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新しい学習スペース完成!教室でも寮でもない第三の居場所

inter-edu’s eye

東京とは思えない自然豊かなキャンパスで寮生活を送る自由学園中等科・高等科(以下、自由学園)。このたび、男子部キャンパスに入って正面に見える建物を大改修し、歴史を象徴する外観はそのままに、内部に学習スペース「ラーニングコモンズ」を開設しました。なんと設計には生徒のアイデアも反映されているとか! さっそく覗いてみましょう。

木のぬくもり、カフェのひととき リラックスできるラーニングコモンズ

ラーニングコモンズが開設されたのは、自由学園のキャンパスに入ると最初に皆さんと出会うこちらの建物。歴史ある外観はそのままに内部は「生活の全てが学び」となる寮生活を体現するかのように、リラックスしながら学習にも集中できる空間となっていました。

キャンパス

Photo gallery

施設紹介
高い天井に広いスペース。
太陽光がしっかり入る明るい空間です
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カフェスペースの椅子。
選び抜かれたフィット感のある革張りで、落ち着く座り心地
施設紹介
階段はここで座ってくつろいでもOK!
段差の側面に開いている穴はエアコンの送風口
施設紹介
荷物はロッカーへ。
こちらの木材は自由学園の植林地からやって来ました
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奥は教室になっています。
手前にはカフェスペース
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「なんで教室は四角いのか」 素朴な疑問から建築の世界へ一歩

こちらの設計は生徒のアイデア・要望を受けて進められたとのこと。中心メンバーの一人にお話をうかがいました。

橘 隼人先生
一柳海人(いちやなぎ かいと)くん

ラーニングコモンズ設計に携わったきっかけを教えてください。

一柳くん

自由学園には、自分の興味があるテーマを掘り下げていき、学んだ成果を発表する学業報告会というイベントがあるのですが、そこで「理想の学び空間を考える」ことにチャレンジしたことです。

なぜそのテーマを選んだのですか。

一柳くん

小学生のときに「なんで教室は四角いのか」「前を向いて座るものなのか」ということが疑問でした。そこで、もっと自由に教室を作る方法を探りました。中学3年生になってから校舎改修の話が出て、同じグループで活動していた生徒みんなでラーニングコモンズの設計について考えることになりました。

キャンパスの模型

設計に関するアイデアを出すために取り組んだことを教えてください。

一柳くん

北陸地方まで足を運び、これまでとは違ったコンセプトで設計された学校を見学しました。そうして新しいものを知る一方で、自由学園の過去についても調べました。ラーニングコモンズが開設されたのは旧男子体操館。過去には礼拝や学内の選挙での投票所などに使われてきた自由学園を象徴する施設の一つです。設計者の意志を汲みながら改修しなくてはならないという思いが生まれました。

ラーニングコモンズをどのように利用してほしいですか。

一柳くん

オープンスペースで人と人のつながりが生まれればすごくうれしいです。オンライン学習の経験を通して、やはり対面でしか得られないものがあるということに気づきました。言葉以上のことを伝え合う場所になってほしいですね。

ラーニングコモンズの設計に携わって、ご自身に変化を感じたことはありますか。

一柳くん

自由学園ではいろんなことに挑戦してきましたが、建築の世界に触れたことが僕にとっては一番大きな影響がありました。建築の模型づくり、設計イメージのCG制作など、幅広いことを体験し、現在は建築士になることを目指して勉強しています。中学受験生の皆さんも自由学園での経験が、それぞれの新しい世界に踏み出すきっかけになると思います。

ラーニングコモンズのようす

お互いの存在を感じる「ゆるやかな共同性」とは? ラーニングコモンズのメリット

ラーニングコモンズでどのような学びが可能となるのか。先生からもうかがいましょう。

橘 隼人先生
橘 隼人 (たちばな はやと)先生

ラーニングコモンズの長所を教えてください。

橘先生

一人で学習に集中できる空間があり、同時に共同で学び合える空間も存在しているところです。

個と集団が、広い空間に共に存在しているという「ゆるやかな共同性」を持っているのが特徴であり、居心地の良さにもつながります。

生徒たち

利用した生徒からの反響はいかがですか。

橘先生

カフェゾーンが使いやすいらしく、用意してあるコーヒーや持ち込んだスープを飲んでリラックスしながら過ごせているようです。寮とも教室ともまた違う「第三の居場所ができた」と感じています。

カフェゾーン

ラーニングコモンズに生徒が関わった理由を教えてください。

橘先生

自由学園は「自分の学校を自分たちで作る」という自治を通して、社会を構成する市民を育てることを目標としています。そうした教育姿勢が校舎改修にも表れたというわけです。もともと学習机を自分で製作する場面などもありますし、ラーニングコモンズにも生徒の思いを反映するのは自由学園にとっては特に変わったことではありません。

ラーニングコモンズのようす
ロッカーの製作は生徒と先生の共同作業

ラーニングコモンズ新設にどのくらいの生徒が関わりましたか。

橘先生

一柳くんと同じく校舎改修の話が出る前に学習環境をテーマに探究活動をしていたメンバーが30名ほど。そこからさらに増えて、のべ50名程度が何らかの形で参加しています。ほかにも教職員や部活帰りに一部の塗装を手伝ってくれた生徒なども加えていくと、かなりの大人数になるでしょう。

ラーニングコモンズ新設に関わった生徒
ラーニングコモンズ新設に関わった生徒
埼玉県飯能市にある自由学園の植林地で木を切り倒す作業から参加した生徒も
ラーニングコモンズ新設に関わった生徒
ロッカーには製作に関わったメンバーの名が刻まれています

ラーニングコモンズ設計に参加した生徒たちはどのような成長を遂げましたか。

橘先生

最初から建築について語れる生徒はそういません。でも、自由学園は学年が異なる生徒が集まって意見を交わしたり、お互いの知識を共有したりすることを探究活動の中に組み込んでいます。一柳くんも先輩から、CG制作について教わって勉強になったようです。学校外でも建築士の集会や理工系の大学生との交流も通して、知見を深めていました。一つのことを考え続ける持続力には、見守ってきた立場でありながら驚かされます。

生徒たちの交流のようす

自由学園に入学したら、どんな学びが待っていますか。受験生にお伝えください。

橘先生

「先生が生徒に指導する」のではなく、「ともに学ぶ」という姿をイメージしてもらいたいです。自分自身で考え、その結果を僕たち教員や仲間に伝え、その受け手からの反響をもとにまた考える――そうしてどんどん学びを深めていきましょう。一緒に学校外に飛び出して専門家に会いに行ったりして、世界を広げるのも全力でサポートします。

編集後記

寮生活が送れる自由学園にとって、ラーニングコモンズ開設はただ「学習環境がさらに良くなった」ということにとどまらず、「生活環境も良くなった」ということ。6年間の充実度が増すに違いありません。受験生の皆さんにはぜひその快適さを体感していただきたいです。

イベント日程

自由学園中等科・高等科は2024年度 共学化へ(東京都認可申請中)

キャンパス敷地内

企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:自由学園中等科・高等科