未来を担う強くたくましい子とは? 東京学芸大学附属小金井小学校

inter-edu’s eye
第1回では、教育理論や教育手法を研究する「教育研究校」に位置づけられていて、大学や教育学部の先生の研究成果としての充実した授業を受けられる国立小学校の1つ、東京学芸大学附属小金井小学校の関田義博副校長にインタビュー。普段なかなか知ることができない教育目標やカリキュラム、独自の取組。そして初等教育を通し、子どもたちになってほしい理想像などをうかがってきました。

学校データ

学校名 東京学芸大学附属小金井小学校
男子・女子・共学 共学
所在地・アクセス 東京都小金井市貫井北町4-1-1
JR中央線武蔵小金井駅北口より京王バス。徒歩の場合15~20分
教育目標 明るく思いやりのある子 強くたくましい子 深く考える子
制服の有無
給食の有無

文字通り波にもまれて成長する子ども達

遠泳や登山から生まれる「強くたくましい子」

小金井小学校1
東京学芸大学附属小金井小学校 関田義博副校長

エデュ:まずは貴校の教育目標を教えてください。

関田先生:「明るく思いやりのある子 強くたくましい子 深く考える子」の3つを教育目標に掲げています。その中でも一番力を入れているのが「強くたくましい子」の育成。ここからお話します。

3年生以上で行われる自然体験活動では、千葉県の鵜原湾での遠泳、長野県の蓼科山、飯ごう炊さんなどをしています。たとえば遠泳では、普段スイミングスクールに通っている子でも、波のある冷たい海では体が動かなくなってしまう子がたくさんいます。しかし、そのような子でも2年間あれば、周りにいる友達や指導スタッフに励まされながら、少しずつ自分から海に向かっていく気持ちを高め、最後には目標の距離を泳ぎきってしまいます。

エデュ:2年間で!すごい成長ですね。「深く考える子」の育成ではどのようなことを行っているのでしょうか?

関田先生:本校では深く考える子を「理解を深め、知を創造する子」ととらえ、問題解決における子ども一人ひとりの思考と、子ども相互の協働的、対話的な学びを大切にした授業作りを行っています。

自分一人だけで学ぶならば、塾や家庭などでも行うことができます。学校はあくまでも仲間とともに、集団で学び合う場です。仲間と力を合わせて問題解決を行う、つまりは仲間を大切にして学びを行うということについては、仲間とともに海で泳ぐ、仲間とともに登山するということと共通点があります。

人と何かをする時に、子どもは必ず他者を意識します。友達の良い所、駄目な所などを意識する中で、徐々に自分がどういう人間なのか見えてきます。しっかりと自分と向き合うことを続けていけば、子どもは自分を知るだけでなく、自分自身を社会においてコントロールしていく力を身につけることができます。他者を知り自分のことも知っている人間には、かけがえのない「生きる力」が身につくものと考えています。

国立大学附属校だから養われる力とは?

社会とつながりを持った研究を展開

小金井小学校2

エデュ:貴校の特色あるカリキュラムを教えてください。

関田先生:2つあります。1つ目が国立大学の附属小学校ということで、1年に2か月ほど教育実習期間があり、実習生が各クラスに5名程度配属されます。そのため実習期間中は、毎時間実習生が授業を行うといった日も珍しくありません。3年生ぐらいからですが、子どもたちに実習生や実習生が行う授業を評価する目が育ってきます。

エデュ:評価する目とは何でしょうか?

関田先生:「この先生はこういうところがいい」「この先生は○○の授業がうまい」と言うようになります。また、授業がうまくない実習生に対して、子どもたちが授業の展開をフォローするような発言もします。

これは子どもたちが担任、専科教諭、実習生など様々な指導者の授業を受けることによって、自然と問題解決に取り組む姿勢や方法を学んでいるからかなと思っています。

エデュ:2つ目は何でしょうか?

関田先生:現代的な教育課題を解決するための研究、例えば日本の道徳的な教育をどうしようかなど、先進的な教育のあり方の研究にも力を入れていることです。こういった研究は、本校だけで行うのではなく、東京学芸大学、他大学、企業などと連携して行っている所も特色ではないかと思っています。研究内容もより汎用的なもの、より意味のあるものになることを期待しています。

大仏様
校舎見学レポート
取材時に、校舎内を見学した際、最も印象に残っているのが「なでしこ図書館」です。約1万9千冊という膨大な蔵書数に加え、読み聞かせやブックトーク、学習テーマや個人の興味関心に応じた本の案内をしているそうです。この取り組みにより、子どもたちは本を「読まされる」のではなく、自分が読みたい本、興味を持った本を手にとるようになります。

子どもの明るい未来のためには「家庭」が重要

工夫が満載!大人気の給食

小金井小学校3

エデュ:貴校のアピールポイントを教えてください。

関田先生:保護者様から評価されているものとして「給食」があります。年間を通し、給食室で作った温かくて栄養のあるものを、栄養教諭を中心に考え、企画し、提供しています。食物アレルギーの子もいるので、食材にはなるべく国産のものを使用して、安心できる食材を使っています。また給食を通した食育も大切にしています。給食も教育の一環としてとらえ、残食が出ないように献立に工夫しています。

エデュ:それはどういった工夫でしょうか?

関田先生:一例ですが、「教員の思い出献立」、「本のおはなし献立(読書)」、「日本郷土料理の献立」、「世界の料理献立」等、テーマを持った献立を作っています。皆さまも経験があると思いますが、小学校生活では給食は楽しみの1つです。中でも、家庭へ募集する「○○さん家の献立」は自分の家のメニューが出る可能性もあるので、生徒に大人気ですね。

エデュ:共働きのご家庭も増えていますが、お弁当を持参する頻度はどのくらいですか?

関田先生:遠足や社会科見学の日だけで、多くても年間で10日程度です。

エデュ:それは忙しいご家庭にとっては非常に助かりますね。

ご家庭へ向けて3つのメッセージ

エデュ:最後にこれから受験を考えているご家庭へ向けてメッセージをお願いします。

関田先生:メッセージというか、お願いしたいことが3つあります。
1つ目が「子どもが遊ぶ時間、遊びながら考える時間をつくってほしいこと」。
2つ目が「自分で考えて判断できる子どもに育ててほしいこと」。
3つ目が「家庭をあたたかいものにしてほしいこと」ですね。

1つ目と2つ目は、子どもの自主性や主体性を家庭でも育ててほしいということです。日常でできることからでもいいので、選択や判断を、子どもにさせる機会をつくってほしいと思います。それは、子どもが友達と学校生活を行ううえで、じっくりと考えて判断することが必須のことだからです。

3つ目については、子どもにとっての社会の基礎は家庭や家族だからです。子どもにとっては身近な社会が家庭であり、明るい未来を築き上げる力の源は、あたたかい家庭にあります。学校を管理していると、この当たり前であるはずのことが意外とできていないなと感じています。

子どもには、明るい将来があります。子どものゴールは一人の社会人として、自立した人間になることです。そのために大人は、子どもが独り立ちできるように支えていかなければなりません。

編集部から見たポイント

ICT教育、英語教育など様々な新しい風が吹き込んでいる初等教育。その中でも、「わが校は自然体験活動を通し、『強くたくましい子』を育てることにこだわっています。」と、話されていた関田先生の言葉は印象的でした。わが子にどう育ってほしいのか、どういう大人になってほしいのか、その為にはしっかり子どもと向き合い、どういう教育を受けさせるべきかを考える必要性を感じました。