将来の選択肢が広がる学部合同説明会
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少子化で国力が落ちる一方の日本。
何とか踏ん張らないと、将来的にはBIの原資すら危うくなるかもしれません。
理系人材であれば、場合によっては海外企業への転職という選択肢もありますが、事務職の余剰を考えると…
これまでの議論で、文系の「イコール思考」と見える空間経済学さんの主張を整理すると、次のようになります。
① 海外の基盤モデルに依存する構造
② 「日本はGoogleの手足になることくらいしかできない」との発言
③ その代替として「川下の妄想産業(アニメ・娯楽)」
④ 一方で、日本のエッジAI・周辺機器の技術力については「それが日本の道なら」と評価
⑤ 「クラウド=高次、エッジ=低次」という話が、そのまま日本の産業ポジション論に接続している
この①〜⑤について、本当にそうなのか。
理系・技術的な視点から考えてみたいと思います。
日本には、
- 製造現場の大量のデータ
- センサー・画像認識
- 組込み・制御技術
- 産業用ロボット
- アクチュエータ・モーター
- 半導体・製造装置
- 自動車・工作機械
- 現場の暗黙知
など、フィジカルAIにつながる技術・産業基盤があります。
また、国のAI戦略では、巨大な汎用モデルだけでなく、業界・用途に特化したAIやPhysical AI、製造現場のデータ活用も重要なテーマになっています。
では、こうした方向性を日本が持つ既存の技術・産業基盤と、どのように結びつけていけるのか。
実際の技術構造と産業構造から、日本のフィジカルAI戦略を考えてみたいと思います。
理系・技術系の知識や経験をお持ちの方から、具体的な技術、データ、試算を踏まえた意見を歓迎します。
⑯ フィジカルAIの研究開発基盤をどう構築するか
フィジカルAI時代に日本が競争力を持つためには、人材だけでなく、研究開発を支える計算資源とデータ基盤も必要になります。
特に重要なのが、
計算資源 × データ × AIモデル × 実証環境
です。
例えば大規模AIの開発には、大量のGPUと電力を必要とする計算基盤が不可欠です。
日本では、産総研の「ABCI」がその役割の一つを担っており、2025年にはABCI 3.0の運用が開始されました。
ABCI 3.0は、生成AIだけでなく、実世界から取得される画像・音響・3次元点群などのデータを利用したフィジカル領域の基盤モデル開発も想定しています。
さらに、フィジカルAIでは、インターネット上のテキストデータだけでは十分ではありません。
ロボットや工場、自動車などの現実世界から、
画像
→ センサーデータ
→ 動作データ
→ 力覚・触覚
→ 作業結果
→ 異常・失敗データ
などを取得する必要があります。
つまり、
データを集める
→ AIを学習させる
→ シミュレーション・実機で検証する
→ 現場に投入する
→ 新しいデータを取得する
という循環を作ることが重要になります。
実際、産総研ではロボット基盤モデルの研究開発に向けて、ABCIなどの計算資源だけでなく、データ収集のためのロボット実験環境や、実世界・シミュレーション環境での学習・検証基盤も整備しています。
さらに政府の2026年度の研究開発計画を見ると、製造業データのAI-Ready化、ロボット基盤モデル、触覚・動作統合型フィジカルAI、データエコシステムなどが具体的な研究開発項目として位置づけられています。
これは重要なポイントです。
フィジカルAIでは、
「優れたAIモデルを作れば終わり」
ではありません。
むしろ、
計算資源+現実世界のデータ+ロボット・製造設備+実証環境+AIモデル
を一体化し、継続的に改善できる研究開発基盤が必要です。
そして、この基盤を国内に持つことには大きな意味があります。
海外の基盤モデルを利用する場合でも、日本国内に、
計算資源 → データ → 実証環境 → 産業現場
という研究開発の循環があれば、日本独自の技術やデータを蓄積できます。
逆に、計算資源もデータも実証環境も海外に依存すれば、日本企業は海外で作られたAIを「利用する側」に固定される可能性があります。
したがって、日本の国家戦略として重要なのは、
「国産LLMを作るかどうか」だけではなく、フィジカルAIを研究・学習・実証・改善できる基盤を国内に構築すること
ではないでしょうか。
そして次に重要になるのが、
この研究開発基盤を、どうやって実際の企業・工場・物流現場・ロボットへつなぎ、産業として量産・普及させるのか。
という問題です。
⑰ 実証から量産まで、国内でどう産業化するか
⑯では、フィジカルAIの研究開発を支える、
計算資源 × データ × AIモデル × 実証環境
という基盤について考えました。
しかし、研究開発に成功しただけでは、産業競争力にはつながりません。
重要なのは、
研究開発
→ 実証
→ 現場導入
→ データ取得
→ 改良
→ 製品化
→ 量産
→ 普及
というサイクルを、どこまで国内で回せるかです。
フィジカルAIでは、ソフトウェアのようにモデルを完成させて配布すれば終わり、とはいきません。
実際の工場や物流現場などにロボットを導入し、
「本当に現場で使えるのか」
「安全に動くのか」
「どのようなデータが得られるのか」
「どこを改善すべきなのか」
を検証する必要があります。
そのため、実証環境そのものが重要な産業基盤になります。
産総研でも、製造・物流・小売などの現場を想定した環境でロボット基盤モデルの実証を進めています。さらに2026年には、製造データとAIをつなぐ「製造AX拠点」を始動させ、実機・実プロセスによる検証・実装を行うテストベッドとしての役割も持たせています。
そして、実証の次に必要になるのが量産化です。
フィジカルAIでは、
AIモデル+センサー+半導体+モーター+減速機+アクチュエータ+ロボット本体+制御システム
など、多数の技術を組み合わせて製品にする必要があります。
そのためには、ロボットメーカーだけではなく、
部品メーカー × AI企業 × SIer × 製造企業 × ユーザー企業
が連携できるサプライチェーンが必要になります。
経済産業省も、ロボットメーカー、部品メーカー、SIerなどが連携し、機能モジュールやインターフェース、データ形式、安全性などの標準化・共通化を進め、汎用性・拡張性の高い供給基盤を構築する方向を示しています。
さらに重要なのが最初の需要です。
新しいフィジカルAI製品は、最初から大量に売れるわけではありません。
そこで、
実証
→ 初期導入
→ 導入実績
→ 信頼性向上
→ コスト低下
→ 量産
→ さらなる普及
という流れを作る必要があります。
政府も、官需や大口需要家による継続調達などを活用し、初期市場を形成する「アンカーテナンシー」の考え方をAIロボティクス戦略に盛り込んでいます。
これは、単に政府がロボットを買うという話ではありません。
最初の需要を作る
→ 企業が量産投資できる
→ 生産量が増える
→ コストが下がる
→ 民間市場が拡大する
という産業化の循環を作ることが目的です。
そして、ここで日本の既存産業基盤が効いてきます。
日本にはすでに、
産業用ロボット
工作機械
FA
センサー
モーター
減速機
自動車
製造装置
部品産業
などのサプライチェーンがあります。
経産省も、日本は産業用ロボット市場で世界シェア約7割を持ち、主要部品でも高い競争力を持つと評価しています。
つまり、日本にとって重要なのは、フィジカルAI産業をゼロから作ることではありません。
既存の「モノづくり」の産業基盤にAIを組み込み、研究開発から実証、量産、普及までを一つの循環につなげること
です。
ここまでできれば、
研究開発だけ日本
→ 製品化は海外
→ 量産も海外
→ 日本は輸入して使うだけ
という構造を避けることができます。
逆に、
研究
→ 実証
→ データ
→ 改良
→ 製品化
→ 量産
→ 導入
→ 再びデータ
という循環を国内に構築できれば、フィジカルAIそのものが日本の新しい産業基盤になっていく可能性があります。
したがって、国家戦略として重要なのは、
「AIを開発できるか」
だけではありません。
「AIを現場で実証し、製品にし、量産し、世界市場へ展開できるか」
です。
では、その次に重要になるのが、
その製品や技術を世界市場で普及させるために、日本はどのような標準・プラットフォーム戦略を取るべきなのか。
という問題です。
⑱ 標準化・プラットフォーム戦略をどう考えるか
⑰では、研究開発から実証、量産、普及までを国内でつなげることの重要性を見てきました。
しかし、産業競争力を考えるうえでは、もう一つ重要な問題があります。
それが、
「誰が標準とプラットフォームを握るのか」
という問題です。
フィジカルAIでは、一社だけですべてを作ることはできません。
ロボットメーカー、AI企業、半導体メーカー、センサーメーカー、部品メーカー、SIer、製造企業など、さまざまな企業が関わります。
そこで重要になるのが、
インターフェース
データ形式
通信方式
安全基準
機能モジュール
ソフトウェア
などの標準化です。
例えば、ロボットの各部品やAIシステムが共通のインターフェースで接続できれば、特定メーカーの部品だけに依存する必要がなくなり、複数企業が参加できる市場を作ることができます。
経済産業省のAIロボティクス戦略でも、ロボットメーカー、部品メーカー、SIerなどが連携し、機能モジュール、コンポーネント、インターフェース、データ形式、安全論証などの標準化・共通化を進める方針が示されています。
これは単なる「便利な規格を作る」という話ではありません。
標準を押さえることは、
市場の参加条件を作る
ことにもつながります。
例えば、
共通インターフェース
→ 多くの企業が参加
→ 部品・ソフトウェアが増える
→ 利用企業が増える
→ 市場が拡大する
という循環を作ることができます。
逆に、海外企業が事実上の標準やプラットフォームを握れば、日本企業はそのルールに合わせて製品を供給する側になる可能性があります。
つまり、
技術では勝っているのに、標準やプラットフォームを海外に握られて利益を取れない
という、これまで日本が経験してきた問題を、フィジカルAIでも繰り返す可能性があります。
経済産業省も2026年の政策資料で、標準化・ルール形成を市場創出の手段として位置づけ、「技術で勝ってビジネスで負ける」状況を解消する必要性を指摘しています。
さらにフィジカルAIでは、標準化の対象はロボット本体だけではありません。
例えば、
ロボット×建物×エレベーター×物流設備×工場設備×AIシステム
を連携させるための「ロボットフレンドリー」な環境も必要になります。
日本ではすでに、ロボットとエレベーターなどの設備を連携させるインターフェース規格の整備が進められています。
つまり、フィジカルAIの標準化は、
ロボット単体の規格
ではなく、
AIと現実世界をつなぐ「接続ルール」そのもの
を考える必要があります。
そして、ここからさらに重要になるのがプラットフォームです。
標準化によって多くの企業が接続できるようになったとして、その上で、
データ
→ AIモデル
→ アプリケーション
→ ロボット
→ 現場
をつなぐプラットフォームを誰が提供するのか。
ここを握れば、単に一つの製品を販売する以上の価値を持つ可能性があります。
例えばスマートフォンでは、端末メーカーだけでなく、OSやアプリストアなどのプラットフォームが大きな価値を持っています。
フィジカルAIでも、
ロボットOS+AIモデル+データ基盤+開発環境+アプリケーション
という形のプラットフォームが形成される可能性があります。
だからこそ、日本が目指すべきなのは、すべてを国産化することだけではありません。
重要なのは、
「どこを国内で押さえるべきか」
を戦略的に考えることです。
基盤モデルそのものでは海外企業と連携しても、
日本の産業データ+現場システム+エッジ技術+ロボット・製造設備+標準・インターフェース
を国内で強く持つ。
そして、それらをつなぐプラットフォームを日本企業が構築できれば、海外のAI技術を利用しながらも、日本独自の産業エコシステムを形成できます。
つまり、
「すべて国産にする」
ことと、
「何も持たず海外のプラットフォームを利用する」
ことの間には、非常に大きな戦略的選択肢があります。
フィジカルAI時代に重要なのは、
どの技術を作るか
だけではありません。
どの標準を作るのか。
どのインターフェースを握るのか。
どのデータを蓄積するのか。
どのプラットフォームを構築するのか。
まで含めて考える必要があります。
そして、ここまで考えると、次の問題が見えてきます。
では、米国・中国がそれぞれどの領域を押さえようとしているのか。
そして、
その中で日本は、どこで勝負するのが最も現実的なのか。
次は、米中との競争という視点から考えてみたいと思います。
⑲ 前編 米中との競争で、日本は何を狙うべきか
ここまで、フィジカルAIに必要な技術、人材、データ、研究開発基盤、量産、標準化、プラットフォームについて見てきました。
では、米国・中国との競争の中で、日本はどこを狙うべきなのでしょうか。
まず重要なのは、
「米国に勝つか、中国に勝つか」
という単純な二択で考えないことです。
米国には、
・巨大なAI企業
・基盤モデル
・クラウド
・AI半導体
・ソフトウェア
・豊富なスタートアップと投資資金
などの強みがあります。
一方、中国には、
・巨大な製造基盤
・ロボットの量産能力
・部品・サプライチェーン
・大規模な国内市場
・実世界の産業データ
・政府による産業政策
などの強みがあります。
つまり、米中ともに、
AIモデルだけではなく、AI × ロボット × 製造 × データ
という産業システム全体を競争領域として見ています。
では、日本はどうするべきでしょうか。
日本が米国と同じように、巨大な基盤モデル企業を一から作ることだけを目指す必要があるでしょうか。
あるいは、中国と同じように、圧倒的な量産規模だけで競争するべきでしょうか。
私は、必ずしもそうではないと考えます。
日本には、日本独自の強みがあります。
センサー+制御+産業用ロボット+工作機械+FA+自動車+製造装置+製造現場のデータ
です。
そして重要なのは、これらを「AIとは別の産業」として扱うのではなく、
AIと組み合わせること
です。
経済産業省のAIロボティクス戦略でも、今後の競争軸はAIモデル単体の性能だけではなく、コンピューティング、制御系、駆動系、知覚系などを組み合わせる「統合力・運用力」へ移っていくとされています。
さらに日本について、AIロボティクス分野で米中に並ぶ「第三極」を目指し、2040年に世界シェア3割超、20兆円市場の獲得を目標として掲げています。
ここは非常に重要です。
日本が狙うべきなのは、
「世界最高性能のLLMを日本だけで作る」
という一点突破だけではなく、
「AIを現実世界で動かすための産業システムで、世界的なポジションを取る」
ことではないでしょうか。
例えば、
基盤モデル
→ 国内外の優れたモデルを柔軟に活用
産業データ
→ 日本の製造現場・自動車・ロボットなどから蓄積
Vertical AI
→ 日本の各産業に特化
エッジAI
→ センサー・認識・リアルタイム判断
制御
→ 日本が強みを持つFA・ロボット技術
ハードウェア
→ ロボット・自動車・工作機械・製造設備
という形で、それぞれの強みをつなげることができます。
もちろん、これは、
「日本はソフトウェアをやらなくていい」
という意味ではありません。
むしろ逆です。
日本のハードウェア・製造技術にAIを組み込むためには、
AIモデル+データ基盤+シミュレーション+エッジAI+制御ソフトウェア+アプリケーション
まで強化する必要があります。
つまり、
ハードかソフトか
ではなく、
ハード × ソフト × データ
を一体化することが重要になります。
日本が米中と同じ土俵で全方位に競争するのではなく、
日本がすでに持っている産業基盤にAIを組み込み、そこから世界市場へ展開する。
これが、日本が狙うべき一つの現実的なポジションではないでしょうか。
では、日本はその強みを国内だけで完結させるのでしょうか。
それとも、世界市場へ展開し、産業システムそのものを海外へ広げていくのでしょうか。
⑲ 後編 日本は「第三極」として何を取りにいくべきか
前編では、日本が米国や中国とまったく同じ土俵で競争するのではなく、
AI × データ × センサー × 制御 × ロボット × 製造
を組み合わせることで、独自のポジションを取る可能性について考えました。
では、その強みをどうやって産業競争力につなげていけばよいのでしょうか。
まず重要なのは、
国内市場だけを見ないこと
です。
日本には、自動車、産業用ロボット、工作機械、FA、製造装置など、すでに世界市場で事業を展開している産業があります。
これらの既存産業とフィジカルAIを組み合わせ、
日本で研究する
→ 日本の現場で実証する
→ 日本で量産する
→ 世界へ展開する
という循環を作ることができます。
例えば、日本の製造現場で蓄積したデータを利用してAIを改善し、そのAIを搭載したロボットや製造設備を海外の工場へ展開する。
そうなれば、日本国内の現場そのものが、単なる「国内需要」ではなく、世界市場向けの研究・実証・開発拠点になります。
そして、ここで⑱で取り上げた標準化・プラットフォームが重要になります。
単にロボットや部品を輸出するだけではなく、
データ形式+インターフェース+制御技術+ソフトウェア+ロボット+製造設備
を組み合わせ、日本企業の技術が世界の現場で利用される仕組みを作る。
これができれば、単品の製品販売を超えて、産業エコシステムそのものを海外へ展開することが可能になります。
例えば、
日本企業のロボット
→ 日本企業の制御技術
→ 日本企業のセンサー
→ 日本企業の製造設備
→ 日本で蓄積された産業データ
→ AIによる最適化
という形で、複数の日本企業が一つのフィジカルAIシステムとして世界市場に入っていくことも考えられます。
もちろん、すべてを日本製にする必要はありません。
海外の基盤モデルやAI半導体を利用することもあるでしょう。
重要なのは、
海外の技術を利用しながら、日本側にも独自の付加価値と競争力を残すこと
です。
つまり、
「国産か海外か」
ではなく、
「どの部分を国内で握るのか」
という発想です。
例えば、
・産業データ
・現場ノウハウ
・制御技術
・センサー
・ロボット
・製造設備
・量産技術
・標準化
・実証環境
など、日本が強みを持つ領域を国内に蓄積する。
その上で海外の基盤モデルや半導体などを組み合わせる。
こうすれば、
海外AIを利用すること=日本が単なる川下になる
とは限りません。
むしろ、
海外のAI技術×日本の産業基盤
によって、新しい産業システムを作ることもできます。
そして、もう一つ重要なのが標準化です。
日本企業が優れた技術を持っていても、日本国内だけで使われる規格になってしまえば、世界市場での影響力には限界があります。
逆に、日本で作った技術やインターフェースが世界で利用されるようになれば、
「日本製品を売る」
だけではなく、
「日本の技術を世界の標準にする」
という戦略が可能になります。
これは、フィジカルAIが普及するほど重要になるでしょう。
なぜなら、ロボットが工場、倉庫、店舗、病院、建設現場など、さまざまな場所で動くようになれば、
ロボットと建物
ロボットと設備
ロボットと人
ロボットとAI
ロボット同士
を接続する共通ルールが必要になるからです。
つまり、フィジカルAI時代には、
「何を作るか」
だけではなく、
「どう接続するか」
も競争になります。
さらに、日本が狙うべきなのは、特定の一製品だけで世界シェアを取ることではありません。
センサー+制御+ロボット+製造設備+AI+データ+標準
という複数の強みを組み合わせ、世界のフィジカルAI産業に不可欠なポジションを複数持つことです。
米国が強いAI・ソフトウェアと、中国が強い量産・サプライチェーン。
そこに日本が、
「現実世界にAIを実装する技術と産業システム」
というポジションを築く。
これが、フィジカルAI時代の第三極という考え方の一つではないでしょうか。
もちろん、これは「日本が米中すべてに勝つ」という話ではありません。
むしろ、
米国の強みを利用し、中国の製造力とも競争・協調しながら、日本独自の強みを組み合わせる。
その中で、日本が世界市場で不可欠な技術・製品・データ・標準・プラットフォームを持つことが重要です。
結局のところ、国家戦略として問われるのは、
「日本はAIを作れるのか」
だけではありません。
「AIを現実世界の産業に組み込み、その価値を日本企業がどこまで獲得できるのか」
です。
そして、
研究
→ データ
→ AI
→ 実証
→ 製品化
→ 量産
→ 世界展開
→ 新たなデータ
という循環を国内に作ることができれば、日本はフィジカルAI時代においても、単なる「AIの利用者」ではなく、世界の産業システムを支える側に回ることができます。
⑳ 結論:日本は「AIを使う国」から「AIで現実世界を動かす国」へ
ここまで①〜⑲で、フィジカルAI時代における日本の可能性と国家戦略について考えてきました。
最後に、全体をまとめたいと思います。
まず、AIはLLMだけではありません。
LLM
→ Vertical AI
→ Physical AI
と、AIの活用領域は現実世界へ広がっていきます。
そしてPhysical AIは、AIモデルだけでは成立しません。
基盤モデル×産業データ×エッジAI×センサー・認識×制御×ロボット・自動車・製造設備
という、複数の技術レイヤーが組み合わさって初めて、現実世界で動くAIになります。
ここに、日本の強みがあります。
日本には、
センサー
・産業用ロボット
・FA
・制御技術
・工作機械
・製造装置
・自動車
・モーター・アクチュエータ
・素材・部品
・製造現場のデータ
・品質管理・工程管理
・熟練者のノウハウ
など、現実世界に近いところに巨大な産業基盤があります。
もちろん、AI基盤モデルやクラウドなど、米国が圧倒的に強い分野もあります。
中国には、巨大な製造能力、サプライチェーン、量産力という強みがあります。
だからといって、
「米国のLLMを使う
→ 日本は川下になる
→ 日本は衰退する」
と単純に考える必要はありません。
重要なのは、
誰のAIモデルを使うか
だけではなく、
そのAIを使って、誰が現実世界の価値を生み出すのか
だからです。
海外の基盤モデルを利用したとしても、
日本の産業データ+Vertical AI+エッジAI+センサー+制御+ロボット+製造設備
を組み合わせ、日本独自の産業システムを構築することはできます。
逆に、国産LLMを作ったとしても、それだけで日本のPhysical AIが完成するわけではありません。
だから国家戦略として重要なのは、
「国産か海外か」
という二択ではなく、
「日本はどの重要なレイヤーを国内に持ち、どこで付加価値を取るのか」
という視点です。
そのためには、
研究開発
→ 計算資源
→ データ収集
→ AI学習
→ シミュレーション
→ 実証
→ 現場導入
→ データ蓄積
→ モデル改善
→ 製品化
→ 量産
→ 世界展開
という循環を国内に構築する必要があります。
特に重要なのが、
「現場で使う → データが増える → AIが改善する → さらに現場で使う」
というデータと実装の循環です。
これが回り始めれば、日本の製造現場そのものがAIの学習・改善基盤になります。
さらに、
標準化+共通インターフェース+プラットフォーム
まで押さえることができれば、日本企業が単に製品を販売するだけではなく、世界のフィジカルAI産業のルールや接続基盤に影響を与えることも可能になります。
そして、最終的には国内市場だけではなく、
日本で研究する
↓
日本で実証する
↓
日本で量産する
↓
世界へ展開する
↓
世界で得たデータを再び研究開発へ戻す
という循環を作る。
これが、日本が目指すべき一つの姿ではないでしょうか。
つまり、日本の目標は、
「AIを使う国」
で終わることではありません。
海外のAIを利用すること自体は、決して敗北ではありません。
重要なのは、そのAIを、
日本の産業・データ・製造技術・ロボット・現場
につなぎ、
日本企業が現実世界で価値を生み出し、その価値を世界市場から回収できる産業構造
を作ることです。
そして、そのためには、
AI × データ × ハードウェア × 制御 × 製造
を分断して考えるのではなく、一つの産業エコシステムとして捉える必要があります。
フィジカルAI時代の競争は、
「一番賢いAIモデルを持っている国が勝つ」
という単純なものではないでしょう。
むしろ、
AIを現実世界に実装し、
データを蓄積し、
製品を量産し、
世界市場へ展開し、
さらにデータを次のAIへ戻す。
この循環を誰が構築できるか。
そこが重要になります。
そう考えると、日本にはまだ十分に勝負できる余地があります。
必要なのは、日本の既存産業を「古い産業」として切り捨てることではありません。
むしろ、
日本がこれまで蓄積してきた「モノづくり」の強さに、AIを組み込むこと。
そして、
「AIを作る国」だけでなく、
「AIで現実世界を動かし、価値を生み出す国」
を目指すことです。
これが、フィジカルAI時代における日本の国家戦略を考えるうえで、重要な視点ではないでしょうか。
まとめ
① LLMだけがAIではない
② Vertical AIとは何か
③ Physical AIとは何か
④ Physical AIはモデルだけでは成立しない
⑤ クラウドとエッジは単純な上下関係ではない
⑥ 日本は「エッジ側」に強みを持つ
⑦ そこに日本の既存産業基盤がある
⑧ さらに製造現場にはデータと暗黙知がある
⑨ Vertical AIとPhysical AIを組み合わせられる
⑩ 政府・企業も実際にこの方向へ動いている
⑪ 「海外LLM依存=日本はGoogleの手足=川下」とは限らない
⑫ 日本はフィジカルAI時代にどの産業ポジションを取るべきか
⑬ フィジカルAI時代、日本は何を「国内に持つ」べきか
⑭ フィジカルAI時代に必要な人材をどう確保するか
⑮ フィジカルAI時代、日本の教育はどう変わるべきか
⑯研究開発・計算資源・データ基盤をどう整備するか
⑰実証から量産まで、国内でどう産業化するか
⑱標準化・プラットフォーム戦略をどう考えるか
⑲米中との競争で日本は何を狙うべきか
⑳結論:日本は「AIを使う国」から「AIで現実世界を動かす国」へ
オフィスAIは人々の事務労働を代替するが、フィジカルAIは、工場のラインの単純作業だけでなく、物流や建設現場での肉体労働、医療や介護サービスにおける様々な作業も代替してしまうということですね。
日本がこれらの基盤システムの一部あるいは全部を握り、標準モデルの構築に参加できれば、日本の将来は明るい、というわけです。
まあ、それによって生じる失業による所得の喪失はベーシックインカムによって補えば、需要も底上げできます。
となると次に待っているのは、余暇をもてあます人々を慰める「妄想産業」、なかんずく、恋人ロボットの登場です。
特に、恋人ロボットは、フィジカルAIを使った大衆消費財として、最も手っ取り早い普及が見込まれる商品です。
日本発の恋人ロボットがヒットして、売り上げが伸びれば、フィジカルAIの周辺機器の産業の需要も増え、日本発のフィジカルAIの技術の発展に大きく貢献します。
日本がフィジカルAIの標準モデルの掌握を目論むなら、まず、恋人ロボットから手を付けていくのが得策です。
何よりも、国民にフィジカルAIの時代の到来を印象づけ、各分野でのAIへの代替を円滑するというデモンストレーション効果がある。
そして、恋人ロボットの普及は、失業を生まず、AI化に悪い印象を与えない。
ですが、少子化を加速し、それによって生じる人手不足を通じて、生産現場のフィジカルAI化を促進する。
そして、最後は人類涅槃