

inter-edu’s eye
子どもたちがグローバル社会に巣立っていくとき、求められるものは何でしょうか。文教大学付属中学校・高等学校(以下、文教)はその答えを追究し、新しい教育プログラムを打ち出してきました。2022年度に始まった「クリエイティブチャレンジ」もその一つ。中学1年生~高校2年生が現実社会の課題を見つめ、解決のためのプランを練り、実践する授業です。大規模な成果発表会「探究祭」を振り返りながら、伸びていく生徒の資質に迫ります。
「クリエイティブチャレンジ」とは、「世界標準の貢献力」を育てることを目的とした教育プログラム。身近な地域から広い世界までを視野に入れて、自分たちが貢献できることを考え、実行に移す授業です。毎週水曜日の6時限目は、生徒たちが議論を重ね、知見を深めようと校外へ歩み出していきます。

2023年2月18日には、その成果発表のために中学1年生~高校2年生が参加する「探究祭」が開催されました。300以上の生徒グループが、現実社会に貢献するために考案してきたこと、実際に取り組んだことをポスターセッションなどで伝えました。お互いの話を真剣に、しかも楽しそうに聞く生徒たち。文化祭並みの規模で、とても活気のあるイベントでした。

発表内容はとてもバラエティーに富んでいました。人が食べても害がない生分解性プラスチックを作成したグループなど、インパクト大の発表が続き、文教の生徒が実社会に対して意識を磨いていることがうかがえました。
ここからは、「クリエイティブチャレンジ」を推進してきた神戸航副校長にお話をうかがいます。

エデュ
「探究祭」での生徒たちの姿を見ていて、感じたことを教えてください。
神戸副校長
当日まで、しっかり人前で発表できる状態に仕上がっているか、運営はうまくいくか、そもそも発表内容は大丈夫かとさまざまな不安を抱えていましたが、結果は大成功でした。
生徒たちの課題の着眼点や、それを解決するための創造力あふれるアイデアに良い意味で非常に驚かされました。また、発表の様子も堂々としたもので、自身のタブレットPCや電子黒板、大きな模造紙などを用いて、一生懸命に分かりやすく説明してくれる姿が印象的でした。


今後このアイデアを実践し、より多くの場面に活かされることを願っています。来年度への期待が大きく膨らんだイベントとなりました。

エデュ
クリエイティブチャレンジを始めた経緯を教えてください。
神戸副校長
社会が求める人材像の変化につれて、大学入試改革も進み、本校としても教育の在り方を見直すタイミングを迎えたことがきっかけです。10名程度の教員で新構想プロジェクトチームを立ち上げ、新しい教育コンテンツを模索するなかで、クリエイティブチャレンジが発案されました。建学の精神である「人間愛」つまり「他者をわが身と思う心」に基づいて、自分の隣から世界までを視野に入れて、人のためにできることを探ってほしい。そうした姿勢を生徒が身につけて、これからの時代で活躍するベースを築けるようにしたいです。

エデュ
クリエイティブチャレンジの授業はどのように行われていますか。
神戸副校長
中学3年生から高校2年生は合同で実施し、異なる学年の生徒がグループを組んで活動しています。興味・関心が近い生徒同士で集まるので、壁を感じることもないようです。教員側は、答えのない問いに対して生徒が積極的に向き合えるようファシリテートしています。
中学1・2年生には調査・研究の方法から丁寧に教えていきます。全員参加の校外学習も行っており、神奈川県鎌倉市での地元産業について知るフィールドワークなどを通して、身の回りから少し離れた地域へと目を向けていき、自分が何について追究したいのか、貢献したいのかを考える機会を設けています。

エデュ
生徒の活動内容を教えてください。
神戸副校長
例えば、生徒の発案で、生物多様性の重要性を知ってもらうためのビオトープ設置に向けたプロジェクトが進行中です。事業者側と話し合いを進めるなかで、ビオトープは屋上に作ることが多いと知ったとき、「たくさんの生徒に見てもらうためにもっと開放的な場所がいい」と言っていたことがありました。多くの人に貢献したいという意欲が見えましたね。
ほかにも、放課後の間食について検討したグループがあります。学習支援システムを利用して、夕方まで学校に残っている生徒のために何かしたい。その目的で、近隣のおにぎり店に訪問販売を依頼していました。お店からビジネスを成立させるための条件を聞くなかで、現実社会で思いを形にする困難さに直面したようです。でも、それは他教科の授業では得られない体験だったと思います。

エデュ
生徒に変化を感じることはありますか。
神戸副校長
授業以外でも、生徒発のSDGsにつながる取り組みが見られるようになりました。
文教では、使い終わったチョークの長さを生徒が計測します。その理由は、最後まで使いきって、それから粉砕して新しいチョークにリサイクルするからなんです。さまざまな色が混じり合った独特の色合いを、生徒たちは「ギャラクシー」と呼んでいます。ラメに似たキラキラした質感から宇宙を連想して、そう名付けたようです。
「SDGs同好会」も活躍中です。文化祭でSDGsについて映像で啓発する運動を行っていたのですが、そのさいにドライフラワーのブーケを配布していました。それは、生花店で売れ残って廃棄されてしまう花を譲り受けて加工したものです。

エデュ
クリエイティブチャレンジを通して、伸ばしたい力は何ですか。
神戸副校長
世界を俯瞰する視点を持ち、国際社会のために発揮する「世界標準の貢献力」です。その力を構成する資質として、発見力・思考力・行動力・探究力・表現力を生徒主体の活動を通して育てていきたいです。
エデュ
受験生にメッセージをお願いします。
神戸副校長
クリエイティブチャレンジでは、失敗することも悩むこともあるでしょう。ですが、文教の生徒は他者を思いやる心があり、とても穏やかな環境で活動することができます。皆さんの発想を広げ、やりたいことができるようにサポートしていくので、楽しみにしていてください!


編集後記
学校は生徒たちにとって、一番身近な社会。まずは手の届くところからSDGsを達成しようとする生徒の動きを知って、文教は生徒の視野を広げ、意識を高めていく学校なのだと改めて気づきました。将来社会で活躍する力が身につく学校をお探しの方にぜひチェックしていただきたいです。