東大の推薦入試はハードルが高いだけなのか?
inter-edu’s eye
「あの東大がついに推薦入試を導入」。この話題は東大を目指す受験生だけでなく、教育業界にも大きな衝撃を与えました。その推薦入試も今年で3年目になり、2018年度の合格者数も公表されました。今回は東大の推薦入試をこれから目指す親御さんが知っておきたいこと、そして何を考えるべきなのかを見ていきましょう。
東大の推薦入試はなぜ衝撃を与えたのか?
まず、東大の推薦入試がなぜ受験生や教育業界に大きな衝撃を与えたのかを見ていきましょう。東大は2016年度から、「後期日程」の代わりに推薦入試を導入。後期日程の廃止は難関大学になればなるほど話題になりますが、実は後期日程の廃止自体は近年よく見られることです。
例えば2017年度入試では大阪大学、2018年度からは一橋大学の法学部・社会学部で廃止。さらに全国的に後期日程の実施は廃止・縮小傾向にあります。では一体何が衝撃を与えたのかというと「ハードルの高さ」にあります。
東大の推薦入試は提出書類・資料、面接、大学入試センター試験の成績(8割以上の得点が目安)で合否判定を行いますが、提出書類や資料には「数学オリンピックなどの科学オリンピックで顕著な成績をあげた者」、「全国レベルの大会・コンクールでの入賞記録」など、学業はもちろん何らかの分野で優秀な成績も必要になってきます。それに加え、各高校の校長の推薦が必要になりますが、各高校男女1名ずつまでと、出願するだけで非常に狭き門となっています。
そのため、初年度では志願者数が募集人員に満たない「定員割れ」。さらに募集人員より合格者数が少ないという事態が起こりました。この傾向は昨年度も見られましたが、3年目の今年はどうなったのか、次にこちらを見ていきましょう。
依然変わらぬ受験生にとっての厳しい現実
東大推薦入試合格者の推移
学部名 | 募集人員 | 2016年度合格者数 (志願者数) |
2017年度合格者数 (志願者数) |
2018年度合格者数 (志願者数) |
---|---|---|---|---|
法学部 | 10人程度 | 14(24) | 13(25) | 11(26) |
経済学部 | 10人程度 | 4(7) | 3(14) | 4(10) |
文学部 | 10人程度 | 3(10) | 4(13) | 5(18) |
教育学部 | 5人程度 | 4(9) | 5(6) | 6(11) |
教養学部 | 5人程度 | 2(17) | 1(24) | 5(24) |
工学部 | 30人程度 | 24(47) | 23(42) | 16(43) |
理学部 | 10人程度 | 11(32) | 10(25) | 10(24) |
農学部 | 10人程度 | 9(12) | 7(11) | 7(11) |
薬学部 | 5人程度 | 3(4) | 2(3) | 3(6) |
医学部医学科 | 3人程度 | 2(9) | 2(8) | 2(5) |
医学部健康総合科学科 | 2人程度 | 1(2) | 1(2) | 0(1) |
※東京大学「2016年度、2017年度、2018年度東京大学推薦入試合格者数」を参考にインターエデュにて作成
上記の表は学部ごとの募集人員、2016年度から2018年度までの合格者数をまとめた表です。先ほどお話した定員割れを起こしている学部は、2016年度では11学部中2学部、2017年度は11学部中1学部、そして2018年度も11学部中1学部。そして募集人員より合格者数が少ないのは2016年度では11学部中9学部、2017年度は11学部中8学部、そして2018年度も11学部中7学部と年度により差はありますが、受験生にとっては厳しい結果となっています。これは出願時には要件を満たしていたが、推薦入試を行なったうえで東大側が求める人物像に満たされていなかったととらえることができます。
厳しいだけではない推薦入試のメリット
ここまで見ると、推薦入試は高すぎるハードルに見えますが、一般入試の倍率が3~4倍であるのに対し、推薦入試は最大でも3倍。例え推薦入試で不合格だったとしても、一般入試に再チャレンジできるなどのメリットもあります。
また推薦入試の場合、一般入試とは違い、合格時に学部が決まります。どういうことかというと一般入試で合格した場合、類型(文I、文II、理Iなど)で入学した後に、成績に基づき3年次に進学振分けされますが、推薦入試の場合、教育学部を受験し合格すれば教育学部に入学が決まります。
さらに、特別な許可に基づいて、前期課程(1・2年生)で後期課程(3・4年生)の授業を、後期課程で大学院の授業を履修できます。人気の高い学部・学科に進みたい場合には、入学後も厳しい競争がありますが、推薦入試合格者であれば1年次からやりたい勉強や研究をすることができることになります。
合格する人は当然明確な目標を持っていることになりますが、このいわば「飛び級」のような制度は将来やりたいことがしっかり決まっている受験生にとっては、ハードルは高いが大きなメリットがあるといえるのではないでしょうか。
親御さんと受験生が考えたいこと
もしお子さまに東大の推薦入試で合格させたい!と思っている親御さんがいるならば、「合格までの長期的な計画を立て、結果を出すこと」が必要になってきます。先ほどお話した通り、推薦入試に出願するためには何らかの分野で優秀な成績を収めた実績が重要になります。全国レベルの大会であれば、「これをたくさん練習して、いつまでにこれに出場して結果を出す」という風に長期的な計画を立てることが必要になってきます。合格するためには「これが好き!」だけでは難しい現実があります。
そして受験生が考えたいのは、「希望学部の理解と強い意欲」です。ここからはあくまで推測になりますが、推薦入試に出願することができるのは、優秀な成績を残している人ばかりです。その中で合格できる人は、大学入学後、その学部で何を学べるのかをしっかり理解し、今の成績からさらに飛躍し「これを学びたい」という学問・研究に対する意欲を持っている受験生だと思います。
最後になりますが、先ほど親御さんが考えたいこととして、「合格までの長期的な計画を立て、結果を出すこと」を挙げましたが、お子さまにとって残るのは結果だけではありません。例えば科学オリンピックに出場した場合、上に行けば行くほど優秀な人が残ります。そこでの出会いは、今後の生き方や考え方に大きな影響を必ず与えてくれます。そこでの経験を踏まえたうえで、将来どうすればいいのかは本人が決めればいいのではないでしょうか。
エデュナビでは、教育・受験に関するお悩み・ご意見を募集します!
日頃感じる疑問などをお寄せください。コンテンツ作りの参考にさせていだきます。
メールアドレス:edunavi-contact@inter-edu.com
※@マーク以下は小文字にしてください。またメールの返信はいたしませんので、ご了承ください。
また記事への感想もお待ちしております!
いつもエデュナビをご覧いただきありがとうございます。
この度「エデュナビ」は、リニューアルいたしました。
URLが変更になっているので、ブックマークやお気に入りの変更をお願いいたします。
これからも、皆さまの受験や子育てをサポートできるよう、コンテンツの充実とサービスの向上に努めてまいります。