中学受験、男子校・女子校の学びで得られるものとは?(2ページ目)

別学伝統校の魅力は、先輩から後輩へと受け継がれる「文化」

あるきながら話す女子中学生

男子校・女子校には伝統校が多いという特徴があります。
伝統校には、先輩たちが持っている気質や、先輩たちが受け継いで来たバトンのようなものを後輩たちが“憧れ”を持って“正しく”受け取ろうという空気があります。

こうして受け取ったバトンを、後輩たちが先輩になったときに、また同じように後輩に渡します。学校の校風や文化はこのように受け継がれていきます。

この「先輩に対する憧れ」は、男子校・女子校で生まれやすい。男子校・女子校の多くは、先輩後輩の序列がはっきりしていることも関係しています。

別学校には、先輩を敬い、先輩に対して礼儀正しく振舞う雰囲気があります。それは、先輩が後輩に対して圧力をかけてやらせているというものではありません。1年生にとって高校生の先輩は、大人でまぶしい存在です。伝統として受け継がれてきた先輩たちの行動は「かっこいい」と後輩の目に映ります。同性だからこそ、憧れの気持ちが一層強くなります。そして、自らもいずれ「そういう先輩」になっていくのでしょう。

こういった理由から、男子校・女子校にある「先輩に対する憧れ」が、伝統校の文化の継承に大きな役割を果たしているといえます。

そして、男子校・女子校がもつ文化は、そのまま生徒たちの個性となり、その人となりとなるのです。

男女別学を色眼鏡で見ずに、可能性を探ることで志望校選びの視野が広がる

男女別学に対して偏見を持っている方は多いのではないでしょうか。
「男だけ、女だけの環境で育つと歪んでしまうのではないか。」
「世の中は男女で構成されているのだから、中高の多感な時期は、男子も女子も同じ学び舎にいたほうが、健全ではないか」
といいます。

男子校は全国でたった2%強、ほとんどの男性は共学校出身ですから、そう思うのは致し方ないのかもしれません。もちろん、男女一緒で過ごした方がよいというのは一理あります。

しかし、そのもっともらしく聞こえることに対して疑問を持ち、なぜ男子教育、女子教育があるのかを考えてみることが大事です。

そして、「わが子は別学校に合っているかもしれない」という可能性を探ることで、志望校選びへの視野が広がるのではないでしょうか。

edu’s point

中学受験を考えるご家庭が志望校を選ぶとき、「わが子の人間形成の場としてどんな環境がよいだろうか」と考えます。学校見学をして、教育方針や校風を知り、わが子に合った学校を選んでいきます。
「はなから男子校・女子校を選択肢から外すのではなく、別学校の可能性を知ってから検討してみるのも1つです」と矢野先生。
男子校がもつ「男子校らしさ」、女子校がもつ「女子校らしさ」が、お子さまの個性を存分に伸ばしてくれるのかもしれません。

~矢野先生の「学校の選び方」アドバイス~
「学校説明会や文化祭はよそ行きの場で、あまりその学校の姿が見えてきません。よって、下校風景を見ることをおすすめします。そこで生徒たちはどんな表情して学校から出てくるのか。
群れるタイプの生徒が多いとか、さっぱりした人間関係だなとか、観察してみるとよいでしょう。わが子がここに歩いて不自然さはないかなど、考えるとよいですね。」

矢野耕平(やのこうへい)さん

大手進学塾で13年間勤務の後、2007年に中学受験指導スタジオキャンパスを設立し、代表に就任。現在、東京・自由が丘と三田に2教場を構える。また、学童保育施設ABI‐STAで特別顧問を務める。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『旧名門校vs.新名門校』(SB新書)、『LINEで子どもがバカになる』(講談社+α新書)など。

男女別学校に関する、矢野先生著書
男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実(文春新書)
女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密(文春新書)
旧名門校vs.新名門校(SB新書)