10月のテーマ「苦手教科のメンタルサポート【後編】」

inter-edu’s eye
今回は前週に引き続き和田みゆき先生、たなかみなこ先生に苦手教科のサポートというテーマで、アドバイスをうかがいます。実体験に基づいた具体的なサポート方法とは?

和田 みゆき先生受験は私たち親の人生ではなく娘の人生
和田 みゆき先生

塾の先生の一言から考えを改める

メンタルサポート1

みなさま、こんにちは。「才能開花で目標達成」をテーマに、子育てアドバイスをしている家庭教育家の和田みゆきです。

10月も後半になり、入試まで残り3か月を意識する時期になりました。この時期私は入試日を意識し、焦る気持ちと経験こそ大事だから楽しくサポートしよう!という思いで複雑な心境だったように思います。今回は前回のメンタルサポートと同時に行ってきた苦手教科の家庭学習サポートについてお届けします。

我が家は娘の受験ストレスを軽減するために「勉強は塾で行い、家庭では勉強をしない」という方針をとっていました。しかし転塾直後に「家庭では親子げんかになるから勉強させない? 塾の自習室で毎日4時間勉強させるということですが、ご両親のサポートでお子さまの力が増すこともあるのです。苦手分野の克服は子どもにとって辛いので寄り添ってあげてください」と言われてしまったのです。

私たち夫婦は、受験に合格すればすべてよしではなく、過程を重要視していたので、例えば夢を叶えるために全力で取り組むことの大切さや、自分で考え行動すること、そして何よりも自分の未来は自分で拓けることを感じる受験生活を過ごして欲しかったのですが、先生のご意見に深く共感したのと、そもそも受験は娘の人生なので、本人の意思が大事です。娘にどうしたのか確認すると「合格するなら何でもやる!」即答でした。 こうして朝30分・就寝前30分の脳の活性化と暗記学習、基礎学習が始まりました。

苦手教科克服のためにしたことは?

苦手教科の家庭学習は、朝夜30分の暗記学習と漢字・計算の基礎学習でした。模試の結果などから苦手分野を分析し、第一志望校の出題率と照らし合わせて優先順位を考え、ひたすら問題を解く方法で進めました。気をつけたのは、30分と決め、終わり時間を守ることでした。理由は、終わりが見えないと学習効率が下がり不正解が増えるからです。

娘は下校後夜9時まで塾の自習室で4時間勉強をしていたので、苦手分野の克服のための家庭学習は朝夕各30分。夜の暗記学習は軽めのインプット。国理社の学習漫画や日能研のメモリーチェックの読書程度。翌朝の学習は、計算問題から始まり、漢字20問、国語の知識問題20問、前夜に読んだ分野の問題を解きました。夜暗記と翌朝の問題は同一問題です。記憶の整理は睡眠時間中に行われるので、就寝前の暗記と翌朝のアウトプットは最重視しました。

また何度も間違える問題は、香りにより記憶を呼び覚ます「プルースト現象」を利用しました。暗記時と解答時に同じアロマを焚きます。そして受験当日はこのアロマをハンカチに染み込ませて持たせました。

暗記方法は、記憶の仕組みを使い、書いて覚えるのではなく、見て読んでひたすら問題を解く方法を使いました。また『受験手帳』の著者荘司雅彦さんが提唱する3回転学習法も参考にしました。娘は同じ問題を3日連続で正解するまで解き、3回連続で正解になったら3日空けて解き、1週間空けて解き、3週間空けて解いていました。

和田みゆき先生からのアドバイス

「私はやればできる!」という自己効力感は、受験生にとって大切なスキルの1つです。親が褒めたり勇気づけても、子どもの性格によっては客観的に示すデータがなければ、実感できないので高まりません。

7月の後半の記事でもお伝えしましたが、この自己効力感はやる気やモチベーションの土台となる自分への信頼感です。 子どもが自分を信頼できるように、「自分は本気になれば結果を出せる」という実績を親が手伝い形にしておくと、セルフイメージが下がってやる気が出ないときに、自己効力感を上げるきっかけになります。ただし一度だけの実績ではダメで、継続し続けたから成績が上がったという事実が大切です。

実績を形にする方法には、成績や勉強量の可視化があります。

例えば、解答したノートに丸付けするのではなくて、問題集そのものに〇×つけをして、問題を見ればいつ何度間違えたのか正解したのかが一目瞭然で分かるように表記したり、苦手な問題を正解したときの解答用紙やノートなどを見える位置に貼ったり、解いてきた問題集やノートを重ねて置き、今までの努力量を見えるようにするのもいいと思います。

昨今「セルフイメージは、結果を変える」ことが科学的に証明されています。低いセルフイメージは本来持っている力を発揮できなくなるだけでなく、気持ちの萎縮もさせてしまうのです。苦手教科を苦手だと感じる理由は練習量が少ないからうまくいかないだけで、何度も解けばできるようになることと今までの実績を伝え、一時も早く苦手意識を手放させてあげましょう。

たなかみなこ先生模試の最中、パニックに
たなかみなこ先生

目の前が真っ暗になってしまうことも…

メンタルサポート2

みなさま、こんにちは。「最高に楽しい中学受験を叶える!」勇気づけ子育てコーチのたなかみなこです。

前回は、通っていた塾の方針で受験した模試でのエピソードから「メンタルサポート」を考えてみました。今回は、自主的に受験した模試でのエピソードを交えながら「メンタルサポート」を考えていきたいと思います。

自主的に受験した外部の模試は、娘にとっての第一志望校に特化した内容のものでした。その試験中の出来事です。
算数の問題が分からなくて焦ったとき、頭が真っ白になり、冷や汗が…と思ったら、小学校のクラスメートからの暴言がフラッシュバック。そして、目の前が真っ暗になってしまったことがあったのだそうです。
そのことを話してくれたのは、12月に差し掛かった頃、模試の結果も出て(合格可能性80%)ホッと胸をなでおろしていた時期のことでした。
いつものように、対面に座って何気ない会話をしていたとき、急に娘が、
「分からない問題があると、目の前が真っ暗になっちゃうんだ。暴言がぐるぐる聞こえてきて怖いんだ…。」と言い出したのです。

なんのことか分からず
「そうだったんだ…。それっていつからなの?どんな暴言が聞こえてくるの?」 と、それだけ問いかけ、後は傾聴に徹しました。

傾聴して分かったことは、小学校のクラスメートから言われたことを真に受けてしまい、それがフラッシュバックしてしまうのだと…。かなり気持ち的に病んでしまっているようでした。

ネガティブをポジティブに変える

娘の気持ちをリフレーミング(今月のワンポイントアドバイスをご参照ください)しながら聴き終えた後、私の中にある仮説が浮かびました。

「そのクラスメートは娘に好意があっただけで、その気持ちの裏返しだったのでは?」
というものです。そこで、娘に率直にそう訊いてみました。
すると「そうかも!」という返事が!

そこで一緒に、「好意」の証拠探しをしていきました。検証を進めていくうちに、娘の中にあった「不安、恐怖」が「喜び、嬉しさ」に変わっていくのを感じました。ひとしきり話し終えた後に、
「あなたを嫌いだから言ったのではなく、好意があったってことだったんだね!」、
と、改めて言い直しをしました。

すると、娘は泣き出してしまいました。
「うん、私もそう思う。」
安堵の涙でした…。

もし、こんな風に不安や恐怖を取り除くことができないままだったら、分からない問題にぶち当たったら最後、再び目の前が真っ暗になってしまったのではないかと思います。もし、マイナスのメンタル状態のままだったら…。
2月1日の本番に向けての日々は、さぞ怖かったのではないだろうか?と思います。

私たち親にとってはどんなに小さなことに思えても、子どもにとっては重大な「メンタルをマイナスにする要因」になり得ることもあります。
「子どもだから」といって軽んじることなく、どんなことでも傾聴し、一緒に考えたり、検証したり、仲間であり続けること。
中学受験を志す子どもを持つ親だからこそ、子どものメンタルを決して軽視してはいけない…そう思える出来事でした。

たなかみなこ先生からのアドバイス

中学受験の試験問題は、大人であっても手が出ないほどに難しいものが多いなと感じます。だからなのか、子どもを子どもと思わずに大人と同じであれ!とばかりに容赦なく対応してしまうことはないでしょうか?

私自身は「もう娘は自立してるし」などと高を括ってしまっていました。ですが、考えてみれば小学校6年生であっても、まだ人生経験は10年ちょっとです。子どもにとって安心基地でありたい私たち親だからこそ、子どものメンタルサポートをしっかりしていかなければいけない…そう自戒の念を込めて書いていきたい思います。

今回のエピソードでは、娘が病んでしまったことを「リフレーミング」という手法を使って一緒に発想転換、意味の書き換えを行ったとお伝えしました。
ですが、このとき、実は内心私はうろたえていました…。
「このままトラウマのようになってしまったらどうしよう? この子の受験はもううまくいかないのでは?」
そんな不安でいっぱいになってしまったのです。
ですが、そんな気持ちにストップを無理やりかけて、必死に「リフレーミング」することに。すると「ピンチはチャンス!」「あとは解決するだけ!」と捉え直してみることができました。落ちつきを取り戻した私は、改めて娘に寄り添うことができ、そして解決することが出来たのですが、このような不安や焦り、心配な気持ちにストップをかけて「リフレーミング」できるようにするには、普段からの練習が大切だなと改めて感じた次第でした。

とくに小学校6年生の秋以降、こうした練習を親が普段から行っておくことも中学受験において大事なことの一つなのかもしれませんね。

10月のワンポイントアドバイス
たなかみなこ先生の心理学「リフレーミング【後編】」

今月は、勇気づけ子育てコーチのたなかみなこが、気持ちがラクになる、ネガティブをポジティブに変える心理学の手法のひとつ「リフレーミング」についてお伝えしています。

今回の後編でも、前編に引き続き「意味(内容)のリフレーミング」について、さらに実践的な内容をお伝えしていきますね!

たとえば「失敗」についてあなたはどうお考えでしょうか?
「失敗は絶対にしてはいけない」ものですか?
それとも、エジソンのように「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」のように捉えていますか?
同じ「失敗」という言葉ですが、捉え方によって、ネガティブにもポジティブにも捉えることができますよね。

であるならば、できることなら中学受験においてはすべてポジティブに捉えてお子さまを最大限応援したい!
好ましくないことが起こったときには「ピンチはチャンス!」や「このプロセスはチャレンジの証」などと見方(視点)を変えて勇気づけていきたいものです。

では、例えば、模試でお子さまが残念な点数を取ってきたとします。どうリフレーミングできそうでしょうか?

●「苦手な単元が分かってよかったね!」
●「次に向けての課題が見えてきたね!」

我が家では、本当にひどい点数のときは「さすがママの子だね!」と明るく笑いとばすことにしていました。
あなたはお子さまにどんなリフレーミングができそうですか? お子さんの顔が思わずパッと明るくなるような、そんなリフレーミングをたくさん探してみてくださいね!

次回は自律と伴走【前編】です。

和田みゆき先生

和田みゆき先生 プロフィール

家庭教育家。家庭教育アドバイザー。家庭教育師。学校法人八洲学園、学校法人文理開成学園理事。
娘の幼少中受験経験あり。とくに中学受験では独自の子育てメソッドを用い、直前模試で偏差値20離れていた最難関共学校に合格。受験5日目まで合格通知なしという経験をするが、メンタルトレーニングで培った強い精神力でリベンジをし、最終的に受験校全校より合格をいただく。その経験から、2010年より各種心理学、脳科学を活かした子育てメソッドと受験サポートプログラムを中学受験生保護者に提供。現在まで2000人を超えるサポートを行う。 他にも大手個別指導塾や小学校での保護者向け講座や、企業にて人材育成研修を提供している。
和田みゆき先生のInstagramはこちら>>

たなかみなこ先生

たなかみなこ先生 プロフィール

娘が2歳半のときにコーチングでの子育てを開始。毎日、娘をコーチングで育ててきた自称「リアル子育てコーチ」。幼稚園受験、小学校受験を経験するも、コーチングスキルも道半ばで、誘導的になってしまったこともあり、敗退。その後、日々の娘との対話により、コーチングのスキルを高め、さらにアドラー心理学の「勇気づけ」を学び実践することで、独自の子育てコーチング「勇気づけ子育てコーチング」を確立。娘を女子御三家合格に導くだけでなく、中学受験ママを支援し、御三家を含む多数の第一志望校、難関校合格をサポート。「中学受験で子どもと一生の絆ができた」と好評を得る。 元ANAグランドスタッフであり、大学・専門学校でキャリア教育を行う講師でもある。
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次回は志望校へのモチベーション維持と学校見学【前編】です。

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