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工学博士早大生OB対談 日本学園の遺伝子を受け継ぐ者たち

inter-edu’s eye

2019年秋、工学博士で日本学園中学校・高等学校(以下、日本学園)OBの甘利俊一さんが文化勲章を受章しました。文化勲章とは科学技術や芸術文化の発展・向上にめざましい功績を挙げた人に贈られる勲章です。この栄えある受章を記念して、インターエデュが卒業生による対談を企画しました。工学博士と早稲田大学1年生が日本学園で得たこと、そしてこれからの教育について世代を超えて語り合います。

日本学園

日本学園

1885年創立。私学の中でも指折りの長い歴史を持つ男子校で、校祖・杉浦重剛の「人は得意な道で成長すればよい」という教えが代々受け継がれています。生徒は、「自分新聞制作」「ライフプラン作り」「研究論文制作」などを合わせたオリジナルプログラム「創発学」を通して将来について考えながら、創造力と発信力を養っています。

工学博士早大生OB対談

昭和26年、日本学園中学校卒業。都立戸山高校から東京大学工学部へ進学。同大学院で数理工学を専攻し、数理工学専門の研究者となる。AI研究にも活用されている情報幾何学の創始者。昨年、ノーベル化学賞受賞者の吉野彰さんらとともに文化勲章を受章。現在は東大名誉教授、理化学研究所の栄誉研究員。

中高6年間を日本学園で過ごし、令和2年卒業。中2から高2まで表象文化研究部の部長を務める。高1のとき、文化研究のために1人でパリに2週間滞在し、ルーブル美術館など芸術施設を巡った。部活動で美術史に興味を持ち、学校のプログラムを通して学芸員を志すようになる。今年4月、早稲田大学文学部に入学。

日本学園での日々

お二人は日本学園にどんな思い出がありますか

甘利先生
甘利先生

中学校の担任が大学を卒業したばかりの若い先生で、とても張り切って生徒の面倒を見てくれました。「休日にやることがないなら学校においで」と呼びかけて、集まった私たち10数名と学校のグラウンドで野球をし、そのあと勉強を教えてくれたのです。先生は大学で数学を専攻していて「君たちは、やればもっとできる! だから高校の数学をやろう」と、ワンランク上の数学を毎週教わることに。先生のおかげで数学の面白さに引き込まれていきました。

大岩さん
大岩さん

僕は国語と社会が好きで、数学はものすごく苦手でした。それが、高校から数学の講習を受け始めて、友達と問題を出し合って学んでいたら、ある日突然面白さに目覚めたんです。

甘利先生
甘利先生
甘利先生

数学は面白いですよ! 大岩さんはきっと、高校時代に数学の勉強が義務から楽しいものに変化したのでしょう。年号や公式を覚えろというお仕着せの学びでは、勉強を好きになるわけがありませんから。

大岩さん
大岩さん

僕もそう思います。日本学園の先生方は勉強で覚えるべきことがあると、その理由や導く過程からしっかり教えてくれました。ですから、どの科目の授業も楽しかったし、理解を深めることができましたね。

甘利先生と大岩さん

クラブ活動の思い出はありますか

甘利先生
甘利先生

私は理科班で、当時は鉱石ラジオを作りましたよ。日本学園卒業後、高校で数学班に所属して、本格的に数学の道を志すようになりました。

大岩さん
大岩さん

表象文化研究部で部長を務めていたので、都内の美術館をしらみつぶしに回って芸術に触れ、高校生のときはルーブル美術館にも行きました。日本学園には創発学の一つに「研究論文発表」があり、中3生が15年後に就きたい職業を考えて、その道のプロに取材して論文にまとめる取り組みがあります。僕は部活動を通して学芸員に興味をもったので、美術館に取材に行きました。すると、学芸員の方は芸術や文化を研究する仕事をとても楽しんでいたので、学術の世界にますます憧れました。

研究論文発表会
「研究論文発表会」で、完成した論文を発表する中3生の大岩さん。会場の講堂には、中学校全生徒と先生、保護者らが集まります。
甘利先生
甘利先生

研究を楽しむ気持ちは、とてもよく分かります。

大岩さん
大岩さん

以来、ずっと変わることなく学芸員になりたいと思っていて、大学で美術史を学ぶことにしました。僕にとって研究論文発表は、人生を決めたターニングポイントだったと思っています。

これからの社会に求められる教育

AI研究の先駆者である甘利先生は、AI技術が進む社会で必要なことは何だと思われますか

甘利先生
甘利先生

いま最先端の技術は、情報技術と生命技術です。AIによる情報技術は暮らしを便利にする一方で、AIが人間の知的な機能に迫り、遂には人間の心にまで迫るかもしれない。生命技術は人々の希望になるかもしれないけれど、遺伝子改変で人間の種を変えてしまうかもしれない。つまり、どちらも人間を操りかねない恐ろしい危険をはらんでいます。このため、社会での利用法や悪用を防ぐ方法を科学者だけではなく全員が考えていかなければなりません。

そのような社会で子どもに必要な教育とは

甘利先生
甘利先生

世の中、つらいことはたくさんあります。だからこそ子どもが自分に自信を持ち、やりたいことを見つけて将来への希望を抱き、知識を増やしながら考え方を鍛えていくための教育が必要です。人間は一人ひとりが可能性を秘めています。社会には点数制度や入試がありますが、そうした壁があっても子どもの可能性を活かし、学びの楽しさに触れさせることが教育の大きな課題でしょう。

大岩さん
大岩さん

日本学園は、生徒がやりたいことを見つけられる仕組みがありますし、生徒の好きなことを思い切りさせてくれる学校でした。校舎には違う学年の教室が同じフロアにあって、先輩・後輩の距離が近いところが特によかったです。僕は教室の前の廊下にあるベンチで1つ上の学年の先輩と知り合い、いまも連絡を取り合うほどの仲になっています。

甘利先生のサイン
対談後、持参した甘利先生の著書に直筆のサインをいただく大岩さん。
対談は終始和やかな雰囲気で進みました。
甘利先生
甘利先生

よい環境ですね。私は日本学園の図書室で大衆文学を読み漁りました。黒岩涙香の翻訳本は表現が豊かで、「人に楽しんで話を聞いてもらうにはこういう表現をすればいいのか」と勉強になりました。このときの知識は、いまも人前で話をするときや文筆作業で活かされています。
今回、こうして大岩さんとお話しをして、若い方がやりたいことをみつけて楽しみながら立派に育っていることが分かりました。「最近の若者は駄目だ」なんて言う方がいますが、そんなことはありませんね。

編集者から見たポイント

日本学園には、中1生から高3生まで学年の垣根を超えて受講できる自由参加の現代文講習があり、大岩さんは6年間休まずに参加していたそうです。対談を終えて、同席していた日本学園理事の小泉さんが「学びたい人が集まり、高校の範囲を交えた学びを中学生が受ける。この講習が、甘利先生が中学時代に高校の数学を学んでいたこととそっくりなことに驚きました」と語り、甘利先生は「学びの形が受け継がれるのは私学の魅力ですね」と微笑まれていました。日本学園の学びが世界で活躍する人材を育成し、その学びは脈々と受け継がれていることがうかがえた対談となりました。

2020年イベント日程

中学校イベント

未定

入試説明会 第1回※日程が決まり次第更新します。

2020年7月17日(金) 10:00-

入試説明会 第2回

2020年9月9日(水) 10:00-

入試説明会 第3回

未定

体育祭※日程が決まり次第更新します。

2020年6月21日(月)

オープンキャンパス 第1回要予約※コロナウイルスの影響で変更になる場合があります。

2020年10月24日(土)

オープンキャンパス 第2回要予約

2020年9月26、27日(土・日) 10:00-

日学祭(学園祭、中高合同)

高等学校イベント

2020年7月23日(木) 14:00-

高校入試説明会 第1回

2020年7月23日(木)

部活動体験見学会 第1回要予約

2020年8月11日(火)

部活動体験見学会 第2回要予約

2020年8月22日(土)

部活動体験見学会 第3回要予約

企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:日本学園中学校・高等学校