学校生活と中学受験勉強のバランスの取り方

inter-edu’s eye
9月は、和田みゆき先生が学校生活と中学受験勉強のバランスについて、休息や睡眠の取り方を中心にご紹介します。悩めるお母さま必見です。

和田 みゆき先生受験サポートを楽しもう
和田 みゆき先生

学校行事が多い二学期!勉強とのバランスは?

学校生活1

みなさま、こんにちは。「才能開花で目標達成」をテーマに、子育てアドバイスをしている家庭教育家の和田みゆきです。

先月のテーマ「体験学習」はいかがだったでしょうか。今月は「学校生活と中学受験勉強のバランス」について、休息や睡眠の取り方を中心にお届けいたします。

我が家では、娘の中学受験を決めてから、常に考えていたことがあります。それは「中学受験は人生の一通過点であり、ゴールではない」ということです。親子で子どもの人生の軸をどこに置くのか考え、受験の立ち位置を明確にして、合格という目標に向かいました。

模擬試験が本格化する二学期は学校行事も多くなり、学校生活と受験勉強のバランスに悩むご家庭も多いようです。我が家も迷い学校行事表と模擬試験を照らし合わせながら、シミュレーションをしました。そして最終的に娘の意見を尊重して、学校と塾のどちらも楽しみ、小学校最高学年としての醍醐味を存分に味わう二学期にしようということになりました。

娘は、体育表現まつり(運動会)で応援団長やリレーのアンカーを務めた日にも、意気揚々と塾に行きました。この日の達成感を塾の先生に話したかったようです。塾には塾の楽しみがあるのですね。

そんな行事の多い二学期に、私がとくに気配りしたのは、娘の頑張っている気持ちに水を差さないことでした。「疲れているだろうから今日くらい塾を休んだら?」は、言わないようにしました。よほど体調が悪そうでない限り、娘の感覚や判断を優先してあげたかったのです。

体力回復のために試してほしい3つのこと

娘の気持ちは、毎日の過ごし方に表れていました。心の中から湧いてくる欲求というのは本当に強く尊いものですね。それを評価したりせず応援し続けました。慣れるまでは口出ししたくなり難しかったですが、娘の健気な姿に私たちは協力できることを再び考え、体調・体力ともに心配せずに受験勉強に取り組めるよう、体調管理にも最大限気を配ることにしました。

私が、運動量の多いこの時期の体力回復のために行った次の3つの行動は娘に大好評でした。日々の充実には楽しみも必要ですね。

①毎日の昼寝
学校から塾までの移動時間を利用して15分程度のお昼寝タイムを作り、おやつをとってから仮眠しました。短時間の睡眠なので、寝起きはスッキリ頭が冴えとてもよかったようです。

②おやつで栄養補給
運動量が多い時期だったので、高たんぱく質の間食をとらせました。例えば、ささみ豆腐ハンバーグ団子、鶏のから揚げ、ナゲット、おからマフィン、十穀米玄米おにぎり、豆乳チョコレートムース、果物など。小腹を満たし睡眠の導入にも繋がるように、お菓子よりも軽めの食事を意識しました。

③心の栄養ストローク
受験は精神論ではなく、科学的な事実に基づく方法を取り入れることで目標達成できると考えていた私は、脳科学や心理学のエビデンスに基づく理論を娘に説明すると同時に、相手の存在を認める働きかけ=「ストローク」(なでる、さする、殴る、褒める、叱るなど)という心に栄養を届ける手法を使って応援をしました。

和田みゆき先生からのアドバイス

最近の受験勉強は、根性で乗り切る精神論から、科学的な検証済みの方法(脳の仕組みを活用した勉強法)を使いながら、心を整え集中するマインドフルネスを取り入れた勉強法へと変わってきています。

脳は10歳頃を境に右脳優位から左脳優位に変わります。多くの受験生は理論を理解し勉強に取り組むことで、高パフォーマンスが発揮できる年齢なのです。やる気がでないときは根性論で勇気づけるのではなくて、学習効果逓増(ていぞう)の法則の説明をしてみてはいかがでしょうか。

学習効果の逓増の法則は、脳研究者の池谷裕二東大教授によると、「学習と効果の関係は正比例ではなく、学習のステップが1つ上がると効果が1つ上がるのではなくて、1、2、4、8、16、32、と累乗的に上がる」のだそうです。つまり学習成果は指数関数的に上がるので、爆発的な効果が出るまで学習を続ければ逆転合格となるのです。娘の場合は、この法則が当てはまったと思います。

また学習成果を上げるために、集中するためのBGMや香の活用、適度な休息、睡眠の研究、体力と脳の整理を意識的に行いました。がむしゃらに受験勉強をするのもいいですが、私は家庭教育家として目標達成のコーチとして、できる限りの知識と知恵を活かした準備をして、娘を送り出したいと考えていました。

受験合格の鍵は、親の戦略と子どもの学力・メンタルの強さです。受験のサポートで応援していきましょう。

睡眠時間の確保と規則正しい生活

優先するのは子どもの気持ち?それとも…

学校生活2

「早く寝なさい」「もうちょっとやる~」
夏休みが明け学校生活のリズムが整ってきた9月後半。娘の成績に勉強の成果が少しずつ表れ、やる気がぐんと高まっていました。そのため帰宅後も毎日決めていた量以上の勉強をし、睡眠時間が減る日が増えていました。

体調管理をしようと思っていたある日、友人の息子さんの受験生活の話を聞きました。彼は深夜まで勉強しているため朝起きられず、学校を遅刻しているそうです。友人はやる気が高まっている息子の意欲を優先したいから遅刻をしてもしかたないと言っていました。

子どもの感情を大切にしているのは我が家と同じですが、規則正しい生活よりも子どもの気持ちを優先することでいいのでしょうか?

早寝早起きの朝型生活は、誰もが知っている入試準備でやるべきことです。夜型生活をしていると、入試時間に脳が目覚めておらず、最高のパフォーマンスが発揮しづらいです。

今ここで娘が夜型生活になると、朝型生活に戻すのにも時間がかかります。もしかしたら朝起きられなくなるかもしれません。それに5月から朝6時に起きて朝勉強をしてきた習慣も作り直しになってしまいます。

子どもの気持ちは最も大切にすべきですが、はたしていつでも感情を優先していいのでしょうか。受験を俯瞰したら、また違う答えが見つかるような気がしました。親の価値観・サポートは、子どもの未来に大きく影響を与えると感じ、私は次の行動をとりました。

受験方針と自分の生活の見直し

私が行なったのは、見直しです。受験方針と私の生活を見直しました。

4月に書かせていただいたように、我が家の受験の方針は「子どもの主体性を大切にする」「受験は人生の一通過点」「夢を叶える第一歩」です。
子どもの人生は子どものものですが、親は人生の先輩としてできる限りの情報提供や提案をしてあげたいものです。私は親の役割として5つの役割(詳細は6月前編をご覧ください)を明確にしていたので、見直ししたことをきっかけに、今後ブレないように紙とスマホに書き留めました。

次は私の生活の見直しです。
「親子は鏡」という表現があります。これは日本の家庭教育で古くから受け継がれている考え方です。子どもたちは親の言動を見て育ち、目には見えない生き方や価値観、態度や言葉遣いなど、親のすべてをコピーし鏡のごとく映しだしながら成長していくことをいっています。

親子が鏡という(言葉遣いや態度、思考などが自分にそっくりで驚いた)経験は、どなたにもあると思います。私の生活を見直し改めることは、ゆくゆくは娘の生活の改善にもつながると思い、娘を直すのではなくて自分を直そうと思いました。

私に不足しているのは睡眠だったので、まずは睡眠について勉強をしました。すると勘違いしていたことや損していたこと、娘の性格特性ではなくて人間の特性であることなどを知りました。

そこで次の項目では、受験生と睡眠についご紹介いたします。

和田先生からのアドバイス

睡眠は覚えたことを記憶するための大切な時間ですが、睡眠と受験生活の関係について、どのくらいご存知でしょうか?

アメリカの精神医学者スティックゴールド氏によると、何か新しい知識や技法を身につけるためには、覚えたその日に6時間以上眠ることが欠かせないのだそうです。記憶は寝ている間に整理整頓されて学習効果を助けるので、記憶の強化には睡眠が重要なのです。

睡眠には2種類あり、レム睡眠とノンレム睡眠があります。レム睡眠は記憶の整理をしながら身体は寝ている眠りの浅い睡眠で、ノンレム睡眠は脳が寝ていて身体は記憶の整理をしている深い睡眠です。90分周期で交互に繰り返され、レム睡眠で起きるとスッキリしますが、目覚まし時計などでノンレム睡眠中に起きると、脳が直前まで寝ていたためもうろうとし、その状態が一日続いたりもします。

私はこのサイクルを知ってから、娘の睡眠について90分周期で逆算し、6時起床23時就寝とし、不足分はお昼寝でとらせるようにしました。

また寝室環境は、真っ暗で眠らせて朝はスッキリ目覚めるように、起床の30分前にはカーテンを開け、2500ルクス以上の光を徐々に浴びながら自然に目覚めるようにしました。私はお弁当作りで早起きをしていたので、自分でカーテンを開けて光を入れていましたが、照明器具をタイマーセットして活用するのもいいと思います。

入眠時間・起床時間・目覚めの状態を把握して、入試当日に最高の状態で送り出しましょう。

9月のワンポイントアドバイス
和田みゆき先生の心理学「記憶」

記憶研究の第一人者で脳科学者の池谷先生は、記憶の仕組みを理解することは一生の財産になるし、大いに勉強に活かすことができるとおっしゃっています。それは効率よく物事が覚えられるからです。

今月は家庭教育家の和田みゆきが、脳科学者の茂木健一郎先生や池谷裕二先生が発信する記憶情報の中から、中学受験に役立てた情報をお届けします。

①親が記憶の仕組みを知るメリット
記憶の仕組みを理解することで、成績が思うように伸びない理由や効率的に記憶する方法がわかるため、理不尽な理由で子どもを叱ることが減ります。

②記憶の仕組み
記憶は、脳の中の「海馬(かいば)」が、必要な情報と不要な情報を仕分けし、必要な情報だけを長期保管する仕組みになっています。 最優先で記憶されるのは、生存に関わる情報で、車にぶつかると怪我をするとか、腐ったものを食べると腹痛がおこるなど、生きていくのに不可欠な情報です。 学習に関する情報は生存に不可欠ではないので、常に消去される情報として扱われます。そのため何度も情報を送り続け、海馬に大事な情報であると認識してもらわないと長期保管してもらうことができないのです。記憶の強化には復習が最も大切な理由はここにあったのです。

③記憶の種類
記憶には種類があり、それぞれの特徴を把握して暗記学習をすると、子どものミスの原因がどこからくるのかが科学的に理解できるので、根性論でがむしゃらに勉強する以外の方法を子どもに伝えることができます。

記憶は大きく2つに別れ、30秒から数分程度記憶する短期記憶と、それよりも長い時間記憶する長期記憶があります。短期記憶は、一度に記憶できる量がおよそ7個のため、必要な情報は長期記憶に保管する仕組みになっているそうです。

長期記憶は、さらに4つに分類され、感情を伴った経験を記憶するエピソード記憶と、自分の意識(感情など)が介在しない知識などの意味記憶、スポーツの上達など身体で覚える手続き記憶、目の前の事実よりも記憶が先に認識されるプライミング(入れ知恵)記憶があります。

私は娘の暗記の際に、これらを意識した暗記学習を手伝いました。茂木先生の鶴の恩返し法は、五感(耳・目・手などの五感を使う)をフル活用するもので、海馬の性質に合い長期記憶しやすいものでしたし、エピソード記憶を意識した暗記学習では、替え歌やパズルを使い、親子で楽しみました。

④忘却
脳は覚える働きよりも、できるだけ早く多くのことを忘れるように設計されています。記憶の期間は1か月と言われており、1か月以内に復習しないと、記憶からなくなりやすいそうです。理由は日々の膨大な量の情報をすべて記憶するとパンクするからだとか。 そこで大事なことをより長く覚えていられるように、池谷先生ご推奨の復習のサイクルをご紹介します。

最も能率的な復習スケジュールは、
 ①1回目の復習:覚えた日の1週間後
 ②2回目の復習:1回目の復習の2週間後
 ③3回目の復習:2回目の復習から1か月後
となり、少しずつ間隔を空けて2か月程行うと、長期記憶に保管されやすいのだそうです。

また復習内容は、同じものが有効です。問題をアレンジし新たな情報に変えない方が効果的なようです。

娘はこれらを踏まえて、「3」をキーワードに、3日後、3週間後、3か月後の3回転記憶法を毎回同じ問題で、3回〇になるまで行いました。

⑤睡眠と記憶
蓄えた知識を整理して使える状態にするのが睡眠の役割の1つです。記憶には睡眠が必要不可欠ですので、睡眠を削ることは避けましょう。

最新の記憶に関する情報は、茂木先生・池谷先生の書籍等をご参照ください。

10月のワンポイントアドバイスは「リフレーミング」です。

和田みゆき先生

和田みゆき先生 プロフィール

家庭教育家。家庭教育アドバイザー。家庭教育師。学校法人八洲学園、学校法人文理開成学園理事。
娘の幼少中受験経験あり。とくに中学受験では独自の子育てメソッドを用い、直前模試で偏差値20離れていた最難関共学校に合格。受験5日目まで合格通知なしという経験をするが、メンタルトレーニングで培った強い精神力でリベンジをし、最終的に受験校全校より合格をいただく。その経験から、2010年より各種心理学、脳科学を活かした子育てメソッドと受験サポートプログラムを中学受験生保護者に提供。現在まで2000人を超えるサポートを行う。 他にも大手個別指導塾や小学校での保護者向け講座や、企業にて人材育成研修を提供している。
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次回は苦手教科のサポート【前編】です。※9月は1回のみの掲載になります。

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