桐朋学園小学校 抜群の環境で受ける心に響く教育とは?

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第3回では、桐朋学園小学校の小学部長 磯部寛子先生と、教務主任 有馬佑介先生にインタビュー。落ち着いた雰囲気を持つ学園都市に建つ私立小学校では、どのような教育が行われているのでしょうか。

教育目標がない私立小学校?

教員全員が持っている精神

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左が小学部長 磯部寛子先生
右が教務主任 有馬佑介先生

エデュ:まずは貴校の教育目標を教えてください。

磯部先生:驚かれるかもしれませんが、本校には多くの学校の職員室に貼ってあるような校訓や教育目標はありません。ただそのかわりに、「一人ひとりの子どもの心のすみずみにまで行きわたる教育」という精神を大切にしています。これは教員の誰に聞いても、同じように答えると思います。

エデュ:具体的にはどういった教育なのでしょうか?

磯部先生:豊かな自然環境の中で「情操」を培います。本校までの道すがらはもちろんですが、校内にも東京とは思えないほど自然豊かで動植物がたくさん溢れ、四季の移り変わりで景色が変わります。

エデュ:確かに私も国立駅から歩いてきましたが、自然豊かな環境だと感じました。

磯部先生:ありがとうございます。私たちは、授業はもちろん、この環境の中でたっぷりの休み時間を使ってたくさん遊ぶことで子どもたちに成長してほしいと考えています。また、本校ではとにかく体を動かします。毎日のことですと、駅からの道のりがだいたい往復2㎞ありますが、たとえ雨でも歩きます。それから火・水・木の3日間は、朝のラジオ体操のあとで、中高の広いグラウンドをランニングすることを課しています。5年生の宿泊行事では2,640mの登山、そして6年生では1時間の遠泳をします。これらにより体だけでなく、心も鍛えることができます。

有馬先生:小学校で身につけるべき基礎学力もしっかり学び、中学校に進学していきます。子どもたちは豊かな環境の中で自由に遊び、それを時に教員が支え、児童一人ひとりに寄り添う。「一人ひとりの子どもの心のすみずみにまで行きわたる教育」を土台に、情操、心身を鍛える、基礎学力を定着させることが本校の特徴です。

教育熱心なご家庭でも刺激を受けるカリキュラム

羊の毛から織物を作る、縄文土器を焼く

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エデュ:貴校の特色のあるカリキュラムは何でしょうか?

有馬先生:いくつかありますが、2つお話しします。1つ目は「生活科」です。これは他の小学校の1・2年生にあるいわゆる生活科ではなく、本校独自の教科で1~6年生が学びます。4年生では、「羊の毛から織物作り」をします。子どもたちは、5月の宿泊行事で牧場に行き、一人ひとりハサミで羊の毛を刈ります。その毛を学校に持ち帰り、洗い、繊維をほどいて、スピンドルという器械で紡ぐことで糸にします。そうして出来上がった糸に、学校にある草木を使って色を付けていきます。最後は、自分で作った織り器で織物に仕上げます。

5年生では、「縄文土器作り」をします。まず考古館に行き、縄文土器のスケッチをします。そこに自分のアイディアを加え、粘土で土器を作ります。この粘土も自分たちで砂と土を混ぜたものを使います。形作った土器は、縄文人と同じように、摩擦を使って起こした火で焼き上げます。

私たちは「生活科」は生きる力を育てる教科だと考えています。今の時代、たくさんのものに囲まれ便利になった反面、自分の手で一から何かを生み出す機会が減っています。生活科での学習を通して、子どもたちが、五感を働かせ試行錯誤しながら、自分の手と心を使って何かを生み出したという実感や喜びを得ることはとても貴重で大切なものだと考えています。

エデュ:実際に体験された児童の反応はいかがでしょうか?

有馬先生:すごく良いですね。私立小学校に通わせているご家庭は教育熱心で、学校外でも多くの経験をしている子どもが少なくありませんが、やはり生活科での体験は特別な思いを持つようです。

エデュ:2つ目の特色あるカリキュラムについても教えてください。

有馬先生:個人的に一番好きなカリキュラムは、6年間を通じ書く「日記」です。1年生は、初めは「先生あのね」という書き出しで始まります。提出された日記には、担任が必ず丁寧に返事を書きます。これが6年間続きます。文章の変化に現れる子どもたちの内面の成長に寄り添えることが僕はとても好きです。このように、日記は基本的には担任とのやり取りになりますが、学級通信に載ることもあり、クラス内で共有されます。日記からその子の新たな一面を知ったりと、お互いがお互いの理解を深めていくことにつながります。さらに学期に1回、各学年で10編ずつ集め、「青桐」という作文集も発行しています。それぞれ紡がれた文章に触れることで、学年を越えた理解につながっています。

縦のつながりが強い小学校

休み時間は1年生が上級生と遊ぶ

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エデュ:先ほど校内に入ってから、学年が違う子どもたちが遊んでいる様子が目に入ってきました。

磯部先生:本校は縦のつながりが非常に強い学校でもあります。例えば新入生は5年生に名札をつけてもらうところから、6年間の学校生活が始まります。翌日からは下校時に5年生が1年生を送る「1年生送り」があります。これは1週間あるのですが、前半は1年生の最寄り駅やバス停、自宅まで送り、後半は国立駅まで送ります。これにより1年生は自信を持って帰ることができるようになるだけでなく、学校内でお兄さん・お姉さんのような心強い存在を得ることになります。そして5年生は弟・妹の存在ができ、命の大切さや弱い存在を守る気持ちが生まれます。

休み時間には1年生が5・6年生の教室に行ったり、外で一緒に遊ぶ姿も、本校では普通の光景です。

エデュ:学校内に兄弟姉妹のような存在がいるということですね。子どもたちが卒業して大人になったときの理想像はありますか。

有馬先生:一人ひとりが自分の力を活かし、社会に貢献できればいいと思っています。その土台を作るうえで、小学校で学ぶことは大きな影響があると考えています。先ほど本校は自然豊かなところが魅力とお話しましたが、休み時間は校内で過ごすこともできます。図書室で読書をしてもいいですし、音楽室で楽器を弾いてもいい、図工室で自分の作りたいものに熱中もできます。それぞれの部屋で子どもたちが自由な時間を過ごせるよう、教員が見守りながら部屋を開放しています。これは一人ひとりが興味を持ったこと、やりたいと思う気持ちを大切に育てていくためです。本校の卒業生が、小学校生活で興味を持ったことに関する職業に就くことがめずらしくないのは、こんなところに理由があるのかもしれません。

エデュ:なるほど。今後やっていきたいことはありますか?

有馬先生:来年度より1年生から英語でのコミュニケーションを学ぶ時間を設ける予定です。授業はオールイングリッシュで行われます。スキルを身につけるよりは、まず英語に対して親しみを持つように、歌やゲームで楽しみながら進めていきたいと考えています。英語に限らず、子どもたちの様子をしっかりと見ながら、より良い成長を支えるためにはどうしたらいいか、教員全員で話し合い、実践していきたいと思っています。

桐朋学園小学校データ

学校名 桐朋学園小学校
男子・女子・共学 共学
所在地・アクセス 〒186-0004 東京都国立市中3-1-10
JR中央線「国立駅」南口下車 大学通りを南へ徒歩15分、JR南武線「谷保駅」下車北へ徒歩15分
学校の精神 一人ひとりの子どもの心のすみずみにまで行きわたる教育
制服の有無
給食の有無

編集部から見たポイント

校舎内を見学させていただくと、とにかく子どもたちが元気が良い!と感じました。それは抜群の環境だけでなく、教員そして学校全体が作り出す雰囲気も影響しているのではないでしょうか。決してお仕着せではない、「一人ひとりの子どもの心のすみずみにまで行きわたる教育」の精神を肌で感じることができました。