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【458503】チャンスについて

投稿者: 一教師   (ID:jbS9UA.uXI2) 投稿日時:2006年 10月 05日 17:03

東邦大学付属東邦中学校・高等学校

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 教師を始めたころは、誰でも同じようにやれば同じ結果がでるものと考えておりました。出来ないのはすべて怠惰や情報不足のためであり、きちんとした管理の下で、勤勉に勉強すれば必ず結果はついてくると信じていました。けれども、教師経験を積み、様々な生徒と接しているうちに、私のこのような期待自身が生徒を苦しめることがあり、私の話の端々から出てくる「やれば誰でも出来るはずだ」という思いが、生徒に重くのしかかることもあるにだと知りました。
 誰も、運動神経の悪い生徒に、短距離競争で1番をとれとは言いません。それは、表に出てくる現象として、目で把握出来るからです。同じように、目には見えないながら、脳の中でも同じことが、起こっており、やはり無理なものは無理なのです。また、それを分かってあげないと、100メートル20秒かかる子に、12秒で走るように要求するのと同じことになってしまいます。もちろん、それを判断するのは難しいとは思いますが、だいたいのことは、子供の様子や、子供にかかわる大人の意見を聞けば、分かるはずです。
 ただ、例外はもちろんあります。私の教え子で、とても不器用でへたするとちょっとおかしいと思われかねない浪人生がおりました。例えば、彼に英単語の意味を辞書でひかせると、単語の意味を発音記号から始まってすべての辞書の意味を書いてくるのです。聞いてみると、ひとつの単語をひくだけで20分もかかったそうです。すべてが、このような調子で、3年間浪人した上で、やっといわゆる二流大学の夜間部に入学しました。ところが、あるときばったり新宿で彼と出会い、「どうしているんだ」と聞くと、大学院に進学したとのことで、驚いてどこに入学したのかと聞くと、早稲田の大学院だとの話でした。私は、さらにびっくりし、頑張れよといって別れました。それから、また時がたち、今度は私の教えている予備校で、彼とばったり出会いました。聞いてみると、その後博士課程で京都大学に入学し、請われて予備校に教えに来ているのだとのことでした。考えてみると、彼はきっとその不器用な勉強方法を貫き、そのうちにそれらを自分のものにしてゆき、やがては、人から請われるほどの学識の持ち主になったのだろうと思います。見事に、彼は我々教師の予想を覆し、人間には不可能なことは無いのだな、と実感させてくれました。
 確かに例外はありますし、それを見て私たちは深い感動を覚えます。ただ、忘れてはいけないのは、例外はあくまで例外であり、大半は一般的な範疇のなかで暮らしていると言うことです。予備校業界にいると、夢を求めて何年も受験を繰り返す生徒を嫌というほど見てきています。彼らは、予備校にとってのよいお客さんではあっても、思いを遂げられることは、めったにありません。結局、世間からドロップアウトしてしまい、今なお、ぶらぶら夢を追い求めながら、無為に歳をとっていく学生たちが大勢います。
 ですから、私はそのような生徒には、現実(もちろん可能性も含めて)を出来るだけ早いうちに伝え、彼または彼女なりの速さで到達できる現実的な夢に転換してあげる必要性があるのではないか、と今では考えるようになりました。それから、子供を通して夢にかじりつこうとしている親御さんにも、子供の現実を受け入れ、かつ出来ないことがあることも子供の個性なのだと理解してほしく思うのです。
 思いつくままに、今の思いを書いてみました。何かの、ご参考になればと思います。

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  1. 【459827】 投稿者: 技術屋志向  (ID:oa8Tn4/IWTo) 投稿日時:2006年 10月 07日 09:55

    とても興味深いお話でした。
    では、どうやって見極めたらいいのでしょうか。この子は、今は我慢をしてもう少し時間を与えよう、そうすれば、道が開けるだろうと判断するのと、もうこのくらいで諦めさせないと、後が大変なことになると見切るのと。
    これは私は、ある種のワザ(英語でいうart)の部類に入ると思うのです。情熱や愛情だけで済む問題ではありません。確かな知識と経験に基づく、職人的な判断ではないかと。
    親にできるのか。教師のうち、いったいどれだけの人が、それだけのワザを身につけているのか。
    ある著名な心理学者は、The Art of Lovingという本を書きました。愛情にもワザが必要だということです。Art of Educatingとでもいうべきワザ(子どもの可能性を見抜く目、適切なアドバイスをする技術)を果たしてどれだけの親や教師が持っているのでしょうか。親としての悩みはますます深まります。

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