激変する時代の中学受験。親の役割は?:第28回

inter-edu’s eye
世の中が急激に変化している今、中学受験も子育ても親の体験をそのまま子どもにあてはめてはいけない!と警告する教育ジャーナリストの中曽根陽子さんの新著。教育熱心な親御さんが陥りがちなジレンマを克服する道標となる書籍です。

◆教育熱心な親の“弱点”克服本!

教育熱心な親の“弱点”克服本!

前回、“ホワイトカラーが失業する時代は近い”と若者に警鐘を鳴らす新進気鋭の学者の新刊を取り上げましたが、今回はズバリ! 中学受験生を持つ親御さんを読者対象に、変化の時代の受け止め方を提案している書籍をご紹介します。

急激に変化する世の中に対応して、どのようにわが子をサポートしたらいいのか、多くのヒントと具体的なアドバイスが盛りだくさんの本です。書名は『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』。著者は、教育ジャーナリストの中曽根陽子さん。ご自身の子育て中から教育関連の取材や母親支援活動を長年続けてきた方です。

この本のおすすめポイントの第一は、今、つまり2016年現在、中学受験を目指している方に必要な情報とアドバイスがしっかり盛り込まれているということ。しかも教育熱心な親御さんにありがちなウィークポイントを把握したうえでのアドバイスなので、少し「耳が痛い」と思えるくらいに的確なのです。おそらく、「そう、そう、そうなのよ」と思われるところがたくさんあるでしょう。

◆親の体験を子どもにあてはめてはダメ!

本書の構成は以下のとおりです。

序章 「毎日スケジュールがいっぱい」それでいいの?
第1章 世の中は急激に変わっている
第2章 日本の教育には何が足りない?
第3章 “1 歩先いく” 学校の選び方
第4章 出る杭を伸ばす親の役割
第5章 未来はお母さんに託されている
教育対談 開成中学高等学校長・東京大学名誉教授 柳沢幸雄×中曽根陽子
     グローバル時代を生き抜くために必要な力とは?


序章では、子どものためと思うお母さんが抱えがちなジレンマにズバリ切り込み、タイトルにある「失敗力」の意味が語られます。第1章は、急激な変化とは何なのか? 子どもの将来を考えるうえで土台にしておくべき変化の中身が簡潔にまとめられています。今、親となっている世代が、自分の子ども時代の経験をそのままわが子にあてはめることがいかに危険か、が語られています。第3章は、日本の教育そのものが、時代の変化に適応できずに立ち遅れている、どこがどう遅れているのか、親として認識しておきたい内容です。

そしてメインの第4章。「“1歩先いく”学校の選び方」という章タイトルどおり、このような学校選びのアドバイスはこれまでなかったように思います。まず、近く行われる予定の大学入試改革を前提に、まさに今!中学受験をする親子が必ずチェックしておきたい7つのポイントが挙げられています。

ポイントとは「校風」「カリキュラム」「グローバル化対応」などですが、こうした言葉だけではわかったようでわからない。そこで著者は一歩踏み込んで、校風のどこを見るべきか、カリキュラムの何を比べるべきなのか、グローバル化への対応では学校のどんな取り組みをチェックすればよいのかを詳細に説明してくれます。

著者が特定の学校を推奨するのではありません。読んでいる人の頭の中にある“こんな学校がいいな”というイメージを、個々の学校の校風や具体的な取り組みと関連づけるのに有効なガイドなのです。学校説明会に行く前に第3章を読んだ人は、説明会で話を聞いたとき、わが子との相性がより鮮明に見えてくるでしょう。章の最後には、いくつかの学校を比較するときにわかりやすいチェックシートもついています。

◆失敗を恐れない、失敗から学べる子に

続く第4章の一部を引用させてもらいます。

 一流大学→一流企業=一生安泰・幸せという人生設計図はすでに存在しないと分かっていながら、それに代わる設計図がなかなか見つかりません。だからわずかな期待を抱き、既存の設計図で何とかしようと多くの親子がもがいています。さらに、今の子ども達には、グローバル化によって求められる新しい学力という課題が突きつけられ、その準備に親は頭を悩ませています。(P107)

これは、中学受験を目指す親御さんの多くが抱える悩みでしょう。さらに著者は続けます。「今は友達親子というくらい、親子の仲も良く素直な子どもが多いので、お母さん・お父さんの影響は大です(P114)」。そのために「親のジレンマで子どもの足を引っ張ることもある(P111)」。そして実際にあったケースがいくつか紹介されています。読んでいて、これだけは避けなければと思う実例ばかりでした。

では、どうしたらいいのでしょう? 第4章と第5章には、その対策がさまざまな角度から語られているので、ぜひ熟読してみてください。子どもをサポートする土台の心構えが明確になってくるでしょう。一部をお伝えすると、第4章の見出しにもある「出る杭を伸ばす」ということ。日本は長い間「出る杭は打たれる」社会でしたが、世界中の人と一緒に働くのが当たり前になれば、その中で自分を主張できるように「出る杭を伸ばす」発想で子どもをサポートしようということです。もうひとつ、書名にある「失敗力」もキーワード。「失敗力」とは、失敗する力ではなくて、失敗にくじけない力のことです。

変化の激しい時代を生き抜いて活躍するために何より大事なのは、失敗を恐れずにチャレンジするタフさと、心が折れそうになっても、そこから立ち直る力を育てることです。(中略)例えば震災など、経験したことのないような困難に出遭っても、そこでくじけずに前に進む精神的なタフさもそうですね。私はそれを「失敗力」を名付けます。失敗をする力ではなく、失敗にくじけない力です。そういう力をつけるためには、子どもの頃から親は失敗を恐れずに、できそうなことはできるだけ子どもに任せて、いろいろな体験をさせることが大切です。(P11)

以上は序章からの引用です。この考え方に納得する方は、中学受験の志望校選びのために、また変化の時代にブレずに、うろたえずにわが子をサポートするため、この本を参考にしてください。巻末の開成の校長先生との対談も必読です!

1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい,中曽根陽子,晶文社

1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい
中曽根陽子著、晶文社刊、1500円+税

子どもが成功するには、どう育てればよいの? どんな学校なら、自分らしく生きる力を授けてくれる?
「一流大学卒業→一流企業に就職≠幸せ」ということに気づいていない偏差値至上主義のお母さん。分かっているけど学力偏重の考え方から抜け出せないお父さん。勉強以外のことは何でもやってあげるお母さん。そんな迷える保護者の皆さんに、社会・教育の現状やグローバル時代に必要な力をわかりやすく解説し、親の役割を説く。中学校選びの7つの視点(校風・カリキュラム・探究型学習・キャリア教育・課外活動・グローバル化・特徴ある教育)と学校の実例も紹介するほか、『なぜ、中高一貫校で子どもは伸びるのか』(祥伝社新書)の著者で、開成中学高等学校校長の柳沢幸雄氏との特別対談「グローバル時代を生き抜くために必要な力とは?」を収録。…購入はこちらから

中曽根陽子,エデュママブック

著者の中曽根陽子(なかそね・ようこ)さん
教育ジャーナリスト。小学館勤務後、教育発信ネットワーク「ワイワイネット」を発足。女性のネットワークを活かした企画・編集を行なう。教育機関の取材やインタビュー経験が豊富で、メディアからコメントを求められることも多い。教育雑誌、経済誌、新聞連載など幅広く執筆。海外の教育視察や講演も行なう。2014年、「Mother Quest」を立ち上げ、母親力を育てるワークショップなどを定期的に開催。著書『後悔しない中学受験』『後悔しない中学受験最新版』(共に晶文社)、『子どもがバケる学校を探せ!中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)など。
公式ウェブサイト→http://www.waiwainet.com/mother-quest/


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