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inter-edu’s eye
日本有数のターミナル駅「渋谷」から徒歩圏の立地にありながら、閑静な文教地区の中心に位置する実践女子学園中学校高等学校(以下、実践女子)。従来のグローバル教育を土台として、これからの社会を生きる力を培うための新たな学びである「未来デザイン」がスタートしました。創立122年の伝統と新時代の探究教育が融合して生まれた学びの成果を、先生・生徒それぞれの視点からご紹介します。
中1から4年間をかけて取り組む未来デザイン。「社会・経済」「国際・異文化理解」「環境」の3つの分野から、現代社会のさまざまな問題について当事者意識を持って解決に当たる、教科教育の枠を超えた授業が展開されています。中でも、科学的な見地から「環境」分野を深く掘り下げていく学習について、理科教諭の鴇田篤先生からお話しいただきました。
未来デザインの授業を通して身につけてほしい力や、最終的な目標を教えてください。
鴇田先生
本校は、多様な文化背景を持った生徒たちが集まり、ともに生活をしながら学んでいく場となっています。社会の縮図とも言える学校で受ける授業から教養や人間性、倫理観といった非言語要素を培い、どんな行動が正しい道に導いてくれるのか、何が真実なのかを見極められる力を身につけてほしいと考えています。
クリティカル・シンキングと呼ばれるこのスキルを習得するための小さな一歩として、未来デザインがスタートしました。各分野から本物を体験する学びを通して、より良い社会を目指すための実践力を鍛えていき、最終的には、生徒たちが過ごす家庭や学校などの社会的環境を超えた視点に立って、主体的な行動を起こせる女性になってほしいと願っています。
先生が担当されている「環境」分野での授業の進め方を教えてください。
鴇田先生
1学年あたり6クラスの生徒全員が2クラスずつ3分野に分かれ、各分野に取り組んでいますが、「環境」では科学的な見地から、知的好奇心による問題発見とその解決策を繰り返していきます。カリキュラムの作成時に担当教科の異なる先生方とアイデアを出し合い、今年度は水生生物と水質浄化の関連性を観察する授業を取り入れました。複数の水槽を自然環境に見立て、その中で淡水しじみやヤマトヌマエビなどを飼育しながら、各々の共生が環境のバランスを保つことに必要不可欠だという結論に至りました。
このような実体験から導く学びが、今では海洋プラスティックごみ問題にまで発展しています。校内の学習活動であっても、国際的な問題に結びつけて考えることができるんですよ。
未来デザインに取り組んだ生徒たちの成長や変化の様子を教えてください。
鴇田先生
以前と比べると、明らかに授業へ参加する姿勢が積極的になってきました。また、調べた結果や自分自身の考えをみんなの前で発表することのハードルが下がってきたと思われます。意見を交換し合う機会にこそ、学びの価値があると考えている私にとって、うれしい結果となりました。さらに驚いたのは、生徒たちが他者の意見を取り入れながら異なる価値観を理解するようになったことです。
テストの点数が問われる授業形式ではないので、安心して発言できる場を作ることができ、自由な発言をして良いこと、すぐに相手を否定しないことを実践できたのだと思います。授業に臨む際の姿勢や行動力そのものを評価してあげたいですね。
未来デザインの展望を教えてください。
鴇田先生
一般教科にも役立つ学びをたくさん取り入れていく予定です。例えば、理科では保健体育と関連させて互いの領域が重なる体の作りや血液循環について学ぶ時期を合わせ、保健体育で行われているCPR(心肺蘇生)についてより強く意識づけできるよう考えています。また、未来デザインの「社会・経済」分野では動物を育てることやヴィーガンの思想に意識を向けた授業も行われています。これも「環境」につながるテーマなので連携できればと、「社会・経済」チームの教員と情報交換をしていきます。
このように、本校の強みであるグローバル教育とのつながりも活かしつつ、未来デザインをさらに発展させていきます。生徒たちが見せてくれる今後の成長にご期待ください。
「環境」の授業で使用する水槽の準備段階から活動している中3生のお二人に、未来デザインで学んだ成果や、実践女子の魅力についてお話しいただきました。
水槽の準備や観察から学んだことを教えてください。
A.Iさん
自宅では7羽のインコを飼っているのですが、アクアリウムを試したことがないので、すぐにでも参加したいと思っていました。水槽内のレイアウトを考える時点で、水草の成長や生きものが住みやすい環境を想像しながら楽しく取り組みました。今まで体験したことのない水槽作りに、みんなが一緒になって考えを出し合う過程が印象に残っています。
S.Nさん
人間も身近な生物と共存することが大切だと学んでいたので、生物から見た生態系を観察できると思って参加しました。汚れた二つの水槽の片方にエビや貝類を入れて観察を続けると、驚くほどに水質が綺麗になっていくのが分かりました。自然環境も同じように、普段は気に留めていなかった小さな生物がバランスを取ってくれていることを理解できました。
さまざまな授業から学んだことを教えてください。
A.Iさん
たった1つの物事でも見る人の立場が変われば、見方そのものや考えた結果が異なることを知りました。それに気づいてからは、他者の意見に耳を傾けたり、取り入れてみることが面白く感じられるようになってきました。
マインドマップを作ってみる授業があったのですが、私と友だちの書き方が違いすぎて衝撃を受けたことも覚えています。授業で経験してきた一つひとつが、今まで思い込んでいた自分の殻を破るきっかけにもなりました。
S.Nさん
調べた結果をパワーポイントで発表するために、パソコンの使い方を初歩から覚えることができました。一方的に意見を伝えるだけでなく、きちんと理解してもらうための資料作りも工夫できるようになったんですよ。
「環境」の授業では海洋プラスティックごみ問題を知り、気軽にプラスティック製品を使ってきた今までの生活を反省し、なるべくごみを減らそうというように、家庭での生活でも意識が変わってきました。勉強したことが社会に還元できていると実感しています。
中学受験を経験してきた先輩として、受験生への応援メッセージをお願いします。
A.Iさん
今は勉強に追われる毎日を過ごしていても、中学生になったら待っている楽しい毎日を想像して頑張ってほしいです。そうすれば、入学したときには達成感があると思います。1日の勉強時間を決めて、息抜きもしながら受験勉強の時間を前向きに捉えると良いですよ。あなたと周りの受験生を比べる必要はないので、入りたいと思っている学校をあきらめずに目指してください。
S.Nさん
実践女子では未来デザインをはじめ、他校では学べない授業がたくさん受けられます。たった1回の授業が、これからの将来に活かせる大きな力になることもあります。もしも志望校が決まっていないのならば、勉強してみたい授業内容で学校を選んでみてください。いったん目標が決まれば、残った期間を頑張るだけです。一直線に走り出すことができるようになります。
編集者から見たポイント
生徒たちと同じ視線で授業を進めてきた鴇田先生からは、「渋谷とは思えないほど多くの緑に恵まれた広大なキャンパスで、本物の自然に触れながらともに学んでいきましょう」とメッセージをお預かりました。現地に足を運んで体感してみてこそ、実践女子の魅力や居心地の良さが分かります。地域に根差す伝統女子校が始めた未来デザインに加えて、一般教科での取り組みやたくさんのクラブ活動など、さまざまな面から受験校として検討するのはいかがでしょうか。
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