進学塾に入る前、親がしておきたい大事なこととは?

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教育熱心で心配性なお母さまは、つい早め早めにやっておこうと思いがちです。でも教育では早めがよくないケースも多々あります。子どもの成長を見極めて、その時期にいちばんためになることをしてあげるにはどうしたらいいか? 今回ご紹介する『小学校最初の3年間で本当にさせたい「勉強」』には、目からウロコのアドバイスが満載です。

◆成績の伸びがピタッと止まる子どもとは?

ここ数年、「塾に通う前こそ大事」とおっしゃる中学受験個別塾や家庭教師の先生方が増えてきました。なぜかというと、よくない勉強習慣がついていたり、生活感覚が身についていない子が増えてきたからというのです。そしてこの両方があてはまる子は、まず間違いなく、ある時期に成績の伸びがピタッと止まってしまうとか。たとえば、こんな感じです。

「親御さんが教育熱心で、早期教育やお受験の塾、お稽古事などで忙しくしているお子さまの一部にこの傾向があります。実感のないまま、たくさんのことを覚えさせられてきた結果でしょう。素直ないい子なんですが、自分で考えたり工夫したり、何かを知ったことを喜んだりといったことがありません。大人に言われるままに勉強することが習慣になっているのです。ですから学ぶ内容が難しくなって、自ら考える力が問われるようになると、ついていけなくなってしまいます。」(個別塾講師)

こんな話を聞いていた折、書店で『小学校最初の3年間で本当にさせたい「勉強」』と題された本を見つけました。著者は、35年の長きにわたって作文教室を主宰し、小学生から大学受験生まで、実際の教室と通信教育で12000人もの生徒に作文を教えてきた中根克明さん。昨年末の発売以来、この1年に何度も重版されている大変人気の高い本です。「小学校最初の3年間」とは、まさに進学塾に入るまでの期間。その間に本当にさせたい「勉強」とは何なのか、読んでみることにしました。

◆低学年期は「少し学んでたっぷり遊ぶ」がベスト

通読して、長年の幅広い指導経験が生きている本だと感服させられました。20年前でも10年前でもない、今の子どもたちにどう対処すればいいかという的確なアドバイスが綴られていました。もちろん、時代が変わっても変わらないことをきちんとおさえたうえでのことです。本書の構成は以下のとおりです。

小学校最初の3年間で本当にさせたい「勉強」,中根克明

第1章 小1・小2・小3はとても貴重で大切な時期
第2章 3年間の読書量で学力が決まる
第3章 後伸びする低中学年の勉強法
第4章 「遊び」をとことん充実させる
第5章 本当に地力のある子に育てていくために


著者は第1章で、低学年の頃、子どもは何でも吸収し、できることがどんどん増えていく黄金期を迎えていると言います。しかもそれは、「教えてできるようになるというよりも、成長によって自然にできるようになるという感じ」だと。そして以下のようにアドバイスしています。

この時期の子どもの勉強には、「腹八分目」ならぬ「頭八分目」が大切です。(中略)
詰め込みすぎるよりも隙間がある方がまだいいのです。
それは、勉強を詰め込むと必ず消化不良になるからです。その消化不良は、だらだら勉強するという形で表れます。
勉強はさっと集中して終わらせ、あとはたっぷり遊ぶというのが、よい時間の使い方です。
(P26~P27)

次の第2章には、小学校最初の3年間で本当にさせたい「勉強」は、読書であるときっぱり書いてあります。その理由について、本書の部分を引用してご紹介します。

学力の基本は国語力です。国語力とは、言い換えれば日本語を使いこなす力のことです。
学校では、どの科目の教科書も日本語を使って書かれています。日本語をしっかり読み、理解することが勉強の基本です。そして、日本語を使って深く考えられるかどうかが考える力の中身です。
(中略)
読む力との関係がとくに強い教科が、理科と社会です。
教科書に書かれている内容を理解することがそのまま教科の勉強になるので、教科書を読書のつもりで読んでいれば自然に成績が上がるのです。
(中略)
高学年になり勉強の内容が難しくなり、考える要素が増えてくると、読む力のある子と読む力のない子の差が次第に表れてきます。(P37~P38)

そのために、なぜ読書ががいいのでしょう?

日本語を読み取る力、国語力は、いわゆる「国語の勉強」だけでは身につきません。(中略)
国語力は、たくさんの文章を読み、多くの日本語に繰り返し触れることによって、少しずつ身についてきます。それは知識の勉強というよりも、一種の身体感覚のような、慣れることによって身につく勉強なのです。(P39)

読書や文章を書くのが好きな方は、このような抜粋だけでも、その通り!と思われるでしょう。反対に、それほど本好きでない方は、いまいち納得できないかもしれません。でも、そういう方にこそ本書を読んでいただきたいと思います。なぜなら、これからの時代、中学受験はもとより大学受験でも就職してからも、文章を読むこと書くことに苦手意識があると、大きなハンデを背負うことになるからです。インターネットを見ているとわかりますが、文書作成は誰でもできて当たり前、今やその中身が問われる時代です。

ただし読書をたっぷりさせようといっても、目標は本を読むのが楽しいと思うようにすることですから、強制して読ませるのはNGです。どうすれば子どもが本に親しむようになるのか、本書を読んでいただくと、そのコツがとてもよくわかります。決して面倒なことではなく、まさにちょっとしたコツなのです。

◆自分で勉強する習慣、個性を育てる遊び

低学年でさせたい勉強は読書ときっぱり語る本書ですが、第3章と第4章で、読書以外に大事なふたつのことを伝えています。

第3章の「後伸びする勉強法」とは、宿題以外の家庭学習です。自分で勉強する習慣を身につけるために、ほんの少し必要だと著者は語っています。この章には、塾通いや中学受験についての考え方ものっています。

そして第4章の最初の項目が、「これからは遊びの中で育てた個性が光る時代」です。テストの点や偏差値で将来が約束される時代は終わりました。そのことを踏まえて、子どもの遊びの充実を著者は力説しています。考えてみれば、昔の子は親の目の届かないところでいたずらも含めて勝手にいろんな遊びをしていました。そんな中で身につけたものがたくさんあったのです。でも今は外遊びが難しい時代。だからこそ今の親にはある程度の配慮が必要というわけです。どんなサポートをしたらいいか、ご自身の子ども時代を思い出しながら読んでみてください。

本書を読んでふと思い出した言葉が、不易流行です。子育てや教育には、時代が変わっても変わらない面と大きく変わる面があります。変化の激しい社会で毎日忙しくしていると、どちらかといえば変わらない面のほうを忘れがちです。本書を読んで、そのあたりをチェックしてみてはいかがでしょうか?

小学校最初の3年間で本当にさせたい「勉強」

小学校最初の3年間で本当にさせたい「勉強」
中根克明著、すばる舎刊、1400円+税

難関校合格者を輩出。教育熱心な親の間で注目を集める作文通信「言葉の森」代表が、家庭教育の現場から「10歳までの本物の勉強法」を発信。多くの親が焦ってしまうが、低中学年はよく遊び、好きなことを追求するのが大切な時期。勉強は詰め込まず、家庭学習の習慣がつけばいい。ただ、読書だけはたっぷりさせたい。国語力は学力の土台。そして、国語力は読書によって身につくもの。この時期にたくさん遊んで余力を蓄え、読書で国語力を養った子は高学年から一気に伸びる。学校生活のスタートである「小学校最初の3年間」を、どう有意義に過ごさせてあげるか。まったく新しい観点の教育指南書。この時期に読みたいオススメ本52冊も掲載。…購入はこちらから

中根克明

著者の中根克明(なかね かつあき)さん
1952年生まれ。千葉大学卒。25歳のとき、マスコミ志望の大学生を対象にした作文教室を開く。1981年、作文教室の草分け的存在である「言葉の森」を横浜で開講。通信教育を始める。
小学生から大学受験生まで12000人が学んだ。卒業生には東大・京大・早稲田大・慶応大など難関大、難関中・高に進んだ生徒多数。教育熱心な親の間で注目を集めている。 毎月の作文の添削だけでなく、国語力の土台である読書推進にも力を入れる。生徒への面倒見のよさには定評があり、ネット上で毎日の家庭学習をこうしにみてもらえる「寺子屋オンエア」も開催する。本書は長年教育の現場でたくさんの親子をみてきた著者が、本当に大切な「勉強」とは何かを余すことなく語った書である。