子どもに賢さと幸せを約束する「非認知能力」とは?

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わが子には、できるだけよい教育を受けさせたい、でもそれがどういうものか、本当のところはよく分からない…そんな不安を抱く親御さんは多いと思います。そんな方に読んでいただきたい新刊が『「非認知能力」の育て方』です。「非認知能力」とは耳慣れない言葉ですが、これこそ、そんな不安に答えてくれるキーワードなのです!

◆家庭教育でいちばん大事なのは「非認知能力」

「非認知能力」の育て方 ボーク重子

今回ご紹介する新刊は、教育熱心なエデュママにこそ読んでいただきたい本です。タイトルにある「非認知能力」の意味が分からないと何がなんだか分かりませんが、副題は、「心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育」です。そして、「非認知能力」は、育児が苦手と感じていた著者が、娘を「全米最優秀女子高生」の栄冠を手にするまでに育て上げたキーワードであることに注目してください。

著者のボーク重子さんは、日本で生まれ育った生粋の日本人。しかしアメリカ人の夫と結婚をしたことで、アメリカで出産・育児をすることになりました。そうでなくても大変な育児を、日本語が通用しない外国で行う困難は想像に難くありません。そんな中、日本の常識では考えられないような教育を行う学校に出会ったことがきっかけとなって、娘さんをそこで学ばせるとともに、ご自身、教育についてさまざまなことを調べはじめたのだそうです。

本書には、そんな著者の20年間の体験と研究の成果がわかりやすく語られているのですが、まずは、「非認知能力」とは何か?を「はじめに」から引用させていただきましょう。

「テストの結果」や「IQ(知能指数)」などの数値化できる能力ではない、総合的な人間力のことです。もっとくだけた言葉にするなら、教科書を使った勉強で養われる能力ではなく、「くじけない力」や「想像する力」、「コミュニケーション力」、「問題を見つけ、解決する能力」、「行動する力」、「やりぬく力」、「我慢する力」など、実際の生活の中でこそ身につけていける「生きる力」のことです。

◆成績など「認知能力」の土台は、数値化できない「非認知能力」

テストの点数や偏差値など数値で表すことができる能力が「認知能力」、数値で表すことができない、基本的な人間力が「非認知能力」。

この「非認知能力」は、著者が育児をはじめた頃、アメリカの教育界で頻繁に使われるようになった言葉だったそうです。当時(1990年代ごろ)のアメリカには「学力偏重」主義がはびこり、名門大から企業に就職した若者たちが、「皆同じ顔をしている」「何事もマニュアル通り」「個性的な若者がいない」と、企業側は大いに不満を感じていました。いったい何が足りないのか? 

アメリカの研究者たちがさまざまな調査・研究の中から見いだした回答が「非認知能力」でした。そして「非認知能力」が育っていないと、「認知能力」、つまり学業成績の伸びも止まってしまうことをつきとめました。こうしてアメリカでは教育改革が行われていきました。

今の日本は、1990年代の米国と酷似しているのではないでしょうか。難関大学卒の優秀な人材がそろっているはずの中央省庁での不祥事の数々。エリートの劣化とも言えるさまざまな事件の頻発。そんな中、国も危機感を感じていて、これから行われる大学入試改革などの教育改革では、「非認知能力」を伸ばすことも重要な項目とされています。

◆学業、親子関係、人生に好循環をもたらす鍵!

本書の構成は下記のとおりです。第2章から第6章までの章タイトルは、そのまま著者が提案する、家庭で「非認知能力」を育てる5つの項目を示しています。

第1章 非認知能力とは
第2章 ルールをつくる
第3章 対話する
第4章 遊ぶ
第5章 子どもと自分を受け入れる
第6章 「好き」を見つける


「ルールをつくる」「対話する」「遊ぶ」など、どれも学業成績を上げる方法とはかけ離れているように感じる方も多いと思いますが、まぎれもなく、著者が家庭教育で実践してきたことです。そして本書を読んでいただければ、どうしてそれが子どもを賢く、我慢強くしていくのかも、おわかりいただけるでしょう。その詳細は、本書を読んでいただくとして、その中から、ぜひお伝えしたいことを2点あげておきたいと思います。

まず「非認知能力」は、数値で表される「認知能力」、つまりテストの点数や偏差値に直結するということ。本書には、アメリカの教育界で行われた多くの研究報告が紹介されていますが、そのすべてが、「非認知能力が高い子どもは認知能力も高くなる」ことを示しています。勉強だけをやらせた子は、当座の成績はよくなっても、それが続かないのです。著者の娘さんが「全米最優秀女子高生」に選ばれたことも、それを証明していますね。

もう一つは、第5章「子どもと自分を受け入れる」という言葉からも想像できるように、「非認知能力」は、親自身の成長にもつながるということ。「非認知能力」は「認知能力」と違って数値化できない、計測できない能力ですから、これとこれをやればOKということはありません。ある意味、マニュアルがないとも言えるでしょう。にもかかわらず、親子の会話やコミュニケーション、日常の生活や遊びの中で育っていく。だとしたら、それは、当然のように、子どもだけでなく親の心にも大きく影響していきます。

日本人として生まれ、日本で教育を受けた著者が、アメリカで出会った「非認知能力」という考え方によって、新たな自分を見いだしていったプロセスも、子育てと仕事の両立などで悩む方に、おおいに参考になると思います。

最後に、皆さんは周囲の人を見て、「いい大学出てるのに、頭悪そう」とか「学歴はないけど、あの人、賢い」などと思ったことはありませんか? そんなとき、私たちは無意識に、その人の「非認知能力」を感知しているのではないでしょうか。現代人は、ランキング可能な「認知能力」ばかりに注目して、数値化できない能力を意識から遠ざけてきたのかもしれません。でも、これから数値化は人間より得意なAIが担当していきます。未来を生きる子どもたちには、AIで代用できない、数値化できない能力こそ、幸せの鍵になるのだと思います。

「非認知能力」の育て方 ボーク重子

「非認知能力」の育て方 ―心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育―
ボーク重子著、小学館刊、1400円+税
2020年教育改革で求められる5つの知識。長い間「学力偏重主義」に陥り、問題解決力やコミュニケーション力に欠け、心が折れやすい子どもが増えているといわれる日本。「人間力を育む教育」がされてこなかったことが原因だともいわれている。近い将来、AIが多くの仕事を奪うと言われている今、数値化できる能力=学力テスト、IQなどは意味を持たない。人だけが持ち得る人間力=「非認知能力」を育てることこそが、これからの教育の必要なこと。2020年教育改革の核もそこにある。 世界に先駆けてこの教育改革を断行したアメリカで子育てをした日本人ママ、ボーク重子さん。娘スカイは、2017年「知力・表現力・コミュニケーション力」などを競う「全米最優秀女子高生コンテスト」で優勝を果たした。子育てを始めたワシントンDCで著者が見た現地の教育は、日本人からすると信じられないものだった。しかし、それこそが子どもの強い心を育み、自分でさまざまな問題を解決する力をつける教育であることを知る。 そして、彼女は娘が持つ可能性を伸ばしていくために、家庭でできる5つのことに気がついた。それこそが、「非認知能力」を育てる鍵であり、子育てをする親をも幸せにするルールだった。 …購入はこちらから

ボーク重子

著者のボーク重子(ぼーく しげこ)さん
ICF認定ライフコーチ、アートコンサルタント。福島県出身、米・ワシントンDC在住。30歳の誕生日前に渡英、ロンドンにある美術系大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学。現代美術史の修士号を取得後、フランス語の勉強のために訪れた南仏の語学学校で、アメリカ人である現在の夫と出会う。1998年渡米、出産。子育てと並行して自身のキャリアも積み上げ、2004年、念願のアジア現代アートギャラリーをオープン、2006年、ワシントニアン誌上でオバマ前大統領(当時は上院議員)と共に、「ワシントンの美しい25人」のひとりとして紹介される。また、一人娘スカイは2017年「全米最優秀女子高生」コンテストで優勝、多くのメディアに取りあげられた。現在は全米・日本各地で、子育て・キャリア構築・ワークライフバランスについて講演会やワークショップを展開中。著書に『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)などがある。


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