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inter-edu’s eye
今年、創立95年を迎えた潤徳女子高等学校(以下、潤徳女子)。進学、特進、美術の3コースを設け、日本社会で活躍できる女性を育成する伝統校です。グローバルな教養を身につけ生徒一人ひとりが主体的に考え発信する力を養う、潤徳女子独自のカリキュラム「ユニバーサルフォレスト」をご紹介します。
グローバル教養とは?
3コース共通の必修科目であり潤徳女子の特色のひとつ。価値観が多様化する現代では、さまざまな視点で状況を理解し相手を否定せずに問題を解決する力が求められます。グローバル教養はそんな力を養う新設カリキュラム。独自の授業で「異文化・異世代の人々と共に生き、問題を解決する力」を育みます。
中でもグローバル教養の柱のひとつ「ユニバーサルフォレスト」では主体性を重視しています。高齢者、虐待、貧困など国内の問題から始まり、子ども兵士や人身売買など国外の問題まで、テーマは幅広く扱います。まずは資料を読み解き知識を蓄え、そこからいくつかの事例を元に自分の考えをまとめ、グループで共有し発表します。自分がその立場ならどう考えどう行動するか、問題点は何か、話し合ってどんなことを感じたか。自分とは違う意見も受け止めながら、自分の意見を物怖じせず伝える経験を積み重ねることで、21世紀を生きる力が身につきます。
ユニバーサルフォレストで扱う問題は、身近でありながらも普段はなかなか考える機会のないものばかり。今回うかがった2年生の授業テーマは「デートDV」。生徒たちはどう対応して解決へと導くのでしょうか。
授業はまず知識の確認から始まります。デートDVとはどんなものか、以前学んだ知識をたぐりつつ知識をまとめます。DVについては知っていても、デートDVという言葉にはピンとこない生徒も多いよう。
映像資料を使って事例を紹介。彼氏に時間や服装などの自由を奪われ大きな声を出されるという内容は、生徒たちにも身近な例として届いたようす。
先生が作成した事例に基づき自分ならどう行動するかとその理由を考えます。久しぶりの休日だから体を休めたいと思ったのに彼氏が強引にデートに連れ出そうとし、口調もだんだん強くなってきたというシチュエーションです。じっくり考えているうちに少しずつ問題解決の糸口をつかんでいく生徒も。
グループで意見交換。机をなくしイスだけにしたことで、お互いの距離が縮まり意見も出やすい環境に。事例のカップルになりきって会話を続けたりカップルの関係を熱く分析したり、身近な事例だったこともあって話し合いは盛り上がりました。
グループで事例の問題点まで話し合ったら全体での発表へ。話し合った内容と意見を決められた型に埋め込んで発表するため、意見を上手に伝える練習にもなります。
最後は感想を書いて提出します。「自分だったら断れないだろうな」と自分に置き換えて考えたり「友達に相談」と自分なりの解決策を導き出したり、問題解決に向けて主体的に考える姿勢が見られました。
入学したばかりの1年生は、話し合いだけでなくアクティビティのような授業も。
校内にある相談室、なじみのなかった場所を見学し話を聞いた生徒たちが発見したのは細かい配慮と思いやりでした。1枚の写真から感じたことをシェアした生徒たちが発見したのは、自分とはまったく違う見方をする人がいるということ。授業を通して身近に存在する多くの新しい視点に気づき、視野が広がりました。
ユニバーサルフォレストについて、発案者でもある福祉科の西村先生にお話をうかがいました。
──ユニバーサルフォレストを学ぶ意義はどんなことだと思いますか
高校生は決まった環境のなか、目の前の生活をこなすので精一杯です。ユニバーサルフォレストで社会に目を向け、友達や家族と真面目に語り合うことが大きな意義だと思っています。グローバルと聞くと英語を想像する人が多いのですが、ユニバーサルフォレストでは日本語を大事にしています。英語の4技能ももちろん大事ですが、まずは母国語です。言いたいことを相手に伝え、しっかり聞き取ることが必要なのではないかと思っています。
一人一台配布されている最新のSurface GOを使って課題に取り組むことも。
──授業を通して生徒に変化はありましたか
生徒からは「今まで聞いたことあるだけだった言葉を意識して追うようになった」と言われました。表面的な報道に対してもバックグラウンドを考えるなど、社会に対する意識が変わりつつあるようです。ほかには視覚障がいをテーマに扱ったあと、白杖を持っている方に声をかけるようになったという生徒もいました。授業が日常の行動に結びつくのは、素直で柔軟な高校生ならではですよね。
──生徒にとってユニバーサルフォレストは社会のどんな場面で役立つと思いますか
多様な価値観に触れながら自分の意見を繰り返し発信することで、自信につながると思います。知識を忘れることはあっても、コミュニケーションの姿勢は忘れません。社会で物怖じせずに自分の思いを言葉にして伝え、相手の言葉もきちんと受け止められることは、これからの世界を生きる力になるはずです。
編集者から見たポイント
「女性として日本で活躍するための芯を作る」と西村先生は繰り返し語ります。机をなくしたりクラスをまたいで意見交換をしたりと、授業を担当する西村先生の考え自体が壁のないユニバーサルなものでした。
この夏には潤徳女子の雰囲気を感じられるイベントも控えています。ぜひお子さまと足を運んでみてはいかがでしょうか。
企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:潤徳女子高等学校