【解答速報2020】国語の問題は受験生へのメッセージ!〜2020年中学入試、国語の入試問題から〜

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入試問題には、「こんなことができる子どもに入学してもらいたい」という学校の思いが現れています。そこで今回は、男子校から開成中学校、共学校から渋谷教育学園渋谷中学校、そして女子御三家(桜蔭中学校、女子学院中学校、雙葉中学校)といった難関校の国語の入試問題を見ていきたいと思います。

いずれもハイレベルな国語力が要求される出題

■各校の入試問題の概要

学校名 試験時間 満点 問題構成ほか
開成中学校 50分 85点 大問2題(一小説/二説明文)
全設問数:14問(知識問題7問)
二問一の漢字の書き取り7問以外は全て記述式の問題。
渋谷教育学園渋谷中学校 50分 100点 大問2題(一小説/二説明文)
全設問数:23問(知識問題8問)
選択問題や抜き出し問題が中心。
桜蔭中学校 50分 100点 大問2題(一随筆/二小説)
全設問数:16問(知識問題9問)
知識問題は少なく、ほとんどが記述式の問題。
女子学院中学校 40分 100点 大問3題(一随筆/二説明文/三漢字)
全設問数:28問(知識問題8問)
選択問題が中心。短時間での判断が求められる。
雙葉中学校 50分 100点 大問3題(一説明文/二語彙問題/三漢字)
全設問数:36問(知識問題19問)
じっくりと読み込み、考察する力が必要。100字以上の論述(作文)問題あり。

各校の入試問題を整理すると、上記のようになりました。

いずれも、難易度はかなり高めで、特に設問に「あなたはどう思いますか。具体例を挙げて、一〇〇字以上一二〇以内で述べなさい。」と明記された雙葉の記述(作文)問題をはじめ、設問に字数の明示はないものの、求められる要素を盛り込むと明らかに100字以上の記述となるであろう開成、桜蔭の問題などは、大学入試レベルといっても過言ではない内容です。

現に、結果的に見送りとなりましたが、大学入学共通テストで大学受験生に課される予定だった国語の記述式問題も、文字数の設定は120字程度とされていました。

この3校はまた、漢字の書き取りや語の知識など、問題を見て即座に答えを出せる知識問題の比重が低く、単なる詰め込み学習のみでは太刀打ちすることが難しい出題でもありました。

難関校だからこその基礎の大切さ

漢字の問題は、いずれの学校でもオーソドックスなレベルの出題でした。多くの入試対策用問題集で「頻出」にランクされている「領域」の書き取り問題が、桜蔭中学校と渋谷教育学園渋谷中学校で出題されたことも、難関校を目指しているとはいえ、基礎・基本を疎かにしてはいけないということを示す好例でしょう。

言葉の意味や慣用句、故事成語などの知識が求められる、語彙に関する問題も、開成中学以外の4校で出題されました。ただ単に辞書に載っている意味を覚えているだけでなく、文脈の中での意味を考えなければならない問題など、付け焼き刃では対応が難しい問題が多く見られました。

後述しますが、これらの難関校では、設問で与えられる文章の文字量も多く、それを読み取ったり記述式の答案を考えたりするのにも相応の時間が取られます。だからこそ、勉強してきたことがそのまま解答に結びつく知識問題は、反射的に解けるくらいの準備をしておくことが望ましいでしょう。

問題文の出典から見えるもの

■各校の読解問題の出典

学校名 出典元 出版
開成中学校 『君たちは今が世界(すべて)』朝比奈あすか 2019年6月
『中国 虫の奇聞録』瀬川千秋 2016年6月
渋谷教育学園渋谷中学校 『城のなかの人』星新一 1973年
『哲学の教科書』中島義道 1995年
桜蔭中学校 『エベレストには登らない』角幡唯介 2019年12月
『思いはいのり、言葉はつばさ』まはら三桃 2019年7月
女子学院中学校 『「迷子」のすすめ』阿純翔 2014年6月
『濃霧の中の方向感覚』 2019年2月
雙葉中学校 『二つの環境〜命は続いている〜』武田邦彦 2002年

さて、国語の入試問題といえばやはり中心になるのが文章読解問題。難関校の読解問題の出典をまとめると上の表のようになります。

2019年発行の書籍が目立ち、渋谷教育学園渋谷中学校以外の学校は、比較的出版されたばかりの書籍から題材を採っていることがわかります。問題に使われている文章を「読んだことがある」という事態を少なくするための配慮ともいえるでしょう。

開成中学校

中でも注目の出典は、開成中学校の『君たちは今が世界』と、桜蔭中学校の『思いはいのり、言葉はつばさ』、雙葉中学校の『二つの環境〜命は続いている〜』でした。

開成中学校が読解問題の素材文に選んだ『君たちは今が世界』は、受験生と同じく6年生の子どもたちの学校生活を描いた作品です。舞台となるのは、やや荒れ気味の公立小学校の「学級崩壊気味」といわれるクラス。章ごとに異なる目線−−クラスの中の目立つポジションにいようと虚勢を張りつつも、いじめられっ子と表裏一体の危うい場所にいる男子、周囲を「くだらない」と判断し塾での受験勉強にだけ自分を見出す女子、コミュニケーションの苦手な男子、複雑で駆け引きだらけの友だちグループで過ごす女子…から綴られたこの物語には、思春期の小学生のリアルで危うい日常が描かれています。

冒頭の男子目線の章ならば開成受験生にも感情移入がしやすいかもしれないところなのですが、問題文に引用された部分は女子同士の複雑な駆け引きの章でした。

合格の暁には6年間を男子だけの環境で過ごすことになる受験生に、共学で6年間を過ごせば自然と学ぶことになる女の子の心理を考えさせよう…などという意図があったのかどうかはわかりませんが、たいへん興味深い出題でした。

国語の問題

どの小問も、登場人物の心情や行動について説明させるものでしたが、「なんとなくわかるんだけど、うまく言葉にするのは難しい…」という受験生の声が聞こえてきそうな内容。これらの解答を制限時間内でまとめるためには、国語の読解力や記述力に加えて、友人関係の経験値や人の気持ちを慮る力までも必要だと感じました。

桜蔭中学校

桜蔭の『思いはいのり、言葉はつばさ』は、「女に学問は要らない」という意識が強く、男性優位だった時代の中国で、1人の少女が文字に出会い、それを学ぶことで成長していくという物語です。中略を挟みながら、物語全体の筋も追えるような長文の素材文で、受験終了後、書店でこの本を買い求めたくなる母娘も多かったのではないかと想像されます。将来、日本をリードしていく女子を育てる桜蔭の受験生にこの物語を読ませることで、彼女たちに恵まれた環境で学べることの幸せを再認識させるような出典だと感じました。

雙葉中学校

雙葉の問題に使われた『二つの環境〜命は続いている〜』は、2002年発行の書籍でした。やや古い出典を不思議に思いましたが、この大問の最後の小問で納得! この本の発行当時と現在とを比較して考えを述べさせるという出題があったのです。一つの文章を深く読み込むだけでなく、世の中の動きを踏まえて考えを記述するためには、国語力だけでなく、日頃からの社会の出来事へ関心をもっておくことが必要です。設問も、記述だけでなく多岐にわたっており、総合的な力をもった生徒を求めていることが感じられました。

このような目線から国語の入試問題をひもといていくと、入試傾向だけでなく、その学校の求める学生像までもが見えてきます。
お時間のあるときにでも、お子さまの志望校の過去問で国語の読解問題の出典となっている書籍を読んでみてはいかがでしょうか。