PTAは変えられる!? 改善への一歩とは

inter-edu’s eye
小学生の親御さんの春には「今年こそPTA役員の連絡がくるかもしれない…。」という緊張感もやってきます。なければ困るけど、ちょっと厄介だと感じる方もいるPTA。昨今では、任意加入であることが知れ渡り、PTA未加入者が増えるなど、ますますその在り方が問われるようになってきました。
そこで、PTAに関するアンケートを行い、実際PTA役員をやってきた方の声を交えながら、PTAの在り方を考えていきたいと思います。

PTA活動、満足・不満足で半々の結果に

【PTA役員経験者の方】今お子さまが通っている小学校のPTA活動に満足ですか?

PTA活動に満足?不満足?

アンケート結果は、「はい」…46.6%。「いいえ」…53.4%となりました。ほぼ半々の結果であったことから、ネガティブな印象を持たれるPTAも実はそうでもないのでは?と思えてきます。

では、「いいえ」と答えた方は、どんな理由から「不満足」なのでしょうか。アンケート回答から大きく4つの理由があることが分かりました。

1. 強制的な役員決め

・在学中、強制的に1回は経験しなければならないのに(ひどいときは2回も)、共働きの家庭のことを全く考えていない、平日の頻回の会議。PTA役員を強制することすら間違っている。やりたい人がやればいい。
・強制的な役員決めにうんざりした。

電話で延々と説得されたり、断りづらい雰囲気があるという声も聞きます。強制されることで、PTAへの印象が悪くなってしまいます。

2. 負担が不平等

・保護者会に出る人と出ない人がはっきり分かれてしまって、同じ人ばかりに負担が生じている。
・役員の負担が大きい。

業務が細分化されておらず、一部の役員に集中してしまっていること、また自主的でなくやらされ感があると、一層不平等を感じやすくなります。

3. 無駄が多い

・無駄な活動を非効率的にやらされるので。
・子どもたちのための活動よりも、地域行事の手伝いに無駄に時間を取られる。

昔からの慣習で行われているものもあり、時代にそぐわない活動もあるようです。やめたくてもやめられない雰囲気もあることが、不満の原因にもなっています。

4. 学校、地域のための活動が多い

・学校事務室の補助的な役割が多い。運動会の受付、ボランティア手配、来賓接待、入学式・卒業式の受付と来賓接待など。我が子のイベントを犠牲にしてまでやることか。
・地域密着型で地主が多く、親子もしくは3代にわたり同じ小学校というのも珍しくない。そのためか親参加の行事が多く、かなり負担。

PTAの活動内容が、学校・地域で異なり、曖昧であることから、活動範囲が広がりすぎてしまったり、本来の目的から外れてしまうこともあるようです。

昭和42年「文部省社会教育審議会報告」には、
「PTAは、児童生徒の健全な成長を図ることを目的とし、親と教師とが協力して、学校及び家庭における教育に関し、理解を深め、その教育の振興につとめ、さらに、児童生徒の校外における生活の指導、地域における教育環境の改善、充実を図るため会員相互の学習、その他必要な活動を行う団体です。」
と明記されています。(参照元:「第1節 社会教育団体としての活動 – 日本PTA全国協議会」)

しかし、地域や個々の解釈の違いもあって、時間の経過とともに、子どものためと感じられない間接的な活動が増えてきてしまっているのかもしれません。

ほかには、「委員をやっていることへの不満はないけど、もっと時代に即した活動にシフトチェンジしていけたらよいと思う」という回答もありました。

「満足」と答えた回答が半数あったことからも、PTA自体を存在悪のように思う必要はないようです。今やるべきことは、こういった不満要素を一つひとつ取り除いて、改善していくことであると感じます。

「子連れOK」「会議減らす」役員への配慮

では、どのように改善していったらよいのでしょう? 実際に、神奈川県内のとある学校のPTA本部役員をやってきた方々にお聞きし、そのヒントを探りました。

Q. 役員決めはどのように行っていますか?

・児童1人につき1回の委員活動をお願いしている。
・事前にPTAに入っている方全員から希望を提出してもらう。
・懇談会にて決定。定員以上の希望者がいた場合はじゃんけん。
・逆に足りないときは後日※電話にて打診。ただし強制はしない。
・正副委員長は児童二人分の活動とみなす。
※個人情報保護法に基づき、PTAが適切に取得した個人情報です。

役員決めの方法を明確にし、できるだけ強制せず、不平等とならないようにしているようです。このような方法で役員を選任するPTAがほとんどだと思われますが、やはり重めの役は敬遠されがちで、役員選びが難航するという声をよく聞きます。
そこで、こちらのPTAでは、役員同士が気持ちよく運営に従事できるよう改善を図り、引き受けやすい雰囲気づくりを目指してきたようです。

Q. PTA運営で改善してきたことは?

・子連れOKの雰囲気作り(おもちゃ箱設置、会議への未就学児参加など)。
・会議の回数を一回でも減らす。
・作業の負担が減るのであれば、新しいものの購入、導入の検討。

副会長Sさん: 数年前、本部役員の方が、いったんやったら何年間か続けなくてはいけないという雰囲気がよくないということから、一年でもやめてよい雰囲気作りに努めて、それが今につながっています。「子連れでの参加OK。一年でやめてもOK。」と、これまで本部をやってきた方が改善してきてくれて今があると思います。

行事や先生のサポートなど、PTAが担っていること自体を減らすことは、容易ではありません。よって、役員が業務をやりやすくする環境づくりを目指す考えは、とても参考になります。
たとえば、PTA活動に思い入れがある前任者が、一生懸命取り組むうちに業務を増やしてしまった…。そのようなケースでも、次の役員が「継続は難しいと判断したものは、一年でやめてもよし」とすると、改善も進みます。

また、役員同士がお互いのことを思いやる雰囲気づくりは、「PTAは怖い!」といった先入観を取り除くことにもなりそうです。次のような感想もありました。

書記Aさん: 次の本部役員をお願いするとき、多く言われたのが「敷居が高い」「自分にはちょっと無理」ということでした。実態がよく分からないと、マイナス面が大きく流布されるので、知らない故の恐怖が、尻込みさせる一因かもしれません。

会計Mさん: 気持ちよく役員できるような配慮してもらっているなと感じたし、小さな工夫が「高い敷居」を少しずつ低くしているのかなあと。そんな高い敷居をちょっと超えたら、新しい発見と、いい出会いがあった1年でした。

完全ボランティアで運営されるPTAは、「教育への意識が相当高い人がやるもの」と認識されているようです。それが「やりにくさ」を醸し出しているのかもしれません。その「高い敷居」は「心の壁」であり、心配りで解消できる、ということを感じるコメントです。

PTAでの経験は人生を豊かにする

PTAは実際怖いものではなく、人との温かい関係性の中で運営される、ここが需要なポイントではないでしょうか。さらに役員の方々は次のような感想を述べています。

副会長Tさん: PTAの運営は、人と人とのつながり、出会いが大きいですね。いい出会いがあれば「大変だったけど楽しかったね」と言えるし、逆に楽だったけど嫌な思いをしたら「PTAもう嫌」となりますよね。A会長は、委員長たちの話を聞いて一人ひとりにていねいに対応してくれていたと思います。

書記Aさん: 確かに忙しかったです。でも、保護者が学校とここまで関われる機会や期間はそうそうあるわけではないから、人生においてよい経験をできるチャンスと捉えるのも、ありかと思えるようになりました。PTAの利点は子どもの学校でのようすがよく分かり、親同士も知り合えて楽しいし、先生たちと話す機会も増えることでしょうか。

会長Aさん: 人間が人間らしくあるためには、社会の中で個人個人が自分を表現し、互いに認め合ったり、互助的な関係を築きあったりしてこそではないでしょうか。PTAとは、そうした人間が人間らしくあるための場を、子どもと学校を通じて、実現できるところなのではないでしょうか。

「人との出会い」「人とのつながり」が希薄になるなかで、活動を通じて、改めてその大切さに気づき、だからこそ活動を頑張れた―。ボランティア活動だからこそ、思いやりや気遣いの中で改善を図り、よくしていこうという意識が組織を変えていくのでは、と考えされられる内容です。

当事者意識がPTAを変えていく!

最後に、現在のPTA事情に詳しく、執筆活動など多方面でご活躍されている大塚玲子さんに、「PTAを本来の目的を踏まえて、有意義な活動にしていくための最初のステップは何だと思いますか?」と質問をし、次のような回答をいただきました。

大塚玲子さん: まずは、一人ひとりがPTAに入るのか入らないのか、活動に参加するのかしないのかを考え、自分の意志で行動することではないでしょうか。そして、PTAが何のためにあるのかを考えること。まずはそこから、という気がしています。
現状は「入らなきゃいけないんでしょう? いやだなぁ…」と言いながら入り、「いやだなぁ…」と言いながら活動する人が多いと思いますが、これでは有意義な活動はできないでしょう。

保護者間には多様な考えがあり、みんなが納得する形で会を運営するというのは、手間ひまがかかりたいへん面倒なことです。でもやはり最も大事なことと私は思います。

ただし、全員の意見の一致を待っていても話は進まないので、お互いに意見を出し尽くしたら、どこかで「長」が決断して嫌われ役を引き受け、話を前に進めることも、重要ではないかと思います。

大塚さんが言うように、一人ひとりが「自分ごと」として行動することが、PTA活動の改善につながり、より有益な活動内容へと発展するのでしょう。
ぜひいま一度、当事者意識をもってPTAのことを考えてみてください。

質問にお答えいただいた方:大塚玲子(おおつかれいこ)さん
主なテーマは「いろんな形の家族」「PTA」。編集プロダクションや出版社に勤めたのちフリーとなり、書籍やムックの企画編集、執筆等に携わる。著書は『PTAがやっぱりコワい人のための本』(2016)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(2014)、『オトナ婚です、わたしたち』(2013)。テレビ、ラジオ出演多数、各地で行う講演会も好評。


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