自ら学ぶ、AI時代に活躍する人間を育てる「論理の力」

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「論理エンジン」や「論理エンジンキッズ」でも著名な出口汪さんの新著『2歳から12歳の脳がグングン育つ! 論理の力』(水王舎)が発売されました。AI時代の到来を見据え、自ら課題を発見し、考え、人を言葉で説得する子を育てるための考え方や手法について、丁寧に解説。論理力養成のプロが、本気で教育を変えるために出版した本です。

●AI時代に求められるのは「論理力」

『2歳から12歳の脳がグングン育つ! 論理の力』出口汪著

AIの普及、ロボットの導入などで、社会の構造がガラリと変わろうとしています。「これは第四次産業革命だ」という見方もあり、実際、工場の生産現場や銀行業務、スーパーのレジに至るまで、無人化が徐々に進んでいます。今後、主にホワイトカラーの仕事を中心に、多くの業務がコンピュータや機械に置き換えられるのは間違いないでしょう。

価値観も常識も劇的に変わる、そんな時代に活躍できる人間を育てるにはどうしたらよいか。文部科学省でも、さまざまな改革を打ち出しています。これまでの「正解」のある詰め込み教育から「自ら考える教育」へと本格的に舵を切り、入試も知識偏重の課題から思考力や判断力、表現力を問う課題へと変わります。しかし、公教育が変わるのには時間がかかります。それでは、間に合わないかも知れません。出口さんは言います。

「たとえ高い実績のある教育であってもそれはあくまで今までの世の中に対応できたからであり、第四次産業革命においては逆にマイナスの効果しか、もたらさないかも知れません」

新たな時代に適応できる教育が必要なのです。では、今現在、幼児や児童をお持ちの保護者として、子どもにどんな教育を選べばよいのか。それは「論理の力」を身につけることだというのが、本書全体を貫く著者の主張です。

●論理とは、簡単な法則に従った言葉の使い方

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「論理」というと、とても難しく感じられるかもしれませんが、出口さんは非常にシンプルにまとめています。

「論理とは『イコールの関係』『対立関係』『因果関係』といった、たった三つの言葉の法則に過ぎません」

「イコールの関係」とは、A君、B君、C君に共通する要素を抜き取ると「男」という言葉に抽象化できます。なぜ男という言葉を必要としたのかといえば、「女」を意識したから。「男」と「対立関係」となる「女」という言葉です。「因果関係」は原因と結果の関係のことであり、「喉がかわいたから」「水をください」といった、理由の説明に使います。

「因果関係」は、文章の理解や表現には重要で、察する文化の日本では「水」だけで済ませてしまうことが多いですが、日常生活では困らなくても、それを続けていては、論理的な思考力が身につきません。やはり、因果関係をきちんと言葉にして説明できるようにしなければならないのです。

また、この3つの要素以上に重要なのが、「要点と飾り」だと著者は言います。それがよくわかる例文が本書にあるのでご紹介しましょう。

「小鳥がかわいらしく鳴いた」

小学生に、この文章でどの言葉が大切ですかと聞くと、ほとんどの子どもが「かわいらしく」と言うそうです。しかし、「かわいらしく」を省いて「小鳥が鳴いた」にしても、文章として成立します。「かわいらしく鳴いた」では何が鳴いたのかわかりませんし、「小鳥がかわいらしく」では小鳥がどうしたのかさっぱりわからない。文章として成立しないのです。この、文章を成立させるために必要な主語と述語が「要点」、述語を修飾する言葉が飾りです。

分解してみれば簡単なことではありますが、なんとなく、自分の好き勝手に文章を読んでいると、いつまでたっても、文章を読み取れないのです。教育関係者の多くが「学生の読解力が落ちた」と言っているのも、簡単な言葉の法則としての「論理」を身につけていないからに他ならないと思います。

この「論理の規則」は、国語のみならず、外国語にも共通する普遍的な要素ですから、「論理」を身につけた子どもは、英語もすんなり理解できるようになります。また、試験問題は選択式だろうと記述式だろうと文章ですから、当然、論理的に読む必要がある。「論理はすべての科目の土台」なのです。

●幼児期こそ論理を学ぶのに最適な時期

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「論理は幼児期から学ぶのが最善」というのも、出口さんが導き出した結論です。その理由はふたつあります。

ひとつは、脳の発達段階。最新の大脳生理学によると、子どもの脳は6歳までに80%発達し、12歳頃に完成すると言われているとのこと。猛烈な勢いで脳が発達する時期ですから、「自分の頭で考える」、すなわち、「論理」を身につけるには、もってこいなのです。

もうひとつの理由は、著者の経験です。もともと出口さんは予備校講師。大学受験を控えた受験生の授業に「論理」を取り入れて成果を上げましたが、一定の割合でうまくいかない生徒が出る。1年間という時間的制約があるからかもしれないと考えて、高校生・中学生向けに「論理エンジン」を開発。現在は約300校が採用するまでになりましたが、ここでもうまくいかない生徒が現れる。

「うまくいかない理由はなんだろうと考えて、次のことにつきあたりました。つまり、記憶することや計算することだけが勉強だと思っている子どもの脳に『論理』という新しい建物を建てようとすれば、古い建物を壊さなければ駄目なのです」

これを実行するには、教える側に強力な指導力が要ります。すべての先生にその能力を望むのは難しいと結論づけ、ここ10年ほどは、小学生向けの教材を作り続けました。その中で「答えと方向性が見えてきた」と言います。

人間の脳が12歳頃でほぼ完成するということは、中学生以上は完成された脳に対する教育。中学生や高校生になってから論理エンジンをやってもうまくいかない子は、12歳までの間に自分で考えるという習慣がなかったという現実が見えてきたわけです。

ならば、12歳以下のまっさらな脳に対して「論理エンジン」のプログラムを実践すれば、効果が上がるのではないか。むろん、最初は、言語能力が未熟な幼児や児童には、論理を習得するのは難しいのではないかという不安はあったそうです。

しかし、はじめてみると、これが大間違い。まっさらな脳ですから、子どもは何の抵抗もなく「論理」の習得を受け入れたのです。

「論理が訓練によって誰でも身につけることができるなら、幼児期にさっさと習得してしまいましょう。その後の知的生活が確実に違ってくるのですから」

幼児期こそ「論理」を学ぶのにふさわしい。これが出口さんがたどりついた結論でした。

●子どもの脳を育てる環境を作る

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出口さんは「脳を育てるのは環境次第」と言っています。教育には「教える教育」と「学ばせる教育」がありますが、今後重要なのは「学ばせる教育」です。

むろん、「学べ」と子どもに指示することではありません。そんなことをしても、子どもが学ぶわけはありません。大切なことは、子どもが自ら「論理」を発見する仕掛け、つまり環境を作ることなのです。

出口さんの経験では、ものを考えることができるような環境を作ってあげれば、子どもは「自分で考え、自分で発見し、自分で検証して、概念を獲得して、それを使って、さらに上の概念を発見」していくそうです。こうした作業を子ども自らが繰り返すことで、創造的な脳が育つわけです。

そのためには、答えを与えるのではなく、「なぜなんだろう」「これはなんだろう」と、親が一緒になって考えることが大切。ごはんを食べるとき「いただきますをするのはなぜなんだろう」と親子で考えたり、「この肉はどこからきたんだろう」と問いかけたりする。決して答えを急がないで子ども自ら考えてもらう。「教えるのではなく会話しましょう」と出口さん。子どもが自ら発見するよう、仕向ける仕掛けを常に作っておくことが、何よりも重要だそうです。

また、幼児期から始めるのにふさわしいこととして、漢字の習得の重要性も強調しています。幼い子どもは言葉を覚える天才ですから、漢字を覚えさせるのにもぴったりなんですね。

たとえば家で猫や犬を飼っていれば、「猫」「犬」と書いた紙を見せる。これで子どもは、「猫」を見れば「ネコ」を認識するし、「犬」を見れば「イヌ」とわかります。漢字は象形文字ですから、子どもはおもしろがって覚えてしまいます。漢字を覚えれば、語彙力が上がるだけではなく、文章の意味や概念を理解することにもつながります。

これは、親御さんの工夫次第でいくらでも家庭でできることですね。出口さんの経験では、小学校低学年までに、小学校6年で学ぶ漢字を読めるようにするのは、十分に可能だとのことです。

幼児や児童は、自分が受ける教育を自分で選ぶことができないだけに、幼児教育は親御さんの役割が大切になります。本書を1章から順番に読めば、言語を習得し、論理的に話したり論理的に文章を理解する能力がいかに大切なものかがよく理解できるでしょう。教育熱心な人、特に早期教育に興味のある親御さんに読んでいただきたい一冊だと思います。

『2歳から12歳の脳がグングン育つ! 論理の力』

『2歳から12歳の脳がグングン育つ! 論理の力』
出口汪(でぐち ひろし)著、水王舎刊、1300円+税
AIの実用化やロボットの普及で、社会が劇的に変わろうとしています。今の子どもたちが大学受験をしたり就職したりする頃には、多くの業種で人間が必要なくなるかもしれません。
新たな時代に適応できる人間を育てるためには教育も抜本的に変わらなければなりませんが、残念ながら、多くの学校や学習塾で行われている教育は旧態依然。相変わらず、詰め込み教育が続いています。
では、新しい時代に適応できる教育は、何なのか。それは「論理」の力を磨くこと。「論理」を身につけた子どもこそ、新しい時代に活躍できる人間であり、それは幼い時期に訓練すればするほど効果が上がる、というのが本書のテーマです。
本書では、なぜ「論理」が必要とされるのか、どうして幼児期に論理が必要なのか、論理を身につけるために家庭で何ができるのか、ひとつひとつ丁寧に解説しています。論理力要請の言語プログラム「論理エンジン」や、それを小学生用にアレンジしたプログラム「論理エンジンキッズ」を開発し、数々の成果上げてきた出口汪さん渾身のメッセージです。

著者の出口汪(でぐち ひろし)さん
1955年、東京都生まれ。『出口式みらい学習教室』代表、大学受験現代文の元祖カリスマ講師。現代文講師として予備校の大教室を満員にし、受験参考書がベストセラーになるほど圧倒的な支持を得る。著書累計数は1300万部以上。また、論理力を養成する画期的プログラム『論理エンジン』を開発し、多くの学校に採用されている。現在は受験界のみならず、大学・一般向けの講演や中学・高校教員の指導など、活動は多岐にわたっている。著書は『出口汪の「最強!」記憶術』『芥川・太宰に学ぶ 心をつかむ文章講座』『出口式 はじめての論理国語』(小1レベル~小6レベル)(以上水王舎)『出口汪の日本語トレーニング』(小学一年~六年、基礎編・習熟編・応用編。小学館刊)ほか多数。

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