麻布の先生が作った「読解力」をつけるパズル

inter-edu’s eye
新学習指導要領の中核とされている「読解力」。思考力、表現力を養う上で必須の能力であり、国語だけでなくあらゆる科目の成績を左右します。しかし「読解力」を育てるのに学校や塾では限界があり、家庭での言語教育が重要になると言われています。そんな折、『本物の読解力をつけることばパズル』が発売されました。著者は麻布の国語科教諭・中島克治先生です。

◆遊び感覚で「読解力」を伸ばすパズル

「本物の読解力をつけることばパズル 中島克治著

以前ご紹介した『本物の国語力をつけることばパズル』の著者、麻布中学・高校国語科教諭の中島克治先生が、読解力・思考力・表現力を育てるパズルを発表されました。『本物の読解力をつけることばパズル』の「入門編」と「初級編」です。先の国語力をつけるパズルは入門編・初級編・中級編の3冊が発売されており、今回の読解力をつけるパズルも、入門編と初級編がこの2月に発売、6月に中級編が発売予定です。

パズルの体裁は、シンプルな装丁で縦開き。中身のパズルも文字が大きく余白たっぷり。入門編に10級から7級、初級編に6級から4級の認定証がついていて、低学年でも謎解きのように楽しく取り組めるスタイルです。

パズルの特徴は、「既刊の『本物の国語力をつけることばパズル』は語彙力中心でしたが、 新刊の『本物の読解力をつけることばパズル』では、読解力アップのための文章読解、資料の読み込みなど思考力をつける内容を増やしており、2020年からの新学習指導要領に対応したものになっています。」(担当編集の中西彩子さん)とのこと。

机上の勉強に取り入れるよりも、余裕があるときにちょっとやってみたら?と勧めるのがよさそうです。お子さまの読解力がどの程度なのかの判断基準になるし、進級を目標に面白がってやり始めてくれたら自然と読解力がついていきます。

◆「読解力」は、家庭での言語生活がカギ

表紙裏に「おうちの方へ」という著者の中島先生からのメッセージがあります。それによると、麻布の生徒たちの豊かな思考力・発信力の源泉は、小さいころからいろいろな本を与えられ、家庭内でその読後感を共有することで言語感覚が磨かれてきたところにあるのだそうです。

国語力が、学校や塾での勉強時間だけで身につくものではないことは、誰にでもわかります。国語力の土台は、幼少期から生活の中で聞いたり話したりしてきた体験です。そこから考える力が育まれ、自分自身のことや自分の意見を表現する力が育つのですから、土台が貧しければ育つ能力も貧しくなりかねません。語彙力や読解力などの国語力が、他の科目の学力以上に日常の言語生活の質に左右されることは明らかでしょう。

とはいえ、わが家に豊かな言語生活があるのかとふりかえってみても、他の家庭と比べるわけにもいかないし、あまりに日常的すぎてよくわからない、自信がない、という親御さんが多いのではないでしょうか。そんなとき、このパズルが手元にあると、とても役に立つと思います。

本書は、巻末に「答え」が掲載されていますが、中には明らかな「答え」がないパズルもあります。そこには、「どんな答えを書いても、叱らないようにしてください」とか、「考える姿勢があるなら褒めてあげてください」といったメッセージがのっていました。なんだか親の向き合い方も教えられているように感じました。

◆「暗記力」の時代は終わり「読解力」の時代に

ご存じの方も多いと思いますが、来年、2020年に施行される新学習指導要領の中核は、「読解力」です。「読解力」は、小・中・高全体で触れられており、大学受験も思考力、読解力に重きを置かれることが予想されています。中学受験では、すでに多くの学校が記述式の問題やどんなことを考えたかと意見を問う問題を取り入れています。

この傾向は、国語だけにとどまりません。あらゆる科目で、文章を正しく理解すること、そこから要旨や問題点を見いだすこと、そして自分の意見を述べること、つまり文章で表現する能力までが必要とされてきています。

PISA(文末の注参照)の定義によると、読解力とは、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力。」とのこと。文章を正確に理解するだけでは不十分なのです。

にもかかわらず、こんな流れに逆行するような状況が一部に見られます。
「一生懸命勉強しているのに、あるときパタッと成績が伸びなくなる子がいます。前に教わった解き方を覚えていて、それに似ている問題だから同じ解き方で答えを出している子どもです。こういう子は問題の意味は理解していません。ただ解法のパターンを覚えているだけです。だから高学年になって解法のパターンが増えてくるともう覚えきれなってしまいます。こうなると、難関校・最難関校の記述式問題などは対策不能。低・中学年からたくさんの問題をやらされすぎると、こんなクセがついてしまうことがあるのです。」(塾講師Aさん)

中学受験熱が高まるにつれ、このような傾向の小学生が増えているようです。そのため、心ある塾講師や家庭教師の方々は、受験の前段階である低学年期の家庭教育に焦点を当てたメッセージを発信するようになってきています。

ひたすら知識を覚える暗記型学習の時代は完全に終わりました。解き方を暗記するのではなく、文章を正確に、しかも深く理解すること。自分で考えて、考えたことを表現すること。こうした能力こそが求められています。問題の解答のしかたにも、ひとりひとり違いがあるのが当たり前の時代になったのです。『本物の読解力をつけることばパズル』は、そんな時代の変化を教えてくれているようにも感じました。ぜひ手にとってみてください。

※注:PISAとは、OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に3年ごとに実施される15歳児の学習到達度調査のこと。定義は、文科省HPより引用。引用元はこちら

本物の読解力をつけることばパズル 入門編・初級編 中島克治

本物の読解力をつけることばパズル 入門編
本物の読解力をつけることばパズル 初級編
中島克治著、小学館刊、各650円+税

思考力、読解力をぐんぐん伸ばすドリル。国語教育で定評のある麻布中学校・高等学校の国語科教諭による小学生のための読解力をつけるドリルです。姉妹版『本物の国語力をつけることばパズル』で語彙力をしっかりつけ、『本物の読解力をつけることばパズル』で思考力、読解力を伸ばしましょう!
本書の特徴は、○思考力がつく、○自分の言葉で考えを表現する力がつく、○他者の気持ちを察し、言葉を通じて伝え合う力がつくこと。
この年齢のお子さんは、月齢や生活環境など個人差が大きい時期のため、あえて学年別にしていませんが、思考力、言葉の力が自然につくように、取り組みやすい問題から順に並べています。入学前後から学べるように、全ての漢字にふりがな付き。シンプルなデザイン、かわいいイラスト、級ごとの認定証など、難しい「お勉強」ではなく、お子さんが楽しく学べるよう工夫してあります。身近なできごとを通して自分ならどうするかを考え、他者とのつながりを学べる問題、図表や資料を読み取る力を伸ばす問題などで構成。お子さんの可能性を伸ばすために、最適な一冊です。…購入はこちらから

中島克治

著者の中島克治(なかじま かつじ)先生
1962年生まれ。麻布中学・高校を経て、東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程に進んだ後、麻布中学・高校国語教諭となる。著書に、『小学生のための読解力をつける魔法の本棚』『中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚』『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』『本物の国語力をつけることばパズル』(いずれも小学館)などがある。一女の父。


中学受験・子育てをよりわかりやすくサポート!エデュナビはリニューアルいたしました!

エデュナビから皆さまへ

いつもエデュナビをご覧いただきありがとうございます。
この度「エデュナビ」は、リニューアルいたしました。

URLが変更になっているので、ブックマークやお気に入りの変更をお願いいたします。
これからも、皆さまの受験や子育てをサポートできるよう、コンテンツの充実とサービスの向上に努めてまいります。

エデュママブック これまでの記事