「本当にすごい！」この言葉が、取材中、何度も口をついて出てきました。
部員が操る人形が、音楽に合わせて縦横無尽に動き回る様子に、とても驚かされました。
 

 
八王子の歴史と地域に根ざし、豊かな人間を育成している八王子学園八王子中学校・高等学校（以下、八王子学園）。その八王子学園ならではの部活、車人形同好会の練習を見学してきました。
  

■車人形とは？

車人形とは、八王子周辺地域に江戸時代末期から伝わる伝統芸能で、国の選択無形民俗文化財、東京都の指定無形文化財にもなっています。
人形を使った日本の伝統芸能である文楽では、通常、1体の人形につき3人の演者が必要です。それを、「ろくろ車」に乗り、1人でも演じられるように工夫したのが車人形の始まりです。1人で演じることで人形の動きにスピードを出せるようになり、演じる場所や演目の幅も広がりました。
八王子学園の車人形同好会は、海外公演などで世界を飛び回る西川古柳の5代目家元からも直接指導を受けつつ、普段は学校の教室で週1回活動し、八学祭などの公演に備えているとのことでした。

■3つの演目を間近で！

早速、車人形の踊りを見せてもらいました。

『三番叟（鈴の段）』
鈴を持って踊るのが特徴。歌舞伎、狂言など、日本の舞踊に欠かせない演目で、「三番目に偉い神様が人間界に降りてきて田畑を浄化する」というストーリーのある踊り。公演の最初に舞い、五穀豊穣を祈るという意味合いがあるそうです。

『シェリト＝リンド』
和洋折衷の演目で、八王子学園の車人形同好会を指導してくださっている第5代西川古柳家元が振り付けを考案したそうです。文楽ではなく車人形だからこそできる動きで、車人形のグローバル化に貢献しています。

『千本桜』
部員がみんなで試行錯誤しながら振り付けを考えた、車人形同好会のオリジナル演目。キャッチーなメロディにぴったりのスピーディな動きは圧巻でした！

 
1体の人形を全て1人で操れるようにするための様々な工夫と、そのことによる動きの自由さ。最初に車人形を考案した初代西川古柳は天才だったに違いありません。
   

■メンバーの声

見事な3つの演目を見せていただいた感動も覚めやらぬまま、4人の部員に、お話を聞かせていただきました。
 
部長の伊藤さん（高1・車人形歴4年）

入学したときに配布された部活動一覧を見て興味を持ったのが入部のきっかけです。「車人形？ 活動しているの？」なんて言っていた友だちでも、実際に私たちの踊りを見た後には「すごい！」と感動してくれます。嬉しいですね。初音ミクの曲で有名になった『千本桜』でオリジナルの演目を作ってみるなど、伝統を守りながらもすごく自由度の高い活動ができるのが魅力です。
  
副部長の佐藤くん（高1・車人形歴4年）

車人形同好会は本当に珍しい部活で、全国でも僕たちにしかできないことをやっているんだと思うと誇らしいですね。僕は歴史が大好きなので、史実に由来したような演目にはロマンを感じますし、歴史上に名が残っているような演目を自分たちでもやれることにすごくワクワクします。活動は週1回なので、勉強とも無理なく両立できます。
  
中山くん（高1・車人形歴2年）

最初は他の部活に入っていたのですが、勉強との両立が大変になって車人形同好会に移りました。八王子の伝統芸能に触れるという滅多にできない貴重な体験ができるのがすごいところだと思います。学年も男女も関係なくみんなの仲が良いし、勉強や生活に負担なく参加できるので、本当にオススメの同好会です。
  
竹之内さん（中2・車人形歴1年）

曲に合わせ、命が吹き込まれたかのように踊る車人形の動きには迫力があります。私はボランティア部にも入っていますが、兼部も無理なくできます。車人形の踊りを見て、ちょっとでも興味を持ってくれた人には「一緒にやってみようよ！」と言いたいです。すぐにみんなと仲良くなれますし、私も自信はありませんでしたが、半年くらいで簡単な演目ならできるようになりました。車人形、やってみると楽しいですよ！
  
勉強や他の部活とも無理なく両立できて、地元の伝統芸能に触れるという貴重な体験ができる八王子学園の車人形同好会。他ではできない体験をしたい中高生には是非オススメしたいと感じました。

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