国連とコラボで実施する「新世代のプログラム」

国連とコラボで実施する「新世代のプログラム」

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東京家政学院中学校・高等学校(以下、東京家政学院)では、2015年の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」を学びの中に取り入れ、伝統である家政学の観点から学校全体で取り組んでいます。グローバルな視点を持ちながら活躍する女性を目指し、ホームルーム活動や総合学習だけでなく、各教科の中でも世界に目を向ける授業を展開しています。その流れから中学生を対象にした「保健体育と国連のUNHCRが用意したプログラム」という異色のコラボレーションが実現。実際の授業風景を紹介しながら、目的や今後の展望についてレポートします。

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問題解決のための思考を育てるチャンス

「体育×国連」という異色の組み合わせを実現させたプログラムは、国連UNHCR協会(UNHCR=国連高等難民弁務官事務所、以下協会)による「難民と進む20億キロメートル」と呼ばれる取り組みが基となっています。20億キロメートルは、紛争や迫害で故郷を追われた世界中の難民が1年間に移動を強いられる総距離と言われています。問題意識や理解を深めながら、具体的なアクションの第一歩を踏み出すことを目的としたこのプログラム。東京家政学院と協会が手を取り合うことで、世界の重大課題のひとつである難民問題について学ぶ授業が実現しました。その目的や生徒に求める要素について、講演者であり協会の広報啓発事業を担当する天沼耕平氏、コラボ授業を企画した川邊健司先生、そして保健体育を担当する長尾大介先生からお話しいただきました。

長尾大介先生、天沼耕平氏、川邊健司先生
(左から順に)長尾大介先生、天沼耕平氏、川邊健司先生。

今回の授業を実現させるに至ったいきさつを教えてください。

長尾先生:本校では体力テストを毎年実施していますが、全国平均値をかなり下回るという結果となり、少しでも体力を向上してもらいたいとの思いで持久走などを行ってきました。ただ走るだけではなく、記録を伸ばすことを目標にしていく中で、川邊先生から「新しいアプローチがある」と紹介していただいたのが今回のプログラムでした。

川邊先生:走ることが好きではない生徒にも、実践可能な目標や新たな視野を提供することで従来とは異なった変化が生まれるのではないかと考え、難民問題を学びながら実践するプログラムを提案しました。

体育とかけ離れたテーマに思える難民問題を取り上げた狙いを教えてください。

川邊先生:どんな時代でも変らず求められる人間性の基礎としてキーワードになるのが「共感力」です。コミュニケーションを図ったり、学びを深めたりする際の土台となり、他人の苦しみを自分のこととして考えることができる能力こそが「共感力」だと考えています。中学生という多感な時期だからこそ「共感力」を身につける授業が必要です。つらいことや嫌なことも、他者と関連する自分事としての考え方や見方を持ってみる。そうすれば苦手意識も取り組み方も変わってくる。敬遠されがちな持久走についても、誰かのため、そして自分自身のため、といった切り口を提示することで変化が起こるのを期待してこの授業を企画しました。

今回のプログラムを通して、生徒にはどのような効果や成長を期待していますか。

天沼氏:難民問題を知ることは、世界の未来について考えることだと思います。同時に自分が将来すべきことを考えることでもあります。世界の諸問題を知って、自分にできることは何かを考えてほしいと期待しています。

長尾先生:苦手だったり、嫌だなと思うことでも、知識を取り入れることで見方や考え方を変えると、従来とは違った世界が見えるということを知ってほしいですね。また、新しい自分への気づきや更なる成長へのきっかけにしてくれたらと願っています。

川邊先生:このプログラムは、世界に目を向ける第一歩であり、卒業してからも必要な教養や共感力を身につけるためのスタートとして位置付けています。中3で実施するシンガポール研修や高1から始まるSDGs探究など、今後も世界に広く目を向ける機会があるので、さまざまな諸問題に対して自分がどんな行動を起こせるかを考えてほしいですね。

授業当日の風景(学校公式サイト) ≫

真摯な眼差しで授業を受ける生徒たち

協会とコラボしたワークショップ授業を体験した生徒の皆さんから感想を聞かせていただきました。

感想を聞かせてくださった生徒の皆さん

Aさん:世界には今この瞬間にも苦しんでいる人がたくさんいることを知り、とてもショックを受けました。

Bさん:難民という言葉は知っていても現状を理解できていなかったので、授業を通して問題に目を向けることができました。

Cさん:持久走もつらいけれど、難民の方々が直面している苦しさを考えたら一緒に頑張れる気がしました。

Dさん:私たちが今こうして平和に生活していることは当たり前ではないんだと気づかされました。

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編集者から見たポイント

体育と難民問題を融合させた異色のプログラム。その中には、常日頃から世界に目を向けてほしいという思いと、苦手なことに対してもさまざまな考え方を持って向き合ってほしいという願いが込められている様子が見て取れました。それは、東京家政学院の伝統と革新を融合させた女子教育の在り方を体現したものではないでしょうか。
今後も、グローバル社会の中で活躍できる女性の育成を目指し、さまざまなプログラムが実践されます。これからの東京家政学院の取り組みにご注目ください。

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