「発見する体験」を中1から。探究する力を伸ばす上野学園のフィールドワーク
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上野学園中学校・高等学校(以下、上野学園)は中学1・2年生のうちから本格的な探究活動を実施しています。生徒が自ら決めたテーマに沿って調査・探究を進めるという内容で、名称は「上野公園フィールドワーク」。博物館や動物園が集まる学校周辺の環境を活かし、知的好奇心を刺激しながら進めます。今回は学校広報を担う有志の生徒で組織された「上野学園コンシェルジュ」の皆さんと先生からその授業内容を聞きました。
「上野公園フィールドワーク」とは? 進級後の探究、卒業後の進路に活きる
「上野公園フィールドワーク」は国立科学博物館をはじめ、上野動物園や上野公園などを訪問し、疑問に思うことを見つけるところから活動が始まります。中学1年生のテーマは理科に関すること、2年生では社会に関することという枠の中で、テーマを決め、疑問解決に挑みます。
中学3年生ではそれまでの成果を発表することに重点を置いて、探究内容をまとめます。
高校進学後は「総合的な探究の時間」で生徒が10程度のゼミに分かれ、活動のテーマを希望進路に関係がある学問分野に設定。課題発見力や創造性を高めるだけでなく、生徒が「自分は何に興味があるのか」を見つめる機会にもなっているのです。
中学3年生までの集大成「中3卒業研究」のほか、高校3年生が後輩の探究活動に助言を与えるなど、生徒の調査・探究活動が学校全体の特色となっています。
「ペンギンの目の下はなんで黒い?」「不忍池の水質は?」発見から学ぶ生徒
「上野公園フィールドワーク」では生徒主体の活動が求められます。そこで、生徒さんの目線でどんなことをして、何を学んだのかを聞きました。
中学3年A組
W・Sさん(男子)
中学3年A組
S・Mさん(女子)
高校3年A組
H・Yさん(男子)
高校3年A組
M・Mさん(女子)
インターエデュ(以下、エデュ):「上野公園フィールドワーク」で印象的だったことを教えてください
S・Mさん:中学1年生の前半で「ケープペンギンの目の下が黒い理由」を調べました。上野動物園に行ったときに疑問に思ったのですが、インターネットにも本にも答えがありません。自分なりに「野球選手が目の下に黒い『アイブラック』を貼って、まぶしさを抑えている」ことと関連付けて結論を出しました。壁にぶち当たったときに、どう発想を広げるかを学べたと思います。
W・Sさん:2年生の遠足でも活動を行うのですが、神奈川県の鎌倉市で観光客の迷惑行為対策を調べたことが印象に残っています。市役所で取り組みについて聞き取り調査しました。とても緊張しましたが、外国の方に分かりやすく啓発する重要性について詳しく知ることができました。
M・Mさん:2年生で上野公園の不忍池について、周辺の住民や来訪者の意識をさまざまな視点から調査しました。管理者が禁じているのにもかかわらず、野良猫にエサをあげる人にもインタビューしましたね。いきなり人に話しかけるのは怖かったのですが、グループで動いていることもあり勇気が出せました。
H・Yさん:不忍池に関して、僕は自然環境の面から調査活動をしました。多様な動植物がいるうえに人間も環境に大きな影響を与えていることに気づいたことがきっかけです。活動の前提として水質の基準などをしっかり学ぶなど、自分に足りないことが何かを確認しつつ取り組みました。
エデュ:「上野公園フィールドワーク」の好きなところを教えてください
S・Mさん:とても自由に活動できるところです。タブレット端末を使ってプレゼンテーションの用意をするといった普段あまり経験がないことも体験できて楽しいです。
W・Sさん:プレゼンテーションを保護者、先生、専門家の方に見てもらって、褒められたり、改善点を指摘されたりするのがやる気につながりますね。「必ず発表を成功させてやる」という気持ちでいつも臨んでいます。
M・Mさん:調査の中で教科書では学べないこと、それまで思ってもみなかったことに触れることが楽しいです。
H・Yさん:調査・探究の中で教科のワクを超えて発想を広げていくので、色々な分野の知識や考え方が関わるところが面白いです。
エデュ:(M・Mさん、H・Yさんに)高校での探究活動についても教えてください
H・Yさん:将来の進路につながるテーマを設定するのですが、僕はシステムエンジニアを目指しているので「機械化の必要性」について研究しています。学校生活の中で紙を電子データに置き換える実験や企業インタビューに取り組んでいるところです。
M・Mさん:子どもを落ち着ける知育おもちゃの開発に取り組んでいます。衛生面やコストについてなど企業や専門家に助言を受けて進めています。将来はホスピタリティ系の仕事に就きたいと考えているので、このテーマにしました。
エデュ:これまで「上野公園フィールドワーク」、その後の探究活動を通じてどんな力が身に付きましたか
M・Mさん:コミュニケーション能力が上がりますし、人の話をメモするのもうまくなりました。
H・Yさん:たくさんありますが「疑問を見つける力」がこれから役に立つと思います。普通なら気づかないことに問題意識を持つ大切さが分かりました。開発関係の仕事に就きたいので、活かしていきたいです。
探究活動の中で「自分とは何か」を引き出す
上野学園では探究活動の指導が充実していますが、その狙いは何なのでしょうか。探究科主任の竹澤陽介先生にききました。
エデュ:探究活動を通して、生徒のどんなところを成長させたいと考えていますか
竹澤先生:「疑問を持ち、仮説を立て、調査・探究を進める」というサイクルを回す力を育てたいと考えています。生徒には発見する喜びを知り、自ら物事を探っていく姿勢を身に付けてもらいたいです。
エデュ:高校での探究活動について、どのようなところが進路指導につながりますか
竹澤先生:高校1年生の段階で、生徒が探究しようとするテーマが「生徒自身の興味から始まっているか」「将来の目標とつながっているか」をしっかり見ています。同時期に大学の授業体験を行い、卒業後の学びについて考えさせることも工夫の一つです。
エデュ:探究活動に関する上野学園の強みは何ですか
竹澤先生:やはり上野の環境ですね。博物館で常に本物に触れる体験ができるのは有利なポイントでしょう。また、人前で発表する機会も多くあります。過去に入試の面接で大泣きしてしまった生徒が、プレゼンテーションができるようになり、自分のことを「強くなったな」と言っていました。
エデュ:受験生にメッセージをお願いします
竹澤先生:今は勉強に一生懸命で「将来やりたいこと」が決まっていない方も多いでしょう。ですが、上野学園は「上野公園フィールドワーク」を通して、皆さんの小さな疑問から「自分が何に興味があるのか」に気づけるようお手伝いします。そこから将来の夢が広がるよう一緒に進路を探しましょう。上野学園で学び、「新しい自分」を見つけてほしいと思っています。
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