「ゼロをイチに変える唯一の力とは?」 志倉氏が語る~N高後編~

inter-edu’s eye
「ネットの高校」というキャッチコピーで、昨年4月に開校したN高等学校(N高)。N高の設立には、『STEINS;GATE』などを生み出した日本を代表するクリエイター・志倉千代丸さん(学校法人角川ドワンゴ学園 理事、株式会社MAGES.代表取締役会長)が深く関わっています。それは「志倉さんがいなければ、N高等学校は生まれなかった」とまで言われる程。
そんな志倉さんにN校への想い、そして日本の教育についてうかがったインタビューを、前後編でお届けします。

一般社会を知らない教員が生き抜く術を教えられるのか?

エデュ:日本の現在の教育問題には、何があるとお考えですか?

志倉さん:昨今、学校教員による事件など度々報道に上がりますが、その都度世間から批判される内容として「学校教員の社会性」という問題があり、これには注目しています。一般社会を知らない人間が、一般社会を生き抜く術を教え、送り出す事ができるのか? 結局の所、社会性は一般社会でしか養うことができず、文科省が定める「教員に求められる能力」も机上の空論といわれても仕方無いでしょう。僕は学生の頃、授業中に教科書を脱線して一般社会についての雑談をしてくれる先生たちが大好きでした。授業よりも、その世間話の方がよっぽど面白かったんですよ。その雑談から、先生にも教科にも同時に興味を持ったのは確かです。

一般社会を知らない教員が生き抜く術を教えられるのか?

エデュ:奥平校長が、N校は「株式会社KADOKAWAと株式会社ドワンゴという窓を通じで世の中を知る機会がある」と話していました。

志倉さん:ネットの学校である当校ではインターネットを通じ、教員も生徒と同様にある程度の「社会性」を学べる環境があります。ネットの仕組みによって24時間開かれた環境は「デジタルな道徳教育の広場」のようでもあり、教室という物理的な狭い箱に閉じこもっていない分、逆にリアルよりも高い有効性さえ感じます。さらに社会人も参加している広場なので意見は様々。ちなみに僕自身も時々参加しています。書き込みには互いに空気を読んだり読まなかったりと、そこには社会の縮図というか、その一端が垣間見え、参加している生徒はもちろんでしょうが、同様に参加している教員たちも刺激を受けていると思うんです。生徒、教員、関係者、有名人、言論人、社会人など、ありとあらゆる立場の人がN高のコミュニティに参加することで、確実に社会性の底上げに貢献してくれていると思います。

子どもが興味を持った「何か」を応援して欲しい

子どもが興味を持った「何か」を応援して欲しい

エデュ:教育問題のひとつに、不登校やひきこもりがあります。悩む親御さんに、志倉理事流のアドバイスをお願いします。

志倉さん:あくまでも個人的な見解になってしまいますが、まず前提として「不登校」と「無気力」とはまったく違うものだと考えています。もし前者であるならば興味を持っている「何か」がきっとあるハズなので、まずはそれを認めてあげていただきたいです。本人が興味のある世界なのですから、そこには必ず何らかの「学び」があると思います。漫画でもアニメでもゲームでもインターネットの世界でも、とにかくなんでも良いので、後者の「無気力」に落ちないことが何より重要だと思います。そしていつか彼らは何かを見つけ、少し興奮ぎみに何かを相談してくる日が来るかもしれません。その内容がどんなものであれ、その時は全力で背中を押してあげてください。
一番ダメなのは不登校の根源を探し、それを抑制や排除しようとする動きでしょうね。次にダメなのは大人が考える「ベスト」を押し付けることでしょうか。

エデュ:最後に、志倉さんは、クリエイターとして、また企業家として、これからの時代を生きる子どもたちに、どのような力を求めていますか?

志倉さん:先にも申し上げた通り、子どもが興味を持った「何か」を応援してあげて欲しいですね。またすぐに飽きて違う「何か」に興味を持つかも知れませんが、それにも付き合ってあげていただきたい。とにかく大事なのは「興味を持つこと」これに尽きます。そんな家庭環境や学校で育ってきた子どもは、何かにチャレンジすることを恐れないし、大人になってもどんなことにも純粋に興味を持てる人間であると思います。僕は色んなことに興味津々な人が大好きです。そうした視野の広い人間ほど、きっと多くのチャンスに恵まれるハズです。「興味を持つ」これは才能よりも努力よりも肝心で、ゼロをイチに変える唯一の力。クリエイターじゃないどんな仕事にも通用する最強の「能力」だと思います。

志倉千代丸さん

志倉千代丸さん
学校法人角川ドワンゴ学園 理事。株式会社MAGES.代表取締役会長。メディアミックス展開する『STEINS;GATE』『CHAOS;CHILD』などの科学アドベンチャーシリーズをはじめ、桃井はることアフィリア・サーガを、つんく♂とバクステ外神田一丁目といったアイドルも楽曲から手掛けている、日本屈指のクリエイター。『Occultic;Nine』では、作家としてもデビューし、マルチな才能をみせている。