掲載日:
index
港区にある完全中高一貫の女子校、普連土学園中学校・高等学校(以下、普連土)では今年、新たな異文化交流研修を実施しました。それはカンボジアの文化を体験するとともに、地雷撤去活動を推進する活動家・アキラー氏を訪問するというものです。参加した生徒たちはこの研修を通して何を感じ、どんなことを得たのでしょうか。
地雷撤去活動を行うアキラー氏(カンボジア政府認可NGO団体CSHD)への献金は、青木校長が赴任した2017年にスタート。今年初めて、在校生を代表して高校2年生4名の生徒たちが、夏休み中の8月にアキラー氏に直接献金を届けるためにカンボジアを訪問しました。
青木直人校長にインタビュー
献金の意味を考えるきっかけに
アキラー氏の活動支援は、もともと私が前任校で20年以上にわたり支援してきたという経緯があり、本校でもその活動を支えていきたいと思って始めました。本研修を実施するにあたっては、前任校で同じく活動を支援していた元同僚に現地コーディネートを依頼し、運転手なども直接手配することで、学校独自の研修プログラムを実施できました。
今回の訪問では、生徒たちに、自分が献金している「100円」が現地でどのように使われているのかを知るとともに、その献金がどのような意味を持っているのかを考えること。さらに本校ではさまざまな国際交流を行っていますが、英語ネイティブではない方々とのコミュニケーションをどのように取るのかを体験させることも目的としています。
生徒たちは帰国後、全校生徒の前での報告会を通し、見聞きした経験を伝えています。このように経験を言語化し伝えることで、さらに考えが深まってきていると感じています。
Y.U.さん
所属クラブ
体操部
委員会
視聴覚委員
将来の目標・夢
環境や国際協力に関わる仕事
H.H.さん
所属クラブ
ESSとハイキング部
委員会
広報委員
将来の目標・夢
生物系もしくは教育関係の仕事
N.M.さん
所属クラブ
バレーボール部
委員会
園芸委員
将来の目標・夢
農学の研究もしくは看護の仕事
M.Y.さん
所属クラブ
Friends Fab
委員会
選挙委員・学園祭実行委員
将来の目標・夢
エネルギー関係の仕事
Q今回の訪問で目的にしていたことは?
Y.U.さん
私は現地の人との交流です。たくさん交流してカンボジアの文化を知り、自分の考えの幅を広げていきたいと思いました。
H.H.さん
教育に興味があるので、言葉が伝わるかどうか分からないけど現地の小学生とたくさんお話したり、遊んだりしたいと思っていました。
N.M.さん
献金の意味を考えること、そしてこのカンボジア研修での体験をほかの人に伝えること。そのため私の中ではまだ研修途中なんです。学校の代表として行ったので最後までしっかりやり通したいです。
M.Y.さん
カンボジアの雰囲気をまず知ること。その体験によって自分の考えが広がると思ったので、まず体験することを目的にしました。
Qカンボジア研修に向けてどんな準備をしてきましたか?
H.H.さん
挨拶など簡単な交流ができるようにカンボジア語を少し勉強しました。また、小学校を訪問するので、みんなで遊べるように折り紙や、折り紙の本も用意して、訪問した小学校にプレゼントしました。
N.M.さん
私は食べることが好きなので、カンボジア料理を調べました。またアキラーさんとお話しする機会もあったので、歴史についてもご飯と同じくらい一生懸命調べて行きました。
先入観を変える体験!
行ってみないと分からないことばかり
Qカンボジア研修のご感想を聞かせてください。
Y.U.さん
楽しかったです。さまざまな方と交流できましたし、カンボジアにある負の歴史も感じ取られた研修でした。ただ今回の行程では体験することがいっぱいあり、もう少し長く滞在したかったと思っています。
H.H.さん
カンボジアはよく発展途上国と言われますが、私が想像していた途上国のイメージとは違っていました。訪問前に提出した論文を見返すと、先入観にとらわれていた内容であったことに気づき、見方や考え方が変わったことを実感しました。
M.Y.さん
私も本当に実際に見ないと分からない部分があると思いました。今回バンコク(タイ)から入国したのですが、時間の流れが違うなと感じました。カンボジアの方がゆったりとして、自分にとって心地良かったです。
N.M.さん
やはり実際に行ってみて体験することは大切だと分かったことが今回の収穫でした。またカンボジアが私にとって、とても近い存在になり、また行きたいと思っています。それと、この1週間の滞在でみんなそれぞれが「幸せ」について考えたんですよ。
1週間の滞在で考えた
“カンボジアにとっての幸せ”
Q幸せについて考えたとは?
M.Y.さん
そうなんです。アキラーさんが戦争中のことを話されていた中で銃をおもちゃのように扱っていたと聞いたときに、人間性を失ってしまっていたのだと感じました。また地雷の撤去作業は地雷を埋めたことへの償いだともおっしゃっていて、それはアキラーさんにとって、本来の人間性を取り戻すためであり、償いが幸せにつながることかなと考えました。
Y.U.さん
現地の子どもたちと接して、日本人の子どもと変わりなく感じました。日本の都会に比べたら経済的には貧しいかもしれないけど楽しそうに暮らしていて、物質的に恵まれることが必ずしも幸せとイコールではないと感じました。
H.H.さん
地雷博物館で、地雷の被害で腕をなくされた方がとても明るく話されていて、道ですれ違った方も楽しそうに見えて、みなさん「今」という時間をすごく大切にしている、いろいろあっても充実した時間を過ごしているのかなとも感じました。
N.M.さん
カンボジアにおける幸せについて考えました。確かにカンボジアと日本を比べれば、日本のほうが便利な面も多いですが、でも日本と同じようにすることがカンボジアのためではなく、カンボジアにはカンボジアの幸せがあるのではないか。その土地の目線で考える大切さをより深く感じました。
取材では陸路で国境を越えたこと、食事がおいしかったこと、地雷撤去作業見学での緊張感など、カンボジアでの体験についてとにかく語りたい、伝えたいという気持ちが溢れていました。また「幸せについて考えた」という発言にはハッとさせられました。それくらい既存の価値観を変える大きな体験をしたのでしょう。
普連土では2回目のカンボジア研修を計画しているとのこと。このような他校にはない体験が普連土ではできると思いました。
入試相談会
日時:2024年1月13日(土) 10:00〜12:00
会場:本校講堂(新渡戸稲造ホール)
学校体験日(第3回)
日時:2024年2月17日(土) 9:00〜12:00
会場:本校講堂(新渡戸稲造ホール)
研修ではアキラー氏が運営する地雷博物館の訪問や地雷撤去作業の現場を見学するほか、カンボジアの文化・歴史を学び、また現地の子どもたちと交流するなど盛りだくさんの内容です。旅程は参加生徒たちの希望をいれながら組み立てたとのこと。こうした手作りの海外研修プログラムも同校にとっては初の試みとなりました。