中学受験でも問われる「読書体験」、読書量を増やす秘策とは?

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中学受験でも高校受験でも、読書量を問う学校が増えてきました。特に上位校や難関校。記述問題で、読書習慣が身についているかどうかを見分ける傾向が強くなっているのです。読書量が本物の学力と密接に関係していると、学校側もわかっているのでしょう。でも、小さいころから読書好きにさせるには、どうしたらいい? そんな親御さんにぴったりの本を紹介します。

勉強よりも、まず「読書」!

『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる』松永暢史著

今回ご紹介する本のタイトルは、『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』(すばる舎刊)。著者は、昨年9月13日公開のエデュママブックで紹介した『落ち着かない・話を聞けない・マイペースな小学生男子の育て方』の著者でもある松永暢史さんです。

教育コンサルタントとして大勢の子どもに接し、家庭環境や生活習慣を観察してきた結果、著者がたどり着いたのは「子どもの可能性は無限大」ということ。「その子がもともと持っている能力の、はるか上までレベルアップさせることも可能」と言います。

ではそのためには、早い時期から勉強をさせたほうがいいのでしょうか。それは違う、本格的な勉強は10歳を過ぎたあたりからで十分、というのが著者の考えです。

しかし、子どもが将来、自分の力で未来を切り開くための学力を身につけるためには、絶対に欠かせないことが一つあると言います。それが「読書」です。

「子どもの学力を上げることと読書の習慣は、切っても切り離せないもの」と著者。読書をするようになれば、語彙力や文章の読解力は自ずと上がります。思考力や集中力も、自然と身につきます。考えたことを言葉にして他者に伝える表現力も向上します。要するに読書には、学力向上に欠かせない要素が満ちあふれている、本は最高の知育材料だというのが、著者がたどりついた結論でした。

読み聞かせも立派な「読書」。徹底して読んであげよう!

ただ、本を読ませようとしても、子どもが素直に読んでくれるとは限りません。むしろ、親が一生懸命になるほど、子どもは反発する可能性もある。たとえ世間一般で評価が高い本でも、本人の興味がなければ、まったく読まないものです。それは、私たち大人も、自分の子どものころを思い出せば、心当たりがあるのではないでしょうか。

本が好きではない子どもにも、読書習慣を身につけさせるにはどうしたらいいのか。その大きなテーマに対する回答が、本書にはあります。手法は大きく分けて2つ。「読み聞かせ」と「本を読まずにはいられない環境を作る」ということです。

あっけないほどシンプルですが、これが効果抜群だということを、著者が接してきた子どもや東大生のアンケートを例に、解説しています。詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、一部をご紹介しましょう。まず、読み聞かせから。

これまで読み聞かせをしてこなかった親御さんが行うには、まず、子どもが見ている絵本などの中から、子どもが最も好きな本を選びます。それを読む。子どもはすぐに飽きるかもしれないが、短時間なら大丈夫。それを何度も何度も繰り返す。場合によっては、図書館で紙芝居を借りてきてもいい。

すでに読み聞かせをしている親御さんの場合は、子どもがすぐに飽きてしまうのでなかなか回数が増やせないこともあるでしょう。そんなときは、短い本を選んで読み聞かせをする。

大切なことは、読み聞かせの量です。浴びるほど読み聞かせをしてあげたほうが良いのです。飽きっぽいお子さんの場合は、さまざまな種類の本を読み聞かせればいいですし、1冊の本が大好きというお子さんであれば、同じ本を何度も読んであげる。この方法なら、今すぐにでも始められそうですね。

読み聞かせは、感情豊かに読むよりも「音」が大切

読み聞かせは読書経験の重要な第一歩ですから、始めるのは早ければ早いほどいいのですが、子どもが望むのであれば、小学校高学年になっても中学生になっても、してあげたほうが良いそうです。

ただ、読み聞かせの手法に独特のテクニックがあります。それは、「スラスラと上手に読んではいけない」ということ。つい、感情を込めて読んであげたくなりますが、それはダメ。「口をしっかり開け、意識して文字を一音一音、はっきり読むこと」がキモなのです。

「日本で一番、音読を行ってきた指導者」と自負する著者が、あらゆるジャンルの本を子どもから大人に至るまで、さまざまな年齢層の人を相手に音読をしてきた経験から編み出した手法です。

すべての音を、同じ強さで発音する。語尾も同じ強さで読む。ただの棒読みとも言えますが、著者の考えではこれがベストのテクニック。要するに、子どもにとって聞き取りやすいのです。滑舌の善し悪しなど、気にする必要なし。

それよりも大切なのは、音読をしたとき「音の良い」本を選ぶこと。声に出して読んだとき、リズムがよく、耳に心地良い文章で書かれた本は、聞いているほうも文章の世界に引き込まれます。それは歌と一緒でしょう。

特に、読書体験の最初となる幼児への読み聞かせについては、「音の良い絵本」を選ぶべきだと著者は繰り返し述べます。本書には、その観点から著者が選んだ絵本が、年齢別に分類されて詳しく紹介されているので、どんな絵本を選んだらいいか迷っているとき、とても参考になります。

読書習慣が身につく“環境設定”を

読書習慣を身につけるための手法の二つ目、「本を読まずにはいられない環境を作る」も、実は簡単です。物理的にも心理的にも、「本が身近にある環境」を作るのです。物理的にというのは、文字通り家に本が置いてあること、心理的にというのは、生活の中に本を読む行為が存在するということです。

昔から読書家は、たいてい、自宅に本がたくさんあって、親も本を読んでいたという人が多い。それをマネするのです。

本を集めるのは、予算はかかりますが、早期教育で英語塾に通わせるよりは、はるかにコストがかかりません。図書館を利用すればタダです。生活の中に読書という習慣があるかどうかも、すでに読書が好きな親御さんであれば、何の問題もない。それまでと同じことをすればいいわけです。

仮にあまり本を読まない人だった場合はどうするか。その回答も著者は用意しています。要は、本を読む姿を見せたり、本について話をしたりと、子どもの前で「芝居を打つ」。親にしかできない役目ですね。

「我々はたいした大人ではないかもしれませんが、子どもの前では良い母親、父親を演じることはできるのです」(119ページ)

本書には、読み聞かせにふさわしい本のみならず、子どもが自分から読書をしたいと思うようになったときにふさわしい本も多数紹介されています。童話、自然、数学・科学、社会、歴史など、いずれも内容が良質で、文章も美しい本が厳選されています。本選びの基準に使うといいと感じました。

本書は、一読しただけで終わるのはもったいない本です。手元に置いておき、読み聞かせをしようとしても子どもがなかなか乗ってこないときや、自分から本を読もうとしないというときなど、折に触れて読み返してみると、効果的なアプローチ法が見つかるでしょう。小学生以下のお子さんのいる方、特に小さいお子さんをお持ちの親御さんにとっては、とても役に立つと思います。

『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる』

『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』
松永暢史(まつなが ひろふみ)著、すばる舎刊、1400円+税
教育環境設定コンサルタントとしての経験から、読書と学力には密接な関係があると確信した著者が、子どもを読書好きにさせる手法を余すところなく解説した本です。 効果的な読み聞かせの方法、どういう本が良いのか、どうしたら子どもが本好きになるのか。また、本を読むことがどれだけ国語力ひいては学力全体を伸ばすことになるのか…。「受験のプロ」として、読書の大切さをおりにふれ力説する著者が、具体的に解説します。〈読むだけで頭が良くなる〉厳選本145冊も紹介! …購入はこちらから

著者の松永暢史(まつなが ひろふみ)さん
「受験のプロ」として音読法、作文法、サイコロ学習法、短期英語学習法などさまざまなメソッドを開発。個人指導歴42年。専門は入試国語、古典。個人授業では国語を担当。中学高校大学受験国語記述を1対1で指導する。
教育作家としても活動しており、『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』(主婦の友社)、『女の子は8歳になったら育て方を変えなさい』(大和書房)、『落ち着かない・話を聞けない・マイペースな小学生男子の育て方』(すばる舎)など、著書多数。