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跡見学園中学校高等学校(以下、跡見学園)では、中学1年生から6年間を通して探究活動に取り組みます。地域や自然、人との出会いを重ねながら、自分の興味や関心を見つけ、自分らしい問いを育てていくのが特徴です。本記事では、広島・九州・沖縄から自らコースを選ぶ中学3年生のSDGs探究旅行を入り口に、高校1年生になった3名が、中学時代の探究をどのように今へつなげているのかを紹介します。

本物との出会いが自分の世界を広げる

H.K.さんの写真
H.K.さん

部活動/所属

かるた部/生徒進路係

入学理由

穏やかな校風と通学のしやすさに魅力を感じて入学

SDGs探究旅行

広島コース。厳島神社を訪れたかったことに加え、小学生の頃に原爆ドームを訪れた経験があり、改めて被爆の実相について学びたいと考えて選択

卒業探究テーマ

「集団同調バイアスはなぜ起こるのか」。国語の教科書で読んだ内容をきっかけに、身近な人間関係にも目を向けながら集団同調バイアスを研究

N.M.さんの写真
N.M.さん

部活動/所属

家庭部/ホームルーム副委員長

入学理由

伝統があり、気品や礼儀を大切にする校風や探究学習をはじめとする教育内容に魅力を感じて入学

SDGs探究旅行

沖縄コース。琉球王国の歴史や独自の文化、自然に触れ、本土との違いを知りたいと考えて選択

卒業探究テーマ

「聴覚コンテンツへの期待」。以前から親しんできたラジオに着目し、聴覚コンテンツの可能性について研究

A.H.さんの写真
A.H.さん

部活動/所属

科学部

入学理由

学校説明会での先輩たちの明るく楽しそうな雰囲気に憧れて入学

SDGs探究旅行

九州コース。広島・沖縄に比べてイメージが湧きにくかったのと、長崎の異国情緒あふれる街並みに興味があったので選択

卒業探究テーマ

「歴史に語り継がれる戦いから、人生の戦い方を学ぶ」。世界史への関心をもとに、歴史上の戦いから現代に生かせる教訓を考察

柴田智望先生の写真
柴田智望先生

高校1年学年主任。担当教科は生物。科学部顧問も務める。

6年間の探究活動を通して、生徒たちにどのような力を育んでほしいですか。

柴田先生の写真

柴田先生

生徒自身が「何に心が動くのか」を知ることです。将来、文系・理系の選択や進路を考えるときにも、自分の「好き」を見失わないでほしいと思っています。好きなものなら、自然ともっと知りたい、深めたいと思えます。その積み重ねが、自分の将来をプロデュースする力につながると考えています。

探究活動の一つである中3のSDGs探究旅行で、印象に残っていることを教えてください。

H.K.さんの写真

H.K.さん

今回改めて広島を訪れ、被爆に直接関わっていない人たちもその後の生活に大きな影響を受けていたことを知りました。「戦争の記憶を後世に伝えなければいけない」と聞くことはあっても、どこか遠くの出来事のように感じていましたが、語り部の方のお話を聞き、被爆建物を実際に見たことで、戦争を自分事として考えられるようになりました。

広島コースで訪れた平和記念公園の写真
広島コースで訪れた平和記念公園
N.M.さんの写真

N.M.さん

沖縄では、平和祈念公園にある平和の礎を見学しました。目の前には広大な青い海が広がり、静かな時間が流れていましたが、この場所で沖縄戦が行われたことを思うと胸が痛みました。観光地としての沖縄だけでなく、その歴史を語り継いでいかなければと感じました。
またサンゴ再生プログラムでは、サンゴを育てるための土台に苗をくくりつける作業を体験しました。沖縄の自然を守る取り組みを知り、「もっと知りたい」と思うことが増えたのは、大きな変化だったと思います。

A.H.さんの写真

A.H.さん

長崎では、80年以上前に幸せな日常が一瞬にして奪われた事実に大きな衝撃を受けました。阿蘇では民泊を通して、都会では味わえない自然の中での暮らしにも触れました。
もう一つ印象深かったのはスマートフォンを持たずに過ごしたことです。最初は不安でしたが、景色を眺めたり人と話したりする時間が増えて、普段どれだけスマートフォンに気を取られて身近なものを見逃していたのかに気づきました。今でもスマートフォンを少し遠くに置いて本を読んだり、移動中に景色を眺めたりしています。おかげで自分の世界が豊かになったように感じます。

九州コースの旅程冊子の写真
A.H.さんが阿蘇で撮影した写真。スマートフォンがないためフィルムカメラで撮影
九州コースの旅程冊子の写真
旅程冊子には訪問した場所についての課題も。各地を訪問しながら印象に残ったことや気づきを書き留めていった

自分を知り自分だけの問いを見つける

中学3年生の節目に行われるプレゼン三者面談は、生徒が自分自身を振り返り、保護者と担任に向けて現在地や将来について発表する機会です。そこから卒業探究へと進み、一人ひとりが自分だけの問いを深めていきます。

プレゼン三者面談では、どのような学びがありましたか。

H.K.さんの写真

H.K.さん

これまでの探究活動や学校生活を振り返りながら、自分の長所や短所について考えました。準備では母とたくさん話をしたのですが、自分では短所ばかりに目が向いていたのに、「こんな長所もあるよ」と言ってもらえてうれしかったです。
自分一人では気づかなかった一面を知ることができ、自分を客観的に見つめ直す機会になりました。当日は先生の前で緊張しましたが、事前に母と話していたことが自信につながり、落ち着いて発表できました。

柴田先生の写真

柴田先生

プレゼン三者面談は保護者にとっても、普段はなかなか聞けない子どもの考えを知る時間になっています。両親で参加されるご家庭も多く、親子で将来について共有する機会にもなっています。

三者面談の写真
スライドも使用しながら、本格的なプレゼンを行う三者面談

卒業探究では、生徒たちはどのようにテーマを見つけていくのでしょうか。

柴田先生の写真

柴田先生

「ワクワクすること」「モヤモヤすること」「こうなったらいいなと思うこと」を手掛かりに、これまでの探究活動や授業、日常生活を振り返りながら、自分のテーマを見つけていきます。生徒たちのテーマは毎年私の想像を超えてきます。一人ひとり興味関心が違うからこそ、個性豊かな探究になるのだと思います。

実際にどのようなテーマに取り組みましたか。

N.M.さんの写真

N.M.さん

私は「聴覚コンテンツへの期待」をテーマに、好きなラジオについて探究しました。ラジオの魅力を伝えたいと思って調べ始めたのですが、調べるほどに「どうすればその魅力を人に伝えられるのか」という新たな課題が見えてきました。
友人や家族に紹介して「聞いてみたい」と言ってもらえたときはうれしかったです。ただ、自分の好きなものの魅力を多くの人に伝えるには、もっと発信力が必要だとも感じました。

A.H.さんの写真

A.H.さん

私は世界史に関心があり、「歴史に語り継がれる戦いから、人生の戦い方を学ぶ」というテーマで探究しました。戦争は悲惨なものですが、それだけで終わらせるのではなく、現代に生かせる教訓を考えたかったのです。探究を通して、冷静さを保つことや、一つの道を信じて進む力が大切なのではないかと考えるようになりました。今は無理に進路を絞らず、さまざまな経験を重ねながら自分に合う道を探していきたいとも感じています。

探究が育てたそれぞれの成長

中学時代の探究活動を振り返って、自分が成長したと感じることを教えてください。

H.K.さんの写真

H.K.さん

跡見学園は振り返りを大切にする学校です。最初は体験したことの感想を書くことで精いっぱいでしたが、続けるうちに「なぜそう感じたのか」「そこから何を学んだのか」まで考えられるようになりました。振り返りを重ねることで、自分が何に関心を持ち、何を学んだのかを整理できるようになり、その後の探究にもつながってきたと感じます。発表の機会を重ねる中で話し方を工夫できるようになり、クラス代表も経験して自信がつきました。

N.M.さんの写真

N.M.さん

探究活動を通して、課題を自分事として考える力が身につきました。中学入学当初は人前で話すことも得意ではありませんでしたが、さまざまな経験を重ねる中で挑戦する意義を見つけられたと思います。高校でのキャリア探究DAYでは多文化共生をテーマに選びました。自分からは距離があると思っていた分野でも、実際に知ることで興味が広がるのだと感じました。

キャリア探究DAYの写真
多様なキャリアに触れるキャリア探究DAY
A.H.さんの写真

A.H.さん

跡見学園では、本物に触れる体験がたくさんあります。中学時代に経験したことは、高校生になった今でもよく思い出します。将来について考え始める時期だからこそ、その一つひとつの体験が、自分の経験として役立っていると感じています。

柴田先生の写真

柴田先生

これから入学する皆さんも、将来が今決まっている必要はありません。跡見学園にはたくさんの体験がありますので、未来につながる種もいくつか見つかるはずです。友人たちとの関わりでその種を育てあいながら、成長していってほしいと思います。

4人の写真

編集後記

取材を通して感じたのは、先生方が想定していた以上に、探究を通した学びが一人ひとりの中に大きく根を広げる学びになっている、ということでした。今回うかがったのは探究学習のごく一部ですが、テーマ選びや活動には、それぞれの「らしさ」がすでに表れていました。この先も探究を重ねながら、希望の進路実現に向けて着実に力を身につけていくことでしょう。