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課題のクオリティの高さに先生もびっくり! 学習理解とSTEAM教育を深めるICT教育

inter-edu's eye

学校長自らが率先してICT教育を推進している聖徳学園中学・高等学校(以下、聖徳)。生徒一人ひとりが、iPadとApple Pencilを持って学習する聖徳のICT教育は、STEAM教育との親和性も高く、学習理解だけではなく生徒の創造力も高めています。また、コロナ禍でのオンライン授業でも、さらなる真価を発揮しているとのこと。今回は、生徒たちの学習意欲を高めているICT教育の秘密について、ICT教育を担当する品田健先生にお話をうかがいました。

生徒のクリエイティブ精神を育てるSTEAM教育

2017年度には、STEAM教育に特化した校舎を新設した聖徳。STEAM教育には、どのようにICT教育が活かされているのでしょうか。生徒がiPadを駆使して学ぶ様子を教えてもらいました。

品田 健 先生
学校改革本部長・ICT Excecutive Director
品田 健 先生

ICT教育について、品田先生が赴任された3年前と今を比べて、変化した点はありますか?

私が赴任した当時は、まだ全員が1人1台のiPadを持っていない学年もありました。その学年にはiPadを貸し出していました。そのため、作品作りは授業内で完結させなければならないし、放課後に作ろうと思っても全て貸し出されていたら作れないという制約があったのですが、今は自分のやりたい時間に制作ができることもあり、作品のクオリティが上がりました。

授業のようす1

iPadを使った授業はどのように行われているのでしょうか?生徒たちの学び方を教えてください。

かつてのパソコンでの授業は、先生が教えたものをその通りに作るというものでしたが、iPadのアプリの使い方は簡単なので、使い方を教えるのではなく、このアプリを使うとこういうのができるというのを見せるだけにしています。そうすると、友だち同士で教え合ったり、アプリの公式チュートリアル動画やYouTubeで使い方を見せている動画を調べたりして、生徒は自ら使い方を習得していくんですよ。だから、見本で見せたものよりも、より良いものが出来上がったり、私たちの想像を超えるものが生まれたりしています。

授業のようす2

iPadを使った作品作りで、生徒たちのクリエイティブな精神が刺激されているのですね。

例えば、絵を描いたり、音楽を作ったり、映像を撮ったりというのは、特別な人がやる事で、苦手な人はやってみたいけれど手を出し難いというのがありますよね。美術の授業で、よく観察して真面目に描いているけれど、どうしても上手く描けない子とか、芸術は自分に向いていないと思ってしまうと思うんです。でも、この前、絵の描き方として、iPadに写真を取り込んで、画像の透明度を変えて太い線だけをなぞれば絵になるという方法をちょっと紹介したら、元々絵が上手いとか下手とかに関わらず、みんな真剣に描き始めたんですよ。やはりみんな、何かしら表現したいのだなと実感しました。芸術は特別なものではなく、ツールを使うことによって、芸術のひとつの表現ができるようになるんです。ICT教育は、STEAM教育のA(アート)を引き出すこともでき、親和性が高いと感じましたね。

制作された動画

生徒たちが作った学習解説動画を拝見しました。この動画作りの授業の目標は、どこに設定しているのですか?

この授業では、合成動画を作るというのがひとつの目標で、背景を合成して、タイトルを入れて、みんなに紹介できる動画を作るところまでを求めています。昨年は単純にKeynoteで制作したので静止画を使ったものでしたが、今年はさらにアニメーションも付けられることを説明したら、かなりの生徒がアニメーションにチャレンジしました。黒板調の背景を使い、Apple Pencilのクレヨンで描くと、本物っぽく見えるので、そうした工夫をする生徒もいました。黒板の色も黒ではなく深緑にしたり、チョークの色も白色に少し青色を入れると本物に近いなど、そういうヒントをお互いに教え合うんです。私たちにはそうしたノウハウはありますが、あえて生徒がどう工夫するのかを見ています。それがけっこう面白く、いろいろなものが創造されるきっかけにもなっています。

授業の理解度を深めたコロナ禍のオンライン授業

聖徳のICTを使った授業では、生徒たちが率先して話し合いや協力をしているのが分かります。しかし、そうしたことが難しいコロナ禍では、どのような教育がなされていたのでしょうか。

iPadを使っているようす

生徒たちがディスカッションで理解を深めていたICT教育ですが、コロナ禍ではいかがでしたか?

実は、4月と8月に生徒にアンケートをとったところ、一人でじっくり考えることも大切ということも分かったんです。
4月の時点では、iPadを使うと教え合いやディスカッションといった交流がはかどることへの評価が高かったのですが、コロナ禍になり、一人で取り組むことが多くなってからの8月のアンケートでは、「先生にすぐ聞かないで、自分でアイデアを出すことができた」「自分の考えを深めることができたので発表したいと思う」という回答が多く出てきたんですよ。ですので、本当はもっと自分の考えを深めたいのだと感じました。ディスカッションも大事だけど、実はその前が大切で、自分できちんと調べてオリジナリティのあるアイデアを出したい。そして、自分が気づいたことを相手に伝わるように表現したいと思っているということが、明らかになったんです。私たちも教えてしまいがちなので、すぐに解説、すぐにグループワークではなく、まずは一人でしっかり考えさせるプログラムにしていく方が良いと改めて感じました。

オンライン会議のようす
先生方はオンラインで会議を進めながら学びの確保に努めたといいます。

オンライン授業の成果ですね。オンライン授業をするにあたり、心がけたことはありますか?

4月、5月にオンライン授業をするにあたっては、ガイドラインを作りました。授業の動画の時間が長いと生徒が辛くなるので、課題に取り組む時間も設けて、ある程度したらまた先生が解説するというものです。中でも、YouTube上に限定公開で配信していた動画は、再生回数が分かるのが良かったです。普通、再生回数が少ない動画は人気がないものとされますが、授業動画に関しては、復習として何回も再生されていると考えると、再生回数が少ない動画は良い授業なんですよ。最初は、動画の再生回数が少なく、Zoomでも質問が来ない授業はサボっているのではないかと心配しましたが、課題は締め切り通りに上がって来ましたし、出来もとても良いものでした。逆に、学年の生徒数よりも再生回数が多いと、授業の内容が難しかったのだと分かるので、これが興味深かったですね。普段の授業だと難しい内容でも一度きりですが、動画だと何回も復習できます。今まで私たちが授業で試してみたかったことをオンライン授業で試せたことも良かったです。

授業動画の撮影準備のようす
授業動画の撮影準備のようす。

再生回数は面白いですね。授業の動画配信以外でも、オンライン授業で行ったことはありますか?

授業解説のスライドも作っていたので、スライドを使って電子書籍も作りました。これも、授業動画を見たあと、ピンポイントで分からないことをもう一度確認できるということで、授業動画よりも電子書籍の方が良いという生徒もいました。授業動画と電子書籍を作ることで、両方のニーズに応えられたので、効果的だったと思います。だから、定期考査の解説も電子書籍にしました。今まで、テスト返却後の解説は、全部説明する時間もありませんでしたし、解説も間違っていたら聞くけれど、正解している生徒は聞かないですよね。電子書籍では、全ての問題に解説を入れましたが、さらに該当する部分の授業動画も見られるようにしました。このやり方に切り替えたら好評で、以前は、毎回何故間違っているのかと生徒に質問されることがありましたが、それも少なくなりましたし、生徒の手元に全問の解説が残るのは良いことですよね。分からないところは自分で確認してもらい、授業は次の単元に入れるので効率も良くなりました。

編集者から見たポイント

今後は、課外授業でプログラミングなどの講座も開くプロジェクトも企画しており、学校長が後押しをしてくれているのが頼もしいと話す品田先生。STEAM教育を初めとするICTを使った新しい学びにチャレンジでき、正解を教えてもらうのではなく自ら探しにいく学習を先生方と一緒に取り組んで行ける聖徳は、生徒たちのクリエイティビティや積極性を育む教育であると、インタビューを通じて実感しました。

イベント情報

2021年1月16日(土)中学 入試体験説明会・AO入試説明会

入試体験説明会 14:30~15:50
入試問題にチャレンジしてみましょう。入試についての説明もあります。
AO入試説明会 16:00~16:45
体験授業説明会終了後にAO入試説明会が実施されます。

企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:聖徳学園中学・高等学校