30年後を見据えた世界標準の教育とは?東京女学館小学校

inter-edu’s eye
第11回では広尾にある、東京女学館小学校校長の田中均先生にインタビュー。「国際社会で活躍する女性リーダーの育成」を掲げ、女子一貫教育のトップランナーとして走り続ける東京女学館小学校の教育内容をうかがってきました。

蔵つき酵母を大切にしている学校

他校にはない風味=教育

東京女学館小学校1
東京女学館小学校校長 田中均先生

エデュ:貴校は広尾という土地柄、裕福なご家庭が通ういわゆる“お嬢様学校”というイメージを持たれがちですが、実際はどのような教育を行っているのでしょうか?

田中先生:一言でいうと「人格の教育を進めること」を行っています。基礎学力の充実を第一に掲げる学校も多いですが、学校という場はまずなによりも人格形成の場であると思います。でも教育は足し算ではありません。国語+社会+算数+理科の教科学習を学べば「人格の教育」になるかというとそうではなく、色々な考えを持った子どもたちが、様々な関わり合いを持ちながら練られていく過程こそが「人格の教育」だと思っています。こういうことをきちんと学校教育の根底に据えないと世界標準の教育にはなっていかないと考えています。

OECDが行っている「DeSeCo(デセコ)」という学力調査があるのですが、これは、世界の国々がどういう教育に力を入れているかを調査するものです。その結果分かったのが、教科学力はそのごく一部であって「これからの世界をどう生きていくのか」、「どう世界の人とつながりながら生きていくのか」、「そういう志向性をどう持っているのか」、こういった哲学というかポリシーを持った人格を育てていくのが、今世界の国々が目指している教育だということです。ここを本校の教育とどう結びつけていくかを考えるのが必要だと思っています。

エデュ:そのために何か新しく取り組んでいることはありますか?

田中先生:新しいものを接ぎ木のように加えるのではなく、根っこから学校自体を鍛え上げていくことが大切です。私たちは教育目標に掲げている「高い品性を重ね、人と社会に貢献する女性の育成」を目標に、小さな改善を繰り返し、積み重ねながら、本校の骨太な骨格を作ってきています。日本酒や味噌、醤油など、風味や味わいの深いものは熟成・醸成することが必要です。同じ材料や水、製法で作っても蔵が違えばなぜか風味が変わってきます。それはその蔵の建物や色々なものに、「蔵つき酵母」という酵母がくっつき、作業工程の中でふわっと下りてくるから、独特の風味が生まれるわけです。これは学校についても同じことがいえます。来年で本校も90周年を迎えますが、この長い歴史の中で培ってきた蔵つき酵母を大切にしています。

特色ある3つの教育

学校は間違えるところ、やり直すところ

東京女学館小学校2

エデュ:長年培われてきた教育の中で特色のあるものを教えてください。

田中先生:3つお話します。
1つ目は「リーダーシップの教育」です。インクルーシブ・リーダーシップと呼んでいますが、強いリーダーシップを持った人が引っ張っていくのではなく、色々な人の力を引き出しながら大きな目標に歩んでいくような人、そんな人になってほしいと思っています。そのために本校では「為すことによって学ぶ」というように教科学習でも、学校行事でも、「体験の中から学ぶ」ということを重視しています。活動の中で友達とぶつかったり、協力していく中で、互いの良さを認め合ったり、間違いを認め合ったりしながら大きな目標に近づいていく、それがリーダーシップの教育であり、人としての成長になっていきます。「人為す」教育であり「人練る」教育であるのです。

2つ目は「学び続ける力の教育」です。先ほどの体験の中から学ぶことはここにもつながります。見ること、聞くこと、触れること、試すこと、このように身体を通して学ぶことは学びへの大きな原動力になり、学んだことが定着する第一歩となります。また、日本の学校教育は失敗を恐れていますが、これは間違っていると思っています。なぜなら大人は実社会の中で様々な失敗をする。でも失敗してもやり直したり作り直したりして生きているのが大人ですよね。子どもも同じです。失敗したらやり直す、そんなたくましさやしなやかさが必要です。ですから私たちは教科の授業で「授業は間違えるところ」、「学校は間違えるところ」、「間違えたらやり直すところ」と教えています。

3つ目は「アイデンティティーの教育」です。これは日本の伝統文化である茶道、華道、日本舞踊を学ぶ「すずかけ」という授業で学んでいきます。この授業は免状を取ったり、何かを極めるためではなく、日本人が持つべき「和の文化」を身体にしみこませるのが目的です。学習した日本の文化を「国際理解」のプログラムの中で、外国の方々に紹介して発信型の学習へと発展させていきます。

エデュ:これらの教育を通し、育てたい人物像をお聞かせください。

田中先生:社会との接点を持ち、女性だけが持っている力を活かして社会に貢献できる人です。私たちはこれを「自立志向」、「地球志向」、「共生志向」、「未来志向」と呼んでいます。日本だけでなく、世界で活躍できる子どもたちを育てています。

これからの私立小学校に求められるものとは?

30年後を見据えた教育の提供

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エデュ:貴校への入学を希望するご家庭の特徴は何でしょうか?

田中先生:本校の子どもたちは、とても丁寧に育てられていると思います。例えば登校した時の子どもたちの髪がきちんとしている。些細なことに思えるかもしれませんが、それが一つの学校の校風を作ることになります。制服をどう着ているのか、ランドセルやカバンをどう持っているのか、そしてどういう風に身繕いをしてきているのか。ここが本校の子どもたちはきちんとしています。それは親御さんが丁寧に子どもたちを育てていることになります。

先ほど人格の教育を進めるとお話ししましたが、この教育を進めるということは温かみのある、手作り感のある教育を進めることにもつながります。そういう意味で、本校と親和性が高いということにつながるのではないかと考えています。

エデュ:最後に、これからの私立小学校の使命・求められるものについての考えをお聞かせください。

田中先生:「世界標準の教育を見据えた教育を提供すること」です。 30年後、人口の減少などにより東京では公立小学校は半分、全国的に見ると30%しか必要なくなると言われています。これは公立小学校だけでなく、私立小学校にも当然関わってきます。価値のある、価値の高い教育を提供することこそ私立小学校の使命であると思います。本校を志願している受験生が何を求めているのかに敏感になることはもちろん、学校には社会に対する責任や、社会に貢献することが欠かせないものだと思います。

今の小学生が社会人になる時には、日本の産業を日本人だけで動かすのは難しくなっています。外国人と一緒に働くのはごく当たり前のこと。もちろんグローバル化により、日本人が海外で働く光景もごくごく当たり前になってくるでしょう。ここを意識した教育を提供できるかどうかが私立小学校に求められるものだと思います。

東京女学館小学校データ

学校名 東京女学館小学校
URL: http://www.schoolweb.ne.jp/swas/index.php?id=1310010
男子・女子・共学 女子
所在地・アクセス 〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-7-16
「渋谷駅」、「恵比寿駅」より都営バス
教育目標 「国際社会で活躍する女性リーダーの育成」
制服の有無
給食の有無

編集部から見たポイント

数年先ではなく30年後を見据えた教育を行っている点が、女子一貫教育の最先端だと感じました。伝統を大切にしながらも、はるか未来を見ている東京女学館小学校の教育には今後も注目していきたいと思いました。