【明星中学校・高等学校】本離れの生徒が図書館へ戻ってきた! 「知」の宝庫で広い視野と見聞を
インターネットやスマートフォンの普及などに伴って、全国的に中高生、及び大学生の本離れの傾向が顕著となっています。そうした現状を憂えて、なんとかしようと今年から、「図書館改革」を実施している明星中学校・高等学校。その成果は6か月ですでに見え始め、書籍貸出数は昨年比3倍となっています。
教務部・図書館担当の川邊靖先生に改革の全容、図書館の意義についてうかがいました。
■図書館改革始まる
― 具体的な改革内容について教えてください。
「図書館に命を吹き込むのは生徒」というコンセプトの下、まずは全面ガラス張りの壁面に下りていたブラインドをすべて開け放って陽光を採り入れ、美しい武蔵野の風景を眺めながら読書や自習ができる開放的な空間を演出しました。
また、出入り口に二つある両面開きのドアも、常時開放しておくことで、快く生徒たちを迎えいれる、というメッセージを伝えました。さらに、ソファを置いたりラグマットを敷いたりすることによって、図書館は居心地の良い「癒しの空間」でもあることを全面的に強調し、イメージアップも図りました。
見た目の改善の後は、いかに本への興味を引き出すか、といった発信活動に力を入れ、次のような施策をしました。
【1】生徒にとって「面白い本」「楽しい本」を集中的に配架。
【2】職員室前に図書館からの本の紹介コーナーを設置。
【3】1人最低1冊貸出キャンペーンの実施。
【4】図書委員会の活動の活発化。
【5】先生からのおすすめ本コーナーを常設。
【6】各教科と連携しての読書推進活動。
【7】川邊先生手作りの図書関連事項が掲載されたプリントを毎週、全クラスに配布。
一つひとつは小さな取り組みでも、生徒たちは本への興味を持ってくれるようになりました。「こんな本はないですか」とのリクエストがくるようになったり、試験前には自習する生徒で満席になったりと、6か月前には考えられなかったうれしい変化です。
― そもそも「図書館改革」はどういう経緯で始まったのでしょうか。
生徒たちに「本を読ませなければいけない」との使命感が、畠山校長を初め教職員全体に強くあったからです。AIの進化やグローバリゼーションによって、世の中で求められる能力が変わってきていますよね。2020年からの大学入試において、記述式の設問が予定されているということもその一つです。マークシートで測ることができた知識だけではなく、今まで以上に物事を体系的に捉え、考察し、自分の考えをまとめてアウトプットすることが必要となっています。
■本とインターネットとの融合
― そのためにも本を読むことが大切なのですね。一方で、インターネットの普及によって本離れが生じているとも言われていますが、その点についてはいかがでしょうか。
ネットで得られる情報と、本から得られるものは違うと思うのです。
日本史を例にすると、年号や人名ならばネット検索の方が手っ取り早い。
けれど、その個々の情報が連鎖して、社会がどう動いたか、どのように今につながっているかを考察するには、歴史学者などの著書を数冊読み、そこから自身で考えなければいけません。ネット上にも個人の見解はありますが、信ぴょう性は著者が責任をもって書いた本の方が高いですよね。
ですから、これからを生きる生徒には、インターネットの便利さと、本ならではの深い「知」を融合させて、広い視野と見聞を身につけてもらいたいと思っています。
「明星といえば図書館」をめざし、これからも生徒たちに本との出会いを積極的に提供してゆくつもりです。
― 本日は学校図書館についてのお話をありがとうございました。