中学受験に有利な公立小に通う住まい選びとは?

inter-edu’s eye
首都圏では、中学受験をする生徒が多い公立小学校の学区に移り住む人々が増え、マンション価格に影響を与えるほどになっています。人気の学区は、住民平均の学歴も収入も高い地域でもあります。その現実をデータで明らかにし、教育と住まいの両立をはかる方法を伝授してくれる新書が発売されました!

◆子どもの教育を優先して家を選ぶ人が増えている

以前、マンション販売業者に「東大近くのマンションは、生まれてくる子が東大に入ることを願って購入する夫婦がいる」と聞いて驚いたことがありましたが、今回ご紹介する新書は、子どもの教育を優先して住まいを選ぶ人がどれくらいいるのか、本当のところを教えてくれます。

タイトルは、『マンションは学区で選びなさい』。著者は不動産コンサルタントの沖有人さん。沖さんはご自身が経営する会社で不動産のビックデータによる調査・コンサルティングをしていて、本書では、公立の小中学校の学区とそこに住む人たちとの関係を詳細にレポートしておられます。

教育熱心な親御さんの間では、「公立小移民」という言葉は常識なのでしょうか。つまり中学受験に有利な小学校のある地域に移民する=引っ越すということ。著者の沖さんご自身もそのひとりであると、本書の「はじめに」に書いていらっしゃいます。お子さまの小学校入学を前に、教育環境を考えて東京文京区に移られたのだそうです。

◆中学受験率の高い地域に高学歴・高収入世帯が集中

マンションは学区で選びなさい,小学館新書

本書の構成は以下のとおりです。

第1章 なぜ今、「学区」が重要なのか
第2章 学区と年収の相関関係
第3章 子育て世帯の住まい10年計画
第4章 お金を生むマンション「7つの法則」
第5章 住宅ローンとお金の話


第1章の冒頭で、著者は「自宅選びは公立小学校選びでもある」とし、高学歴な親ほど子どもに中学受験をさせていること、そのために中学受験率の高い公立小学校のある学区に住むことを希望していることを指摘しています。これは単なる口コミや噂ではありません。国勢調査などの調査データや著者が運営するサイト(住まいサーフィン)での調査から明確にわかることであり、それが不動産価格にも影響を与えているというのです。

本書に掲載されている「東京都の市区別親の最終学歴ランキングと子どもの中学受験進学率、平均世帯年収」の表を見ると、最終学歴(大学・大学院卒の比率)、中学受験進学率、平均世帯年収は多くの場合連動しています。

たとえば中学受験進学率は、高いほうから千代田区、港区、中央区、文京区が40%以上、目黒区、世田谷区、渋谷区、新宿区が30%以上。これは実際に進学した率なので受験率はもっと高くなります。中には、著者の沖さんが選んだ小学校のように、中学受験率90%以上という学校も出てくるわけです。

第2章には、東京23区内の公立小学校の学区別平均世帯年収ランキングが3位まで紹介されています。たとえば東京千代田区のランキング1位、番町小学校の学区平均世帯年収は1151万円です。港区、中央区、品川区、渋谷区、大田区、世田谷区の1位校学区の年収も1000万円以上。そして新宿区、文京区、台東区、目黒区、杉並区、葛飾区は900万円以上。一番低い荒川区でも1位校は約750万円でその他の区は800万円以上。区による違いもありますが、同じ区内でも学区による違いが相当あります。ここには、新築70㎡マンションの相場価格ものっているので、マンション購入の際の参考にもなります。

加えて東京都下、神奈川県、千葉県、埼玉県の各地域ごとの学区平均世帯年収1位の公立小学校も掲載されています。それぞれに学区平均世帯年収800万円以上という小学校が多数あります。日本の平均世帯年収は500万円台ですから、平均よりずいぶん豊かな人々が集中しているということです。

住民が高収入で高学歴、中学受験率が高い地域には、教育熱心な親御さんが多いでしょうし塾に通う子も多くなる。そうなれば小学校の雰囲気も自ずと影響を受け、そこに通う子どもも塾通いや受験に抵抗感がなくなる。「がんばって勉強して、いい大学に入ってほしい」という親心が、何も言わなくても子どもに伝わるようなものだと言えるでしょう。

◆教育か住まいかではなく、両立を考えよう

さて、本書の第3章以降は、「公立小移民」に共感する親御さんたちへの、住まい選びのアドバイスです。第2章まででみたように、教育熱心な人々が住む地域は人気が高く不動産価格も高い。でも、だから無理とあきらめるのは早計で、不動産価格が高いということは資産価値も高いということ。そこに目をつけて、良好な教育環境と住まいの両立をはかるノウハウを伝授してくれます。

これまで常識と思われていたことが、実は違ったということも多々あります。今、住まいについて検討している最中なら、ぜひ読んでみてください。マンションはもちろん戸建てを考えている方でも、とても参考になると思います。

最後に、一番心に残った一節をご紹介したいと思います。

住まいを選ぶ際に、必ず守らなければならないことがある。
それは、「自分の力では変えられないことを選ぶ」ということだ。
(第3章、P115)

自分の力では変えられないこととは、町の状況や環境、周辺の建築計画やマンションなら管理状態などです。逆に自分で変えられることとは家の内装や設備など。住まい選びでは、ついモデルルームや豪華な設備に心が動かされますが、そうしたことは確かに後で自分で変えることができる可能性があります。

人生のうちで、おそらくは一番高い買い物である住まいを決断するときには、自分だけではどうにもならないことを優先し、それをあきらめるのではなく少しでも改善する方向で対処するのが賢いやり方ですね。その最たるものが子どもの教育。そう考えると、「公立小移民」というのは、とても賢い選択だと言えるでしょう。

マンションは学区で選びなさい

マンションは学区で選びなさい
沖 有人、小学館新書、780円+税

学区と年収と優良マンションの深い関係。「公立小移民」という言葉を知っているだろうか。人気公立小学校の学区に引っ越す家族のことを指し、子どもによりよい教育環境を与えたい「孟母三遷(もうぼさんせん)」な親ならではの選択といえる。これまで人気学区は口コミに頼る部分が多かったが、「学区と年収」という新たな指標を与えるのが本書である。例えば東京23区でいえば、学区世帯年収トップは以下の通り。1位:港区立南山小学校1409万円、2位:千代田区立番町小学校1151万円、3位:渋谷区神宮前小学校1067万円。1都3県(東京都、神奈川、埼玉、千葉)の学区年収上位校の解説が本書でなされている。さらに、人気学区のマンションは多くの場合、需要が供給を常に上回るため資産性が担保される。”人気学区ほど資産性が高くなるマンション格差の法則”が成り立つのだ。ベストセラー『マンションは10年で買い替えなさい』の著者が贈る人口減少社会を生き抜く新時代の住まい選びに役立つ一冊! …購入はこちらから

沖 有人

著者の沖 有人(おき ゆうじん)さん
1988年慶應義塾大学経済学部卒業。コンサルティング会社などを経て、98年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現在のスタイルアクト株式会社)を設立、代表取締役に就任。住宅分野において、マーケティング・統計・ITを統合し、日本最大級の不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティングを得意とする。住まい情報サイト「住まいサーフィン」(会員数20万人)を運営。『経営者の手取り収入を3倍にする不動産戦略』(日経BP社)、『マンションは10年で買い変えなさい』(朝日新書)など著書多数。住まいサーフィンはこちら