小学6年の夏『なぜか突然、中学受験』に挑む!家族3人が勝ち得た中学受験とその先にあったもの

中学受験といえば、「絶対合格」の4文字を掲げ、小学校4年生頃から子・親・塾の三人四脚で挑むものというイメージを持っている人は多いでしょう。

しかし、中学受験の形は家庭によってさまざま。
そして、中学受験が子どもにもたらすものも合格だけではないことを、細川貂々(てんてん)さんの著書『なぜか突然、中学受験。』は教えてくれます。

小学校6年生の夏休み明けに中学受験を決意した息子

小学校6年生の夏休み明けに中学受験を決意した息子

本書に描かれている中学受験は、一般的に小学校4年生くらいから準備するという中学受験のイメージとはかけ離れたものかもしれません。

なんと、貂々さんの息子さんである「ちーと君」は、小学校6年生の夏休み明けに突然「オレ、受験して私立に行きたい」と決意表明。しかも、その理由は向学心に火がついたからという積極的なものではなく、「私立中学には組体操がないから」という消極的なものでした。

普通の親であれば、「いやいや、今から中学受験なんて間に合わないでしょ。大体、そんな理由で中学受験なんて…」と諭したくなるでしょう。

ところが、貂々さんはちーと君の決意を戸惑いつつも前向きに受け止め、親子3人で中学受験に挑戦することにしたのでした。

『ツレがうつになりまして。』のツレが息子の中学受験をメインサポート

貂々さんは、かつて漫画、後に映画化された『ツレがうつになりまして。』の著者です。
そして今回、中学受験のメインサポーターとして活躍するのは、うつ病と闘い、現在は専業主夫として貂々さんとちーと君を支えている「ツレ」(夫)です。

本書を手に取り、父親が自ら家庭教師になって献身的に勉強のサポートを行う姿に新鮮な印象を受ける人は多いでしょう。しかし、ツレがちーと君の勉強に対する姿勢や成績に一喜一憂するさまは、中学受験に臨む一般的な親御さんと変わりありません。

特に、10月に初めての公開模試を受けた際、息子がクローゼットの中で泣く傍らで涙を流すツレの姿は、他人事とは思えないものです。ただ、ツレのメインサポーターとしての本領は、このときに発揮されます。

その模試の結果は偏差値28、合格率0%と凄惨なものでしたが、ツレは次のように開き直ります。

「周りは4年、5年生の時から受験勉強に取り組んでて夏休み中は強化講習とかやってたわけだよ」

「その間、ウチの子はまんが読んでゲームやって動画見てるだけの毎日だったんだよ」

「当たり前の結果っていえばそうなんじゃない?」

そして、ちーと君を以下のような言葉で励ましたのでした。

「お前のチームは1回裏が終わった所で16対0で負けてる。でも、この後失点を抑えて各回に必ず2点は取る、それができて9回裏にチャンスが来ればサヨナラ勝ちだ!!」

父の言葉を聞いたちーと君は、同級生に「オレ合格率0%だけど、全然諦めてないから。ポジティブなんですよネ」と話したと言います。生まれたときから片時も離れずに寄り添ってくれているツレの言葉は、ちーと君の心に大きく響いたのでしょう。