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中学受験期の肌トラブルはストレスのサイン?

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この時期、気になる肌トラブル

「体調が悪くなくても、マスクをつけ続ける生活」が始まって、2年近くが経過しました。
中学受験期を迎えたお子さまも、学校や塾などどこへ行くにもマスクをつけたまま活動することが習慣化していることと思います。世界的にも、マスクでの皮膚トラブルが増えており(1)、皆さんもマスクの下で肌が蒸れたり、擦れて荒れてしまったりといった肌トラブルを経験された方は多いのではないでしょうか。

マスクの使用に限らず、本格的な受験シーズンを迎える冬は空気が乾燥し、肌トラブルを起こしやすくなる季節です(2)
ただでさえ受験のストレスや睡眠不足のために皮膚の回復を遅らせる可能性があり(3)、乾燥しやすい受験シーズンはアトピー性皮膚炎が悪化しやすい季節と言えます。そしてアトピー性皮膚炎が悪化すると睡眠不足につながり(4)、勉強への問題が起こりやすくなってくるのです(5)
お子さまの受験のためにも普段の肌トラブル対応やスキンケアを知っておくことは重要ですよね。そこで、そんなお役立ち情報をお届けします。

監修 堀向健太先生
東京慈恵会医科大学 葛飾医療センター 小児科 助教
日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医・アレルギー指導医

お子さまは肌トラブルを抱えていませんか?

肌トラブルに悩むお子様のイメージ図
イメージ図

肌トラブルというと、乾燥肌が思い当たります。紫外線、花粉など、さまざまな刺激が、肌トラブルのきっかけとしてあげられます。
また、睡眠不足やストレスによって肌トラブルが起きているケースはないでしょうか。
中学受験期を迎えたお子さまであれば、大量の学習をこなさなければならないストレスや、合格を勝ち取れるかどうかというプレッシャーなどから、睡眠不足もあるかもしれません。
もともと肌が乾燥しやすい体質であればなおのこと、生活リズムを整えるとともに、ストレスのケアにも注意されているでしょう。
肌トラブルが、一時的な乾燥肌にとどまらず、湿疹やかゆみを起こしているようだと心配になりますよね。

「かゆみをともなう皮膚疾患」として、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、乾癬などがあります。
その中でも、アトピー性皮膚炎は乳幼児期に発症する代表的な疾患のひとつです。
そしてアトピー性皮膚炎の患者数は近年増加傾向にあり、2017年で国内推計45万人と言われています(6)。また、学年別の罹患割合をみると、小学生 3.3%、中学生 2.9%と報告(7)されており、身近な疾患のひとつと言えます。

アトピー性皮膚炎に悩むお子様のイメージ図
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アトピー性皮膚炎は、気持ちの落ち込みにつながり(8)、かゆみにより勉強への障害になります(5)
今の時期、受験勉強にしっかり集中するために、肌トラブルは未然に防いであげたいですよね。そして、アトピー性皮膚炎で治療中のお子さまは、しっかりと症状を改善させて受験に望みたいところです。
中学受験を成功させて健やかな学校生活を送ってもらうためにも、冬の肌トラブルやアトピー性皮膚炎とどう向き合えば良いか考えてみましょう。

この子はアトピー?アトピーじゃない?

いまさら聞けないアトピー性皮膚炎

肌のかゆみのイメージ図
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アトピー性皮膚炎はかゆみを伴い慢性的に経過する皮膚炎(湿疹)です。
しかし、単に肌表面が乾燥しているだけではなく、その根本には皮膚の生理学的異常(皮膚の乾燥と、それに関連した皮膚のバリア機能異常)があり、そこへ様々な刺激やアレルギー反応が加わって生じると考えられています。
しかし、適切な治療をきちんと受ければ、多くの方がスキンケアを続けていればきれいな状態を長く保てるようになることを目指せます(9)

アトピー性皮膚炎は、環境要因(黄色ブドウ球菌やダニ・カビ、汗、動物の毛やフケなど)と、皮膚が乾燥しやすい遺伝的な体質によって皮膚のバリア機能が破壊されて発症します。その後、免疫系が過剰反応を引き起こし、それがかゆみにつながっていくのです。
そしてかゆみにより皮膚をひっかくことによって、さらに皮膚のバリア機能は下がり、アレルギーの炎症がひどくなっていき、そしてさらに皮膚のバリア機能が下がるという悪循環が起きていきます(10)

アトピー性皮膚炎の原因と症状の相関図
出典:堀向健太 「子どものアトピー性皮膚炎のケア」内外出版社. P58

アトピー性皮膚炎の症状は、幼児期だけでなく、学童期において症状が悪化する方も少なからずいらっしゃいます(11)
そして、アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴った湿疹が6か月以上続きます(12)
症状が長引いているなと考えられた場合は、皮膚科や小児科、内科の専門医で、さらにアレルギー専門医の資格を持つ医師にご相談ください。
日本アレルギー学会のホームページに、専門医を検索するページがあるので参考にしてみてください(13)

冷静に、根気よく治療を

アトピー性皮膚炎は専門医に相談しましょう

アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返す、慢性の皮膚炎です。
たしかに、乳幼児期のアトピー性皮膚炎の多くは自然に改善していくという報告があります(14)。しかし、年齢が高くなってくるとだんだんと自然には治りにくくなるという報告もあります(15)

アトピー性皮膚炎の治療の基本は、「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の除去」です(12)
一方で、最近になってアトピー性皮膚炎の治療選択肢が増えてきています。お子さまの症状や治療について、専門医と相談していくことも重要と思われます。

ご存じですか?塗り薬の正しい塗り方

塗り薬について、1回あたりどれくらいの量を塗るのが良いのか、迷ったことはありませんか?
最近では「フィンガーチップユニット」という方法が主流になっています(16)

チューブタイプの塗り薬を使う場合、人差し指の先から第1関節までの幅の上にしっかり出した分を両手の手のひらにたっぷり乗せるように塗ります。塗ったところにティッシュペーパーを貼って落ちないぐらい。多すぎると感じるくらいが適量です(17)

フィンガーチップユニットのイメージ図
チューブタイプの塗り薬の塗り方のイメージ図
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アトピーでも、我慢しなくて良いこともある

研究が進み、分かってきたこと

アトピー性皮膚炎治療のため生活習慣のイメージ図
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ひと昔前、「子どものアトピー性皮膚炎の治療のために、牛乳や卵・ナッツ類は避けた方が良い」などと言われていた時代もありました。しかし最近の研究結果では、特定の食物を除去してもアトピー性皮膚炎の治療には多くの場合は有効ではないとされています(18)
食物アレルギーとして明らかな場合には、その食物を除去することは有効ですが、アトピー性皮膚炎の治療としては有効ではなく、むしろ除去食をすることではっきりとした食物アレルギーを発症してしまうこともあり、さらに栄養の問題を引き起こしかねないとされています(19)
除去食に関しては、専門医に相談しながらすすめていく方法と言えるでしょう。

わが子が、受験を経て新しい環境で自分らしい生活を送るために

医師の診察を受ける親子のイメージ図
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お子さまのアトピー性皮膚炎の症状は、本人だけでなくご家族の生活にも大きく影響します(20)
夜もよく眠れずにかゆがっているお子さまを目の前にしてしまうと、「なんとか今すぐ治してあげたい」という気持ちが大きくなることはよく理解できます。医療者も同じように考えています。
そして、アトピー性皮膚炎の治療は、近年、急速に進歩してきているのです。

お子さまが辛いかゆみから少しでも解放され、受験勉強に集中して取り組むことができる。進学した後は、肌トラブルやアトピーに悩むのではなく、新しい環境で自分のやりたいことに取り組んでいける。
お父さま・お母さまとしてはそのような環境を早く整えてあげたいですよね。

アトピー性皮膚炎については、これまでの塗り薬に加えて、治療の選択肢が最近増えてきました。
これを機会に一度、アレルギー専門医や皮膚科専門医にご相談されてはいかがでしょうか。
ご家族でアトピー性皮膚炎の治療に向かっていただき、勉強にも前向きな気持ちで取り組んでいただけること、そして健やかに伸び伸びと毎日を送り、やりたいことを楽しめる学校生活を迎えられることを願ってやみません。

企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:アッヴィ合同会社

※本記事は、2部構成でお送りしています。
次回はスキンケアの重要性や、アトピー性皮膚炎への対処法と治療の選択肢について、小児科専門医・アレルギー専門医の先生からのメッセージをお届けする予定です。ぜひご覧ください。

引用:
(1) Rudd E, et al. Mask related acne ("maskne") and other facial dermatoses. BMJ 2021; 373.
(2) Kikuchi K, et al. The winter season affects more severely the facial skin than the forearm skin: comparative biophysical studies conducted in the same Japanese females in later summer and winter. Exogen Dermatol 2002; 1:32-8.
(3) Oyetakin-White P, et al. Does poor sleep quality affect skin ageing? Clin Exp Dermatol 2015; 40:17-22.
(4) Ramirez FD, et al. Association of Atopic Dermatitis With Sleep Quality in Children. JAMA Pediatr 2019; 173: e190025.
(5) Wan J, et al. Association of Atopic Dermatitis Severity With Learning Disability in Children. JAMA Dermatol 2021; 157:1-7.
(6) 平成29年患者調査(疾病分類編) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/(2021/10/13閲覧)
(7) 令和元年度 学校保健統計 https://www.mext.go.jp/content/20200319-mxt_chousa01-20200319155353_1-3.pdf (2021/10/13閲覧)
(8) Patel KR, et al. Association between atopic dermatitis, depression, and suicidal ideation: a systematic review and meta-analysis. J Am Acad Dermatol 2019; 80:402-10.
(9) 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A https://www.dermatol.or.jp/qa/qa1/index.html (2021/10/13閲覧)
(10) Egawa G, et al. Multifactorial skin barrier deficiency and atopic dermatitis: Essential topics to prevent the atopic march. J Allergy Clin Immunol 2016; 138:350-8. e1.
(11) Paternoster L, et al. Identification of atopic dermatitis subgroups in children from 2 longitudinal birth cohorts. J Allergy Clin Immunol 2018; 141:964-71.
(12) 日本皮膚科学会 「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」 日皮会誌:128(12),2431-2502,2018
(13) 日本アレルギー学会専門医・指導医一覧(一般用) https://www.jsaweb.jp/modules/ninteilist_general/(2021年10月19日アクセス)
(14) Kim JP, et al. Persistence of atopic dermatitis (AD): A systematic review and meta-analysis. J Am Acad Dermatol 2016; 75:681-7.e11.
(15) Abuabara K, et al. The prevalence of atopic dermatitis beyond childhood: A systematic review and meta-analysis of longitudinal studies. Allergy 2018; 73:696-704.
(16) Long C, et al. The finger − tip unit—a new practical measure. Clin Exp Dermatol 1991; 16:444-7.
(17) 堀向健太 「子どものアトピー性皮膚炎のケア」内外出版社 P72
(18) Bath-Hextall F, et al. Dietary exclusions for improving established atopic eczema in adults and children: systematic review. Allergy 2009; 64:258-64.
(19) Eigenmann PA, et al. Are avoidance diets still warranted in children with atopic dermatitis? Pediatr Allergy Immunol 2020; 31:19-26.
(20) Yang EJ, et al. The impact of pediatric atopic dermatitis on families: A review. Pediatr Dermatol 2019; 36:66-71.