自然の中での貴重な学び 駒込中高の林間学校

自然の中での貴重な学び 駒込中高の林間学校

inter-edu’s eye

仏教的情操教育で“智徳体”を育んでいる駒込中学校高等学校(以下、駒込中高)には、学校を代表する行事として、人間教育と食育を兼ね備えた宿泊研修があります。生徒は非日常的な環境に身を置き、食べることのありがたみを体感し、利他(他者のために役立つ自分)の心を持つ人間へ成長していきます。これまでインターエデュ(以下、エデュ)では、仏教修行生活を体験する日光山研修(中学2年次)と比叡山研修(高校1年次)で、それぞれ現地取材を行ってきました。そして今回、中1生の林間学校を取材するべく、2名のエデュスタッフが長野県・菅平へ向かいました。生徒は初めての宿泊研修で何を体験し、どんな表情を見せてくれたのでしょうか。

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食育の第一歩 駒込中高の林間学校

2泊3日で菅平高原へ

7月に行われる林間学校は、中学生にとって初めての宿泊行事です。1日目は富岡製糸場を見学し、午後は宿泊先でネイチャークラフト体験を。2日目は5~7人の班に分かれて「日帰り農村体験『ほっとステイ』」と、飯盒炊さんでカレー作りに挑戦します。「ほっとステイ」では、班ごとに現地の農家を訪ね、農家の方と一緒に作業します。最終日は自然観察「ネイチャートレイル」で菅平牧場の大明神沢コースを約2時間歩きます。

林間学校のねらい

林間学校について語ってくださるのは、比叡山研修や日光山研修も引率されている教頭の本田靖先生です。

農村体験での生徒の話に耳を傾ける本田先生
農村体験での生徒の話に耳を傾ける本田先生

インターエデュ(以下、エデュ):林間学校のねらいは何でしょうか。

本田先生:失敗を含めて中1生にさまざまな体験をしてもらうことです。大自然の中で行うカレー作りでは、火おこしから始めます。自ら作ることで、普段何気なく口にしている料理がどれだけ手のかかるものなのか、生徒は知るでしょう。料理だけでなく、米1粒作るためにたくさんの人や労働が関わっているわけで、ものを育てることや作ることがどれほど大変なことか。「食べ物を大切にしよう」と言葉にするだけでは伝わりにくいことでも、体験すると理解を深められます。

エデュ:比叡山や日光山の研修でも、食育は大きなテーマになっていますね。

本田先生:いただきます、は「あなたの命をいただきます」ということ。そして「1日3度の食事」は決して当たり前のことではなく、感謝すべきこと。それが駒込の食育です。このことを日々の給食時だけでなく、行事でも取り上げて忘れないようにすると、生徒が親になったとき子どもに伝えることができるのです。

中学2年次日光山研修にて
中学2年次日光山研修にて
洗鉢(せんぱつ)
日光山・比叡山研修では食事後、洗鉢(せんぱつ)を行う

エデュ:農村体験では、生徒がものを育てる作業の一端に触れますね。

本田先生:農家での作業はすべてが大変で、体験時に雨が降れば、雨の中で作業する苦労が分かるでしょう。そうした体験が今すぐ何かの成果に結びつかなくてもよいのです。いろいろな体験をして、いつの日か「駒込でのあの経験が、今の僕や私に影響を与えている原点だ」と思ってもらえたら、狙い通りです。
また、なじみのない環境で世代の違う方と話をしながら作業する中で、自分たちができることに気づいたり、現場で必要なマナーについて考えてほしいのです。

エデュ:生徒にとっての“原体験作り”もねらいの1つなのですね。人間教育の面についてはいかがでしょうか。

本田先生:2泊3日も寝食をともにするからには、会話をしないと回っていきません。その間、声を掛け合い、各自ができることをするリーダーシップを身につけます。リーダーシップには周りの人を引っ張っていくというイメージがありますが、気づいたときに自分ができることをすることだって“リーダーシップがある”と言えますから。全員が「誰かが負担を抱えるのではなく、負担を分かち合ってみんなでやっていこう」と考えられるようになってほしいですね。

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初体験の嵐 林間学校レポート

2日目と3日目の活動をエデュスタッフ2名が密着取材。同行したのは、昨年の比叡山研修、一昨年の日光山研修に参加し、体を張って研修の厳しさを伝えてきた“チーム駒込中高”の2人。ここからは、2人の目線で林間学校のようすをお伝えしていきます。

約6時間の農村体験

朝9時から始まった農村体験のようすを探るため、向かった先はブドウ農家。ブドウ畑をのぞくと、瑞々しい緑色の果実や葉の隙間から生徒の姿を発見できました。農家の方から「大きいブドウにもっと栄養を与えるために、近くにある小さいブドウを取るんだよ」と間引きの説明を受け、ハサミ片手に作業に励む生徒たち。頭上を覆うブドウ棚に手を伸ばして茎をカットするため、見上げる姿勢をキープしなければなりません。生徒は「腕と首が痛い」と作業の感想を素直に口にします。農家の方は、「最初は遊び感覚で作業していたけれど、だんだん表情が変わっていきましたね」と生徒の変化を教えてくれました。また、「畑でカエルやトカゲを見つけるとすごく反応するんですよ。私たちには日常の風景なんですけど、珍しいんでしょうね」と楽しそうなようすも語ってくださいました。

間引き作業
農村体験

カレー作りは青空の下で

午後3時30分まで各農家に滞在した生徒らは、4時から屋外でのカレー作りに挑みます。「料理をしたことがない」と、危なっかしい手つきでザクザク野菜を切る生徒に、別の生徒が「こう切るといいよ」と切り方を教えてあげたりと、助け合いながら調理を進めます。そんな中、多くの班で苦戦していたのが火おこし。太い薪や細い薪をどう使い分けるか相談したり、「風を送ればいいんだ!」と試行錯誤の末、解決方法を見出したり。やがて、スパイシーな香りが辺りに漂い始め、次々とカレーが完成していきました。

カレー作り
火おこし

草の上に腰を下ろし、出来立てのカレーを頬張る生徒たち。さぞ楽しかろうおいしかろうとカレー作りの感想を聞いて回ると「うまくできた」といった意見のほかに、「玉ねぎを切ったら涙が止まらなくなった」「煙が目にしみて痛くてたまらない」「カレーなのに灰の味がする」と、食事に至るまでの苦労や失敗談も続々と出てきました。すべて体験なくしては、語れない素晴らしい感想!

カレー作り
火おこし

農村体験の感想も併せて聞いてみたところ、ジャガイモやシイタケ、トマトやキュウリ、リンゴなどを栽培する農家を訪れた各班が、さまざまな体験をしてきたことが分かりました。
「農家のおじいさんが元高校教師で、ジャガイモ掘りの後、地元の歴史について教えてくれた」
「トカゲや幼虫を調理していて、『食べてみる?』と言われたので食べてみたらおいしかった!」
「木のチップで道づくりをした。やったことがないし、大変だった」
「野菜の荷運びをした。ものすごく重かった」
「シソとショウガを食べさせてもらった。おいしかった」
「ずっと草むしりをしていた。疲れた」
「生まれて初めて野生の鹿を見た!」
「初めてジャガイモ掘りをした。虫が出てきて嫌だったけど、農家の方が掘ったイモでじゃがバターを作ってくれた」
「採れたてのキュウリとブルーベリーを食べさせてもらい、すごくおいしかった」

食前と食後に感謝の気持ちを唱えることは忘れません
食前と食後に感謝の気持ちを唱えることは忘れません

驚愕と疲労が織り交ざった体験談がぽんぽん飛び出し、聞いているこちらが驚かされたり笑わされたり。
不慣れな環境で汗水垂らして疲労困憊の中1生たち。それでも食事の前後に全員が手を合わせていた姿に、日々の食育の成果をはっきり見ることができました。

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林間学校のようすをダイジェスト動画でご覧ください。

エデュスタッフが抱いた違和感

2日目と3日目の活動ともに、現場には和気あいあいとした雰囲気が漂い続けていました。生徒はとても楽しそう。そんな生徒を見守る先生の穏やかな表情と優しい眼差し。
その中で、自分たちの胸に湧き上がる疑問がありました。
「これが駒込中高の宿泊行事なのか? 自分たちが体験してきた比叡山研修や日光山研修の雰囲気とは180度違うではないか!」
しかし、その後、ふと思いました。
「今、無邪気に笑っている中1生が、来年あの日光山研修を、3年後にあの比叡山研修を経験するのか」と。
これまで日光山や比叡山で目にした精悍な表情の生徒たちだって、入学した当時は今の中1生のようであり、林間学校での交流や体験を経て、きっとあそこまで成長したのだと。自分たちは駒込生の成長を、たまたま逆回しで見てきたことに気づいたのです。そう考えると、駒込生の成長ぶりに驚かされ、目の前にいる中1生の成長が楽しみになるのでした。

ネイチャートレイルでは普段なかなか体験できない虫や植物とふれあいも
ネイチャートレイルでは普段なかなか体験できない虫や植物とふれあいも

編集者から見たポイント

“失敗を含め、さまざまな体験をする”“食事のありがたみを知る”“一人ひとりができることをする”といった学校の狙いと、生徒の行動が見事に合致していた林間学校。生徒は、校内では成し得ない経験を2泊3日で存分に味わってきたようです。

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イベント日程

イベント名 日時
【人気のクラブが大集合】 クラブ体験会 午後:STEM入試 / 自己表現入試 体験会実施 2019年9月16日(月・祝)
10:00~12:00
13:30~15:30
【お仕事帰りでも大丈夫】 -駒込caféへようこそ- イブニング説明会 駒込中学校の先生たちとの座談会 2019年9月27日(金)
18:30~19:30
【毎年大好評!その2】 秋の給食試食会 2019年10月26日(土)
10:00~12:30
【在校生による学校説明会】 駒込中学校を生徒目線でご紹介!
英語スピーチも披露 国語と算数について入試ポイントもお伝えします
2019年11月16日(土)
14:00~15:30
【受験生体験型】 過去問体験&解説 午前:私立型 午後:適性検査型 ※午前・午後ともSTEM入試 / 自己表現入試 体験会実施 2019年12月15日(日)
10:00~12:00
14:00~16:00
【受験生体験型】 合格力UP入試トライアル ― これをやれば10点UP! ― 保護者の方には傾向と対策をお伝えします 2020年1月12日(日)
10:00~12:30
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