7月のテーマ「中学受験の夏休みの過ごし方【後編】」

inter-edu’s eye
今回は、前週に引き続き和田みゆき先生、たなかみなこ先生に「夏休みの過ごし方」というテーマで、ご自身の経験に基づくアドバイスをうかがいました。夏休み前のこの時期必見の内容です。

和田 みゆき先生諦めない気持ちを作る“自己効力感の育て方”
和田 みゆき先生

自分の能力に対する信頼感

夏休みの過ごし方3

みなさま、こんにちは。「才能開花で目標達成」をテーマに、子育てアドバイスをしている家庭教育家の和田みゆきです。

前回に続き夏休みの過ごし方というテーマで、今回は家庭で行うメンタルサポート「諦めない気持ちを作る“自己効力感の育て方”」をお届けします。

最近、モチベーションや自信についての記事などで“自己効力感”という心理学用語を目にすることが増えてきました。

自己効力感とは、困難な状況になっても「自分ならできる」という自分の可能性と自分の能力に対する信頼感のことで、受験生でいうと「自分はこの問題を解ける」「入試に合格する」という前向きなセルフイメージのことです。

この前向きなセルフイメージを持つには、自信(=自己効力感+自己肯定感)を持っていることが不可欠で、様々な研究から、自信のあるなしは学業成績に大きな影響を与えることもわかっています。

ここまで関係性が明確なのであれば、我が子に自信を育てない手はありません。今身につければ一生ものの財産にもなります。

そこで私は娘の小6の夏休みに、受験勉強は教えられないけれども、諦めない気持ちや自信を育てることなら私にもできると思い、自己効力感の育て方を調べました。

そして毎日塾で成果が求められて心が疲弊しそうになったときに、解けない問題や時間内に終えられないことをものともしない諦めない強い精神力と「私ならできる!」という自己効力感を育て始めたのです。

育て方のポイントは4つ

私は自己効力感を育てるために、次の4つのことをしました。

①小さな成功体験の積み重ね(達成体験)
受験勉強でいう小さな成功体験とは、解く問題が正解するということです。私は記憶術を参考にして、1つの問題を3回連続で正解するまで続ける方式を娘に提案しました。連日同じ問題を解けば、ほぼ3度目には正解でき小さな成功体験が積めました。

②他人の経験の疑似体験(代理体験)
娘にはプロゴルファーを目指すクラスメイトがおり、二人はクラスの中でも突出した夢を追いかける存在でした。私が「応援し合えるいい仲間ね」と声を掛けたことをきっかけに、毎晩行動を報告し合うようになり、一人が好成績を出すともう一人も影響されいい結果を出すようになったのです。

また「受験のことをクラスで隠さなくていいよ。あなたの夢への挑戦はみんなにとってもよい影響を与えるのだから」と伝えました。受験を秘密にする学校生活を過ごさせるのではなく、娘が夢に挑戦する姿や失敗する姿をみんなに見せて代理体験をしてもらうことで、切磋琢磨し合える仲間づくりをすることが大切だと思ったのです。

③言語的な励まし(言語的説得)
私は足りないところや欠けているところに注目するのではなく、「デキテイル」ところや「デキルヨウニナッタ」ところを丁寧に拾い上げて、娘の耳に残るように言葉で伝えました。

④自分や友達の成功体験を想像する(想像的体験)
娘の第一志望校に通学中の生徒さんからレアな学校情報をうかがったり、自分が通学していることを想定した未来日記を書かせました。

和田みゆき先生からのアドバイス

自己効力感とは、心理学用語で、カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した社会的学習理論の概念です。

簡単に言うと、人はうまくできそうだと思えば行動を起こしますし、できそうにないと思えばためらってしまうもので、「自分ならできる」という信頼感は大切だということです。この力はモチベーションにも繋がり、困難に立ち向かう原動力になるのです。

自己効力感が高いと、「きっと合格できる」「何が何でも合格する!」「誰よりも努力したから大丈夫」など、ポジティブ思考で、成功者の真似をしたり創意工夫をするなど主体的に行動します。この行動がよい結果に繋がりやすいのです。

一方、自己効力感が低いと、「たぶん合格はできない」「自分よりできる人は大勢いる」「入試までに学力は追いつかない」「どうせ自分なんて受からない」などとネガティブに考えて、主体的な行動がとれません。当然最後の踏ん張りがきかないので、できないと思うと途中で投げ出すので、良い結果に繋がりにくいのです。

全ての結果は、思考が鍵を握ります。お子さまがどのような気持ちで受験勉強に向かうのかで、結果は変わるのです。受験勉強は決してつらいものではありません。自分の夢を叶える楽しいチャレンジであり、未来への扉なのです。

初めは自信が持てないかもしれません。でも誰にでも始まりはあるのです。ぜひこの夏休みに自己効力感を育てて、明るい未来にチャレンジするお子さまに育ててみませんか? みなさまの受験サポートを心から応援します。

たなかみなこ先生小6の夏休みの過ごし方
たなかみなこ先生

家で勉強しない夏休み

夏休みの過ごし方4

みなさま、こんにちは。「最高に楽しい中学受験を叶える!」勇気づけ子育てコーチのたなかみなこです。前週は、娘が小5のときの夏休みについて書かせていただきました。今週は、中学受験の天王山と言われる小6の夏休みについてお伝えしていきますね!

我が家の娘は、小6の8月に入ってから第一志望校を共学校から女子校に変更したため、夏休みに突入した時分は、まだ本当の本命校を目指してはいなかったことになります。ですが、子どもって柔軟で適応力があるものですね! 夏休みの間に志望校を変更したことで焦ってしまい、混乱が起こるのでは?と心配をしていたのですが、まるで最初からその女子校が第一志望だったかのように感じてしまうほど影響はなく、ホッとしたことを覚えています。

夏休みの予定としては、前期の夏期講習と後期の夏期講習があり、その間に夏合宿(3泊4日)、塾のないお休みは10日ちょっとでした。

夏期講習がある日のスケジュールは、

●塾の自習室開放(9時40分~12時40分)
↓移動&昼食
●塾の夏期講習(夜まで)

という流れがスタンダード。
そのため、夏期講習がある日は自動的に勉強時間は確保されていたので、私の心配といえば昼食(お弁当を届けるかどうか?)と、夜のお弁当のお届けのことでした。
夏休み中も仕事や自身の資格試験への勉強があり、時間のやりくりが必要だったので…。働く母にとっての夏休みは、子どもオンリーにできないため、仕事との兼ね合いや時間の調整が大変だったなと思います。

意外に精神的に楽だったワケ

そうは言うものの、実は、意外なことに小6の夏は精神的にはラクだったのです。というのも、先週の記事にも書きましたが、娘は、「お友達と勉強すると楽しいしはかどる」という経験を小5のときにしていたので、私がやきもきすることが少なくて済んだからです。

娘が通っていた塾では小6になると、夏休みに限らず自習室の開放日があります。先生に質問できる自習室ではなく、塾の仲間と一緒に自主的に勉強する環境でした。娘は自習室の常連で、開放日はほぼ100%全ターム(1ターム=50分勉強で10分休憩。夏期講習がある日は午前3セット、夏期講習のない日は午後6セット)通い、分からないところを、その科目が得意なお友だちに教えてもらっていたのだそうです。
また、自習室の開放がない日は、塾の同じクラスのお友達と約束をして一緒に図書館に行ったり、カフェに行ったりと、毎日学習できる環境を娘自ら作っていました。 自習室の時間と同じく「50分勉強で10分休憩」というサイクルにして、休憩の10分で何をするか?をお楽しみにしながらみんなで頑張っていたみたいです。
思い返せば、そのときに一緒に勉強していたお友達みんな、御三家を含む第一志望校に合格しています。 切磋琢磨できる仲間同士で頑張れたことが大きかったのではないかと思います。

私が手伝ったことは、遅い時間になったら迎えに行くことくらいでした。
「こんな風にどんどん一人で行動できるようになっていくんだな。」
私にしてみれば、幸せな自立に向かっていることが嬉しくもあり、同時に淋しくもあり…。中学に入学したら、こんな感じになっちゃうのかな?という複雑な気持ちでした。ですが、この「自らお友達との学習環境を作る経験」が、娘にとって「自分でできる」大きな自信となり、秋以降の娘を支えてくれていたようです。

たなかみなこ先生からのアドバイス

みなさまは、どのようにしてお子さまのモチベーションを上げていますか?
私のメールレターの読者さまからは、

 ●その日にできたこと(勉強)にシールを貼って、ポイント制で好きな本や文房具が買えるようにする!
 ●確認テストで合格点や100点取ると50円、100円などお金をあげる!

などの方法をよく使います、とのメッセージが届くことが多いですね。「ご褒美をあげる」つまり「報酬」でモチベーションを上げる方法です。

さて、このように「報酬」を使う方法で、一過性ではない継続したやる気を保つことはできるのか?を調べてみました。

『心理用語の基礎知識(有斐閣ブックス)』によると、「将来にわたっての学習意欲は受け身の学習、外因的な報酬によっては育たない。内発的動機づけによる自発的学習が将来にわたっての学習意欲を育てる。」

とあります。心理学的には、「外からの動機づけではなく、内から湧く動機づけで自発的に学習することが、将来にわたっての学習意欲を育てることになる」ということですね。 では、どうすればいいのでしょう?

我が家では、勉強はすべて塾にお任せしていたので、私自身は志望校のことを調べ、中学入学後が楽しくなるような会話を多く心がけていました。
また、第一志望校にちなんだお守りを作り、合格のその先にワクワクできるような工夫をしました。娘に聞くと、その会話や働きかけに勇気づけられ頑張れたのだとか。

親子で合格の先に得られる未来を語り合うことで、心に火を灯し続けることに成功したのだと思います。 あなたのお子さまはどんな働きかけがワクワクするでしょうか? ぜひ「内から湧く動機づけ」を心がけ、自発的学習への働きかけを意識してみてください。

7月のワンポイントアドバイス
たなかみなこ先生の心理学「共感【後編】」

今月は、勇気づけ子育てコーチのたなかみなこが、「共感」についてお伝えしています。
前回もお伝えしたようにアドラー心理学の「共感」とは、一般的な「共感」とちょっと違いましたね。「人によって異なる私的な価値観(アドラー心理学では「私的感覚」といいます)に基づく筋の通った行動」を「私的論理」といい、その「私的論理」まで理解することを、アドラー心理学では「共感」というのですね。そして「共感」をマスターすることができれば、お子さまに勇気くじきをしてしまう悪習をストップでき、やる気を引き出すヒントを得ることができるのです!

どうすればマスターできるのか?ですが、例えば、目の前に見たこともない宇宙的な変わった服を着ていた人がいたとします。「どうしてこんな服を着てるの?」と不思議に感じるのではないでしょうか?
もし声をかけることが可能ならば「どうしてその服を着ているのですか?」と尋ねると思います。

この感覚と同じような客観的な目で、お子さまを見てみてほしいのです。

「この子は朝早く起きたのになんで長い時間ぼーっとしているのかな?」
「この子は勉強よりもゲームに熱心なのはなんでかな?」

こんな風に頭に「?」を浮かべ、冷静になってちょっと俯瞰してみる感じです。 一見当たり前のように見える日常の行動でも、実は、お子さまにとっては、私的な価値観、即ち「私的感覚」に基づく筋の通った行動なのです。つまり「私的論理」に沿っているのです。

お子さまを見ていて「?」と感じたとき、その部分にフォーカスしてみましょう。 そしてお子さまの行動をよく見て、推量したり、質問してみることで、お子さまのことをもっともっと理解できるようになり、結果として「やる気が出るパターン」も見えてくるはずです。

我が家の場合は「否定する」「追い詰める」は全くダメで、「任せるね」「信じてるよ」と言葉で伝えることがやる気の原動力となったようでした。 ぜひ、たくさんお子さまを観察し、「私的論理」を理解し、オーダーメイドでのやる気の引き出し方を探してみてくださいね。

次回はイライラ対処法【前編】です。

和田みゆき先生

和田みゆき先生 プロフィール

家庭教育家。家庭教育アドバイザー。家庭教育師。学校法人八洲学園、学校法人文理開成学園理事。
娘の幼少中受験経験あり。とくに中学受験では独自の子育てメソッドを用い、直前模試で偏差値20離れていた最難関共学校に合格。受験5日目まで合格通知なしという経験をするが、メンタルトレーニングで培った強い精神力でリベンジをし、最終的に受験校全校より合格をいただく。その経験から、2010年より各種心理学、脳科学を活かした子育てメソッドと受験サポートプログラムを中学受験生保護者に提供。現在まで2000人を超えるサポートを行う。 他にも大手個別指導塾や小学校での保護者向け講座や、企業にて人材育成研修を提供している。
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たなかみなこ先生

たなかみなこ先生 プロフィール

娘が2歳半のときにコーチングでの子育てを開始。毎日、娘をコーチングで育ててきた自称「リアル子育てコーチ」。幼稚園受験、小学校受験を経験するも、コーチングスキルも道半ばで、誘導的になってしまったこともあり、敗退。その後、日々の娘との対話により、コーチングのスキルを高め、さらにアドラー心理学の「勇気づけ」を学び実践することで、独自の子育てコーチング「勇気づけ子育てコーチング」を確立。娘を女子御三家合格に導くだけでなく、中学受験ママを支援し、御三家を含む多数の第一志望校、難関校合格をサポート。「中学受験で子どもと一生の絆ができた」と好評を得る。 元ANAグランドスタッフであり、大学・専門学校でキャリア教育を行う講師でもある。
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次回は体験学習と受験勉強【前編】です。

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「ママコ・ネクション」では、和田先生や、たなか先生によるレクチャー会と座談会を開催予定です。中学受験を通し、悩んでいることについてアドバイスを受けることもできます。

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