏は「受験はゴールではありません。お子さんには自分で考える、感じる、解決できる能力を身につけて欲しいと考えています」と語り、講演会は終了しました。

edu’sポイント
このセミナーのあと、2020年度の大学共通テストにおいて、国語・数学の記述式問題導入が見送りになるなど、教育政策に大きな動きがありました。2019年の後半はこうした入試改革に端を発した教育政策のゆらぎに大きく振り回された気がします。なぜこうなったのか、何が問題だったのか、中室氏のエビデンスに基づいた教育政策をという発想がより求められるのではないかと強く思いました。
そして、教育政策に関わらず独自のカリキュラムが展開できる私立小学校へ高い関心を寄せている多くの保護者がいることに、さらなるニーズの高まりを感じました。

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