【前編】「中学受験 志望校の選び方・併願校の決め方」講演会レポート

inter-edu’s eye
中学受験を目指す家庭にとって学校選びは一大事! 偏差値、校風、宗教、部活動、進学実績、共学、別学と学校選びの視点はいくつもあるし、そもそもどんな基準で選んだらいいのだろう…。「わが子が人生でもっとも成長する時期を過ごす場所だから」と思えば思うほど、迷ったり悩んだりしてしまいます。

そこで今回、受験生の親御さんのお悩みに応えるべく、エデュナビでは「志望校・併願校の選び方」「男の子と女の子、それぞれの受験との向き合い方」をテーマに、9月28日、東京・代々木にて特別講演会を開催しました。講師は3月に開催し大変好評だった講演会、「中学受験 親の関わり方」に登壇された教育ジャーナリストのおおたとしまささん。そして、エデュ主催の講演会では初登壇となる中学受験専門カウンセラーの安浪京子さんです。数年前に中学受験を経験し、都内の私立共学中高一貫校に通う娘をもつエデュママライターが講演会の模様を前後編にてお届けします。

第一部:おおたとしまささんの講演「第1志望以外はすべて第2志望」

これからの時代を生きていくために必要な3つの力とは?

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おおたとしまささん:学校や塾などの教育現場を丹念に取材し、斬新な切り口で考察する筆致に定評がある。しつけから中学受験、夫婦関係までをテーマに、講演・メディア出演も多数。著書は60冊以上。

「学校選びについて、早く具体的なヒントが知りたい!」とはやる保護者を前に、おおたさんは「まずは子どもがこれから生きていく上でどんな力が必要なのか、考えましょう」と語りかけます。実はこれってとても大事なこと。なぜなら中学受験は「本人や保護者にブレない軸があること」が大前提なんですよね。軸がブレブレなのに学校選びを考えたところで、いいことは一つもない。余計に迷ったり悩んだりするだけです。…と偉そうに語る私も、娘の受験当時はわが家の軸なんて考えたこともなく、そのせいでギリギリまで志望校や併願校に悩んでいました。

さて、おおたさんの考える、これからの時代を生きていく上で必要な力は次の3つです。

1.そこそこの知力と体力があること(普通に学校に行って友達と会話したり運動が楽しめたりできればOK)
2.非認知能力、とくにグリット(あきらめない力、やり抜く力)を持っていること
3.人とつながっていくためのチーム力(自分自身にスペシャリティを持ち、共感したり認め合ったりしてコラボレーションできること)

おおたさんの提唱する3つの力と、わが子の今の姿を照らし合わせてみると、「うちの子はグリットが弱いから、中学校ではこんな活動をさせたい」とか「スペシャリティを磨くために、この子の得意な分野を伸ばしたい」とか、目指すところが見えてきます。そうです、それが「軸」なんです。わが家の軸が決まれば、受験に対する思いや学校選びにブレがなくなっていくはずです。

「これら3つの力を鍛え、一人ひとりの能力を磨いていく。その土台をつくる上で中学受験は大いに理にかなっている」と、おおたさん。「進学した学校で思春期や反抗期を過ごし、やがて恋愛を経験し、他者を大切にすることを知る。そうやって一人前の大人になっていくんですよ」と語ります。

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わが子に合った学校を選ぶための観点とは?

では、実際にどんな方法で学校を選ぶといいのでしょう。おおたさんは、いくつかの観点やポイントを教えてくださいました。まずは「いいなと思う学校」を第一志望に選ぶこと。「子ども自身が惚れ込んだところを選ぶと、勉強する上でのモチベーションにもなりますね」と、おおたさん。現在はお試し受験を含め、平均6校くらいを受けるのがトレンドだそう。ということは、併願校を5校ほど考えておく必要がありそうです。

その併願校選びについて、おおたさんが強調していたのは、「第二志望以下は順位をつけず、すべてが第二志望だと考えて」ということ。惚れ込んだ第一志望以外、無理に順位をつける必要はないんです。確かに第一志望に落ちて、いずれかの併願校に進学した場合、第三とか第四でなく「第二志望に入学した」と考えるほうが気分もいいですよね。

次におおたさんが考える学校選びの観点として、次の5つが紹介されました。

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■バックグラウンド:創立者がどんな目的で作った学校なのか。創立者の人生は、学校の歩みと相似形をなしている。
■自由と規律のバランス:どこの学校も「うちは自由です」というが、個人主義か全体主義か、ニュアンスはそれぞれ異なる。各家庭の考えに近いところを選んでほしい。
■進学校としての打ち出し方:進学実績をアピールする学校、ICTに力を入れている学校、20年後を見据えた授業をしている学校など、進学校にもさまざまな方向性がある。
■スキル/価値観:英語の4技能のように、スキルを身につけることに重きを置いているのか、他人のために奉仕するといった普遍的な価値観を育てることに力を入れているのか。
■別学か共学か:女子校、男子校、共学、それぞれの存在意義は異なる。
【男子校】男子は女子に比べ生物学的に発達が遅い。男子だけが集まることで彼らの成長を見守る環境がある。運動会は中1から高3までタテ割りグループの対抗で行われることが多い。
【女子校】ジェンダー意識にとらわれない。女の子らしく振る舞う必要がなく、力仕事もすべて担う。理系に進む確率が高いといわれる。ヨコ型の組織を作るのがうまく、運動会は学年対抗で行われることが多い。(おおたさんの新著『新・男子校という選択』『新・女子校という選択』には、こういった男子校・女子校の特徴が詳しく紹介されています。)

これらの観点に加え、おおたさんは「男女共同参画社会というが、共学に行けば実現するということはない。共学でも男子校でも女子校でも、その学校できちんと人権教育ができるかどうかが重要だ」とも語っていました。ちなみにおおたさんは男子校の出身だそう。まずはわが家の受験方針や軸を決め、それから上記の観点と照らし合わせていくと、学校選びのモヤモヤがかなり晴れてくるのではないでしょうか。そういえば、わが子が通う学校の創立者でもある校長先生の人生は、みごとに学校の歩みや方向性を体現しています。おおたさんの視点の鋭さになるほど!と思わず膝を打ちました。

後編に続く~


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