大学入試は英語4技能でどう変わるのか

inter-edu’s eye
前回の大学リサーチ「あれから1年、2020年大学入試改革の今は?」にて、大学入試の英語は4技能が試されるとお伝えしました。そこで今回は、英語4技能評価にいたった背景と、2020年からの民間資格・検定試験導入で大学入試がどう変わるかについて調べてみました。

このままではグローバル人材を育成できない!強い危機感

グローバル人材

あまりメディアでは報じませんでしたが 、現在の英語教育の実態は、今年の7月14日、経済産業省から文部科学省への勧告という形で示されました。それは、グローバル人材育成への施策の結果が不十分なものであるというもの。もともとの施策の内容は、以下の通りです。

『少子高齢化・人口減少による国内市場の縮小や国際競争の激化等を背景に、第2期教育振興基本計画(平成25年度~29年度)において、「グローバル人材(注)の育成」が目標の一つとして掲げられ、そのための具体的施策として、外国語教育の強化、双方向の留学生交流の推進、大学等の国際化などを設定』
(注)グローバル人材とは、同計画において、「日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材」と定義
(『「グローバル人材育成の推進に関する政策評価」の結果に基づく勧告』の背景より抜粋)

こういった目標を掲げながらも、日本人留学生の数は伸びず、中高の生徒の英語力の伸びは緩やか、英語教員の英語力の向上を図る機会をもてていないという経済産業省の調査結果が、今回の勧告です。

この勧告の前日、7月13日に、文部科学省は「大学入学者選抜改革について」において、大学入試での英語4技能評価を正式に発表しているのも、こういった背景からといえるのではないでしょうか。

大学入試で試される英語力とは?

では、具体的にどういう力を試そうとしているのでしょうか。文部科学省のグローバル人材育成や英語4技能に関する資料に、「CEFR」という国際基準に関する記述が見られます。

CEFR(セファール)とは?

大学入試で試される英語力とは?

CEFRは、多言語が行き交うヨーロッパで、どの言語でどれくらいの語学力(特にその語学を使ったコミュニケーション力)があるのか、共通して測る物差しとして欧州評議会(Council of Europe)が20年以上研究し開発されたもの。

ヨーロッパでの他の国で教育を受けたい、他の国で職に就きたいといったニーズに応えるため、国境を越えた基準が必要とされたことも背景にあります。

そのようにして、開発されたCEFRは、語学の学習、教授、評価の基準として参照するにあたり、習得度を図るレベル別の定義がとても明確で大変分かりやすい内容になっています。

英語がほんの少しだけ使えるレベルから、ビジネスで使えるレベルへと学習を積み重ねていく基準が、小中高大の一貫した英語学習を目指す文科省の方針と相まり、採用されているとも言えます。
またCEFRは他国で仕事に就きたい人が、適切な語学力を身につける基準として作られてきた背景からも、グローバル人材育成のための基準として、大変有効だという理由もあるでしょう。

CEFRのレベル一覧 ※C2が最上位レベル

CEFR能力レベル別に「何ができるか」を示した熟達度
C2聞いたり読んだりしたほぼすべての話題を容易に理解し、その内容を論理的に再構成して、ごく細かいニュアンスまで正確に表現できる。
C1広範囲にわたる高度で複雑な話題を理解できる。自然で流暢に自己表現ができ、目的に合った適切な言葉を使って論理的な主張や議論もできる。
B2社会生活での幅広い話題について、複雑な文章でも主要な部分を理解できる。ネイティブと自然な会話ができ、明確かつ詳細に自分の意見を表現できる。
B1社会生活での身近な話題について理解し、自分の意思とその理由を筋の通った文章で簡単に説明できる。
A2身近で日常的なことがらについての文やよく使われる表現が理解でき、簡単なやりとりができる。
A1日常生活でよく使われる基本的な表現や言い回しを理解し、ゆっくりとであれば簡単なやりとりができる。

※引用:Global Learning Center「CEFR一覧」

では現在、日本の高校3年生のレベルはどうなのかというと、A1の上位(英検3級程度)~A2(英検準2級程度)の下位レベルが多いとのこと。これを、中学卒業時に50%をA1上位、高校卒業時にB1下位を50%にすることが文科省の今年度までの目標でした。
そして、大学入試では大学・学部にもよりますが、B1レベルが要求されるとのこと。現在の高校生のレベルから考えると、かなり高い目標であることがわかります。

大学入試は民間試験の導入でどうなる?

先に上げた文科省の「大学入学者選抜改革について」に、「英語の外部検定試験を活用し4技能を評価」とあるように、民間資格・検定試験の活用が現実のものになってきました。

ところが、民間資格・検定試験を大学入試に活用するには、さまざまな問題があります。

一つ目は、大学側が評価基準をどう決めるかということ。各試験間の公平さを保つために、各試験の対照表が文科省からも示されていますが、今までのように、1点刻みの点数で合否を決めていたやり方が当てはまらないので、判定の困難さが伴います。

二つ目は、試験自体の問題点です。どの資格・検定を採用するのか、試験を同一日にしないと不正が起こるのではないか、採点者によってブレが出やすいスピーキングの評価をどうするのか、試験によって費用に差があるなど、解決すべき課題がたくさんあります。

今、各方面で対策が考えてられいますが、その中で有効とされているのが、CBT(Computer Based Testing)方式です。実際に英検、TOEICではすでにCBT試験が導入されています。CBTは、コンピュータ上で試験をし、専用のプログラムで採点する方式なので、採点者間の判断基準のブレが解消され、また採点の時間も短縮されます。大学入学共通テストなど、検定試験以外でも採用される可能性があるので、CBT方式の試験にも慣れておくとよいでしょう。

英語をはじめ、まだまだ実態の見えない大学入学共通テストも、来月には5万人規模のプレテストが実施される予定です。どんな結果が出るのか、その動きに今後も注目していきたいところです

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