【八王子学園八王子中学校・高等学校】広島そして京都・奈良を巡る修学旅行
八王子学園八王子中学校・高等学校(以下、八王子学園)の中学2年生が行く、広島、京都・奈良を巡る修学旅行。行き先としてはポピュラーですが、広島と京都・奈良の両方面を組み合わせた日程に何かねらいがあるのでしょうか。
引率された谷口明博先生にお話をうかがいました。
被爆国という一面、伝統文化継承という一面
日本を海外で紹介できるための教養を
― さっそくですが、一度に広島と京都・奈良を回るのはどうしてですか。
本校は、日本人としてのアイデンティティを明確にすることも教育目標に掲げています。
今後のグローバル社会で英語力、コミュニケーション能力が求められるのはもちろんですが、その話す中身の深みや質も重要です。それを高めるためにも、自分が生まれ育った国のアイデンティティの確立は大切だと考えているのです。
― そのために被爆地と、古都を訪れるということでしょうか。
日本が広島と長崎に原爆を落とされた被爆国であるということ、
また、京都・奈良には今に受け継がれる日本文化があることを、
机上の知識だけでなく、実際に現地で見て、体感してほしいと思っています。
観光ではなく、学習の一環という位置づけ
覚えた知識を見て、感じて、考える
― 修学旅行は観光ではなく、学習であるという点から、事前学習をしっかりされたとお聞きしましたが、生徒のようすはいかがでしたか。
今回の修学旅行は入学以来の平和学習の総まとめであり、高校での沖縄修学旅行へつながるものです。中学1年では八王子空襲について学び、中学2年の前期の探究ゼミは「修学旅行先について調べよう」をテーマに各自で調べ、八王子在住の被爆者の方にお話も聞きました。正直、行く前に相当知識を入れてしまったので、現地での驚きや感動が薄れ、知識の確認に終わってしまうのではないかといった懸念もなかったとは言えません。
ですが、やはり本物を見聞きするというのは違いますね。
生徒が「原爆ドーム」や「原爆の子の像」を静かに見入り、被爆者の方のお話も普段は見せないような真剣さで聞き入っている姿を目にしました。
奈良の大仏も寸法は頭にあっても実際に見上げたときの大きさの実感、京都の友禅、西陣織、組み紐などの伝統工芸品がいかに繊細な職人の手作業でつくられているかなど、体験による感動が多くあったようです。
― 知識の確認に終わらない、それ以上のものとは何だったのでしょうか。
戦争はいけないといった概念も広島で実際に事実を見聞きすることによって、さらに強く心にとどめ、よく知らない人には自分たちも伝えていかなければと考えた生徒が多くいました。知識が体験を伴うことにより深いものとなり、さらに自分なりの考えを生じさせることを知ったのは生徒たちにとって大きな収穫です。
もちろん、戦争のことだけでなく、日本古来の美意識なども正しく発信していけるようになっていってもらいたいと思っています。
中学3年で行くオーストラリア語学研修で、現地の方々に日本を紹介する際にこの修学旅行で得たものが活かせるでしょう。
生徒たちのアンケートを読むと、広島では戦争の悲惨さを再認識し、奈良・京都では悠久の日本文化に誇りを持ったようすがうかがえます。
グローバリゼーションの中におけるアイデンティティーの重要性をお話しくださった
谷口先生も、この修学旅行での確かな手ごたえを感じていらっしゃるようでした。