【昌平中学・高等学校】 国際バカロレア教育で次世代を生きる力を
埼玉県初の国際バカロレア(以下、IB)ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)認定校である昌平中学・高等学校(以下、昌平中高)。
IBというと、海外の大学が受験できる大学入学資格、国際バカロレア資格の取得を目的とするディプロマ・プログラムをイメージする方がまだ多いのではないでしょうか。
そこで、IB ミドル・イヤーズ・プログラムとはどのようなものなのか、また、その取り組みについてリサーチしてきました。
■毎日の授業に取り入れられているIB授業
― IB ミドル・イヤーズ・プログラムとはどのようなものか、
また導入のきっかけをお聞かせください。
ミドル・イヤーズ・プログラムは1994年、11歳~16歳を対象に国際バカロレア機構によって、これまでの学習と社会のつながりを学ばせるという主旨で設置されました。
本校が導入した理由は、『多様な文化の理解と尊重の精神を通じ、より良い、より平和な世界を築くことに貢献し、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的とする』といったIBの理念が、まさに生徒たちに私たちが授けたいものだったからです。
また、2020年に予定されている大学入試改革に対応する力も身につくと考えました。
― どのような授業なのでしょうか。
特別にIBのクラスを設けているのではなく、中学校の全生徒が教科ごとにIBの授業を受けています。国語、英語、数学、地理、化学、物理、体育…、各科目において毎日のようにIB対象科目があります。
内容は調べ学習、グループワーク、ディベート、発表、作品制作など教科によってさまざまですが、授業はすべて生徒主体です。
■考える体育で考える力を鍛える
― 体育でのIB授業もあるのですか? どういったものなのでしょうか。
たとえば、長距離のタイムをどうやったら縮められるか、心拍数を計測した上で、トレーニング方法も考えます。サッカーでは作戦を立て、実践し、試合後もチームのみんなで『何ができて何ができなかったのか、何を考えなければ改善しないのか』を振り返るのです。言うなれば『考える体育』です。
― 体育でも思考力やコミュニケーション力を鍛えるということですね。
そのほかの授業もふくめ、生徒さんの反応はいかがでしょうか。
楽しんでいますね。それが一番です。身体で感じたこと、さらに楽しさが伴ったことがらは一生頭に残りますよね。また、普段はおとなしい生徒が、ディベートの際に下調べをしっかりやって、当日は理路整然と主張するなど、IBの授業では通常の授業では見えない生徒の顔を見ることもできます。
■加点法のIB学習で拡がる生徒の可能性
― 生徒さんの新しい側面、ポテンシャルが見えてくることがあるのですね。
はい。それは、IBがペーパーテストとは異なり、加点法だからといったこともあると思います。なので生徒たちは失敗を怖がらずにどんどんやっています。その結果、私たち教員の想定を超えた成果が出ています。
IBの学習は中学3年生でプロジェクト学習と連携し、社会貢献に取り組むコミュニティープロジェクトへ展開していきます。
例を挙げれば、ある生徒はエネルギー問題をテーマに、ポスターを作成して駅に貼ったり、Webサイトまで作ったりして訴求方法を具現化しました。地域の英語教室へ行き、子どもたちに英語を教えた生徒もいました。
このように生徒の可能性に限界を作らないのもIB授業のよい点です。
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IB一期生の中学3年生は、IB認定校として気負うことなく自由に、その一方では前例がないゆえに先駆者として頑張っているようです。それを引き継ぐ後輩がどのようにIBを発展させていくのか、今後も注目したいですね。
★昌平中学・高等学校